ユキマツの「長期投資のタイミング」

「景気(企業利益動向)」「中銀の金融政策(金利動向)」「投資家のリスク許容度」などから長期投資のタイミングを探る投資ブログ

「長期投資に適しそうな国の選定作業」①~全世界・経済成長編~

どんと構えてゆっくり世界の経済成長に待っていればよいのか?

長期投資にとりわけ適する国はあるのか?

あったとして、それは事前に予測できることなのか?

長期投資派、インデックス派は誰しも関心を持ったことのあるテーマかもしれません。

そこで、「長期投資に適しそうな国の選定作業」シリーズを始めます。

第1回目はいきなり「国」ではないんですが、「全世界」を具体例にします。

長期投資に適するのは、長期的な経済成長率が高い国ではないか?

一般にある国の「名目経済成長率」とその国の「時価総額(市場規模)の増加率」には長期的には正の相関があるとされます。

そして、時価総額の増加率と株式インデックスの上昇率にも正の相関があります。 

したがって、

長期的に経済成長する国の株式インデックスは長期的に上昇しやすい

つまり、

長期投資に適するのは、長期的な経済成長率が高い国ではないか?

という仮説が成り立ちます。 

長期的な経済成長が期待できる国を予測することは可能なのか?

上記の仮説が正しくて、投資する前に長期的な経済成長を成し遂げる国を予測することができれば、その国の株式インデックスを長期保有することで、長期投資の収益率を大きくできそうな気がします。

 

では、長期的な経済成長が期待できる国を予測することは可能なのか?

おそらく確実に予測することは不可能だと思われます。

今、高い成長率を維持していても、今後何らかの理由でガクッと落ちるかもしれない、その後も長期的に低迷するかもしれない、逆に今、成長率が低くても、何らかの理由で成長率が上昇しないとはいえません。

株価予測と同様、未来のことは断言できないと思われます。

ただ、以下のような手順を踏むことによって予測の精度を少し向上させることができる、かもしれません。

※あくまで「予測が当たる確率が上がるかもしれない」程度の話です

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長期投資に適しそうな国の選定作業

①できれば人口が増える国や地域の株式インデックスを選択する

経済成長率のうち、実質経済成長率に関しては、

実質経済成長率

人口増加率+一人当たり経済成長率

という式が成り立ち、二つの要素に分けて考えることができるようです。

つまり、一年間で人口が1%増えれば、一人当たり経済成長率が0%でも、実質経済成長率は1%になります。

逆に、人口が1%減れば、一人当たり経済成長率が1%でも、実質0成長になってしまいます。

この式を見れば、長期的な人口の増減が一国の経済規模に大きな影響を与えることは明白です。

 

そして、「人口予測」は数ある経済指標の中で、比較的、的中率が高い指標とされます。

「現在の人口、将来の出生率、将来の生存率、将来の国際人口移動率」などのデータがあれば、ある程度精度の高い予測ができるようです。

したがって、比較的予測が当たりやすい人口増加率を頼りに「長期的な経済成長が期待できる国を予測する」こと、つまり

できれば人口が増える国や地域の株式インデックスを選択する

 のは理屈では正しいことになります。

※単に人口増加率が高ければいいわけでもなく、一人当たり経済成長率とのバランスが大切だと思われます

②一人当たり経済成長率は、近年の長期データを用いて推測するのもアリか?

次に、一人当たり経済成長率について考えてみます。

こちらは、人口増加率より予測が難しく振れ幅も大きな要素です。

何か手はあるのか?

 

経験的な私見に過ぎませんが、

実質経済成長率

=人口増加率+一人当たり経済成長率

なので、

一人当たり経済成長率

=実質経済成長率ー人口増加率

になります。

したがって、例えば、

過去10年の一人当たり経済成長率の平均

=「過去10年の実質経済成長率の平均」ー「過去10年の人口増加率の平均」

になります。

10年を20年にしても同様です。

このように、単年度ではなく、一人当たり経済成長率の「長期平均」を参考にすることで、ある程度将来予測はできるかもしれません。

仮に、2005~2015年の一人当たり経済成長率の平均=1.0%であれば、2015~2025年の平均値も1.0%から極端に大きくぶれないのではないか、という推測です。

