ユキマツの「長期投資のタイミング」

「景気(企業利益動向)」「中銀の金融政策(金利動向)」「投資家のリスク許容度」などから長期投資のタイミングを探る投資ブログ

「世帯貯蓄、過去最高1820万円」報道の不思議

2017.5.17、総務省の2016年の家計調査を基にした、世帯貯蓄の報道がありました。

www.asahi.com

2人以上の世帯の平均貯蓄額が

1820万円

で前年比+0.8%で過去最高だったと。

平均で1820万?多すぎない?

あなたはどう感じますか?

気になって少し調べると、いろいろわかって面白かったので書いてみます。

※投資には、あまり役立たない記事なので、ご了承ください。

f:id:yukimatu-tousi:20170518143947j:plain

疑問1:中央値は?

 

中央値は、データを小さい順に並べたとき中央に位置する値です。

たとえば7人の人がいるとき、その7人の体重の中央値は4番目に重い人の体重になります。

今回の調査では、2人以上の世帯の貯蓄額の平均値は

1064万円

だったと。

平均値の1820万円と、非常に大きな差(1820-1064=756万円)があります。

 

おそらく貯蓄額が飛び抜けて多い世帯が、平均値を大幅に押し上げていることは、常識的に考えればすぐに分かることです。

まだ中央値の方が実感に近いです。

 

はたして、1820万円という平均値は代表値として適切なのか?

※代表値:統計で、調査した集団の特徴を示す値平均値、中央値、最頻値などが一般的

f:id:yukimatu-tousi:20170518133452p:plain

※出所:総務省「家計調査報告」の表を管理者一部編集

 

わたしは統計の専門家ではないので、確たることは言えませんが、上記の分布をみる限り、このケースでは、代表値としてはあまり適切でないと思われます。

どちらかというと、中央値の方が適切だと思われます。

平均値だと、「世帯割合としてはごくわずかな高貯蓄世帯側」にぶれ過ぎていると思われます。

 

また、どうしても平均値を取り上げたいのなら、中央値と平均値でここまで大きな差がある場合、両方明示する方が親切だと感じます。

 

さらに、この調査では貯蓄が100万円以下の世帯は全体の10.5%だったことになっています。

 

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疑問2:金融広報中央委員会の調査との違いが極端に大きい

 

家計調査は総務省だけでなく、金融広報中央委員会(日銀関連の組織)も行っています。

この組織の2016年の調査では、二人以上世帯の金融資産保有額の

●平均値:1,078万円

※前回(1,209万円)と比べて減少。-10.8%減

●中央値:400万円

※前回と変わらず

だったとのこと。

 

何でこんなにデータに差があるんでしょう?

 

しかも、

●金融資産を保有していない世帯⇒30.9%

だったと。

※出所

www.shiruporuto.jp

 

総務省の調査では貯蓄が100万円以下の世帯は全体の10.5%なのに、こちらの調査では、金融資産なしが30.9%

 

 

どっちが正しいんでしょう。

 

日本国民は総務省には見栄をはって回答し、金融広報中央委員会には赤裸々な実態を教えてるんでしょうか。

わたしにはわかりませんが、あまりに数値が異なるので、どちらかが正しいとすれば、どちらかは正しくない情報である可能性があります。

 

どっちも正しくないのかもしれませんが、わたしにはわかりません。

 

調査方法、調査対象、言葉の定義などが大幅に異なるのかもしれません。

どうも、総務省の「貯蓄現在高」と金融広報の「金融資産保有額」の言葉のニュアンス

で、ある程度違いが出てしまうような雰囲気もありますが、いまいちよくわからない。

 

気にはなるものの、さらに追及したくなるほどの興味はないので、調査はここまでにしました。 

 

まとめ

★総務省

平均貯蓄額:1820万円

  中央値:1064万円

貯蓄額100万円以下の世帯:10.5%

 

★金融広報中央委員会

金融資産保有額の平均値:1,078万円

        中央値:400万円

金融資産を保有していない世帯:30.9%

 

少なくとも言えそうなのは、マスコミが報道している

「日本の2人以上の世帯の平均貯蓄額が1820万円」というネタは、少し歪んだ情報だろう

ということです。

 

調査集団の実態をあまり反映しないデータであり、どちらかというと中央値を取り上げ、クローズアップすべきではないかと思いました。

 

そもそも金融資産がゼロの世帯が日本で30%以上もありそうだ、という調査もある状態で、

日本の平均世帯貯蓄が1820万でした

という部分を前面に出されると、すごく違和感があります。

 

また、

平均・・・ていわれると、何だか盲目的に「標準」とか「スタンダード」を連想してしまいます。

総務省とか金融広報中央委員会・・・っていわれると、何だか「絶対に間違わない」と感じてしまうところがありませんか?

 

このような

★平均値への信仰(中央値の過小評価)

★調査機関への過度の信頼

 は、ときにリスキーかもしれません。

 

情報の精度を確かめるためには、今はネットもあるので、

自分で調べ、比較検討する

のが一番ではないかと思って記事にしてみました。

※投資関連の情報は、精度の低い情報がいくらでも手に入るので、比較検討は欠かせないと思われます

 

それにしても、総務省と金融広報で何でこんなに数値が違うんだろう・・・(まだ、少し気になってる)

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