ユキマツの「長期投資のタイミング」

「景気(企業利益動向)」「中銀の金融政策(金利動向)」「投資家のリスク許容度」などから長期投資のタイミングを探る投資ブログ

「長期投資に適しそうな国の選定作業」②~米国・経済成長編~

長期投資に適する国は事前に分かるものなのか?

そんなことは考えない方が身のためか?

昨日に続いて「長期投資に適しそうな国の選定作業」シリーズの2回目です。

本日取り上げるのは世界経済、金融の中心、米国です。

長期投資に適するのは、長期的な経済成長率が高い国ではないか?

一般にある国の「名目経済成長率」とその国の「時価総額(市場規模)の増加率」には長期的には正の相関があるとされます。

そして、時価総額の増加率と株式インデックスの上昇率にも正の相関があります。 

したがって、

長期的に経済成長する国の株式インデックスは長期的に上昇しやすい

つまり、

長期投資に適するのは、長期的な経済成長率が高い国ではないか?

という仮説が成り立ちます。

長期的な経済成長が期待できる国を予測することは可能なのか?

上記の仮説が正しくて、投資する前に長期的な経済成長を成し遂げる国を予測することができれば、その国の株式インデックスを長期保有することで、長期投資の収益率を大きくできそうな気がします。

 

では、長期的な経済成長が期待できる国を予測することは可能なのか?

おそらく確実に予測することは不可能だと思われます。

今、高い成長率を維持していても、今後何らかの理由でガクッと落ちるかもしれない、その後も長期的に低迷するかもしれない、逆に今、成長率が低くても、何らかの理由で成長率が上昇しないとはいえません。

株価予測と同様、未来のことは断言できないと思われます。

ただ、以下のような手順を踏むことによって予測の精度を少し向上させることができる、かもしれません。

※あくまで「予測が当たる確率が上がるかもしれない」程度の話です

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長期投資に適しそうな国の選定作業

①できれば人口が増える国や地域の株式インデックスを選択する

実質経済成長率に関しては、

実質経済成長率

人口増加率+一人当たり経済成長率

という式が成り立ち、二つの要素に分けて考えることができるようです。

つまり、一年間で人口が1%増えれば、一人当たり経済成長率が0%でも、実質経済成長率は1%になります。

逆に、人口が1%減れば、一人当たり経済成長率が1%でも、実質0成長になってしまいます。

この式を見れば、長期的な人口の増減が一国の経済規模に大きな影響を与えることは明白です。

 

そして、「人口予測」は数ある経済指標の中で、比較的、的中率が高い指標とされます。

「現在の人口、将来の出生率、将来の生存率、将来の国際人口移動率」などのデータがあれば、ある程度精度の高い予測ができるようです。

したがって、比較的予測が当たりやすい人口増加率を頼りに「長期的な経済成長が期待できる国を予測する」こと、つまり

できれば人口が増える国や地域の株式インデックスを選択する

 のは理屈では正しいことになります