一年ごとの変動は大きいですが、長期でならすと意外とぶれは小さいようなのです。

世界の経済成長率、人口増加率、一人当たり経済成長率

具体例として、1990~2015年の全世界の実質経済成長率、人口増加率、一人当たり経済成長率について紹介します。

 

世界の経済成長率

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※出所:グローバルノート

上記グラフは全世界の実質経済成長率の推移です。

リーマンショック後の2009年に著明なマイナス成長になった以外は概ね1.5~4.0%の範囲に収まっています。

1990~2015年の年率平均:2.65%です。

世界の人口増加率

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※出所:グローバルノート

次に世界の人口増加率のグラフです。

世界人口自体は増え続けていますが、その増加率は近年明瞭に減少を続けています。

2015年で1.2%を下回っており、人口予測では今後も人口増加率は減少し続けるようです。

※2012年の国連中位統計では2062年の人口増加率は約0.3%まで減少と予測

1990~2015年の年率平均増加率:1.31%です。

一人当たり経済成長率

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※出所:グローバルノートのデータより管理者作成

実質経済成長率から人口増加率を引いた値、一人当たり経済成長率の推移です。

人口増加率が軽微な変化なので、主に経済成長率の振れ幅に応じて変動しています。

やはりリーマンショック後の2009年に著明なマイナスになった以外は、概ね「0~3%」のレンジに収まっています。

1990~2015年の年率平均:1.34%です。

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データのまとめ

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表にまとめるとこのようになります。

経済成長率というと、もっと大きい気がしますが、人口増加に約50%は助けられている数値であることがよくわかります。人口の影響は大きいです。

※仮に、2062年の人口増加率が0.3%で一人当たり経済成長率が1.3%なら、2062年の世界の実質経済成長率は1.6%という低い水準にとどまることになります

 

さらにもう少し細かく見てみます。10年、10年、5年に区切って見てみると次のようになります。数値はすべて年率平均です。

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 人口増加率は「1.44⇒1.18」と明瞭に減少してきており、一人当たり経済成長率は「1.32~1.37」で横ばい~微減です。

グローバル化やIT化、金融の自由化が進み、AIが囲碁の世界チャンピオンを寄せ付けず、スマホが当たり前になり、車の自動運転が実現するのか?という時代の流れにいるわけですが、少し長めの期間で平均をとると、びっくりするほど世界の一人当たり経済成長率は落ち着いた動き、むしろ低下しています。

人口増加率も一人当たり経済成長率も徐々に減少傾向なので、当然、実質経済成長率も減少してきているのがはっきり感じとれるデータです。

ただ、ポジティブにとらえれば、人口増加率は減っても長期的に人口自体は増え、そこそこの一人当たり経済成長率を維持できている、という見方もできます。

 

世界経済の成長にかけるのは是か非か

以上をふまえて、もし全世界の株式インデックスに投資できたとすると、

★長期的な人口増加率の減少傾向

★長期的に一人当たり経済成長率が伸びていない(横這い~微減)

の2点を根拠に、

★長期的な経済成長は期待できるが、今後は近年よりそのペースは鈍化しそう(主に人口増加率の減少に起因する)

★したがって、世界株式インデックスの上昇率も、これまでペースより小さく見積もった方がいいかもしれない

★それでも長期的にみれば、全世界の株式インデックスはゆっくり上昇率していく可能性が高いのでは?

という一つの仮説を設定することは可能と思われます。当たるかどうかはわかりませんが。

まとめ

本記事では

長期投資に適するのは、長期的な経済成長率が高い国ではないか?

という仮説を前提にして、近年の全世界の動向を具体例にして「長期投資に適しそうな国の選定作業」について考えてみました。

 

今回は対象が「世界全体」であり、データの変動が比較的小さくまったりしたものでしたが、一つ一つの国単位で見ると、もっと変化に富んだ動きがみられるかもしれません。

今後、似たようなやり方で「長期投資に適しそうな国の選定作業」の具体例を記事にしていきたいと思います。興味のある方はお付き合いください。

 

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www.yukimatu-value.com

 

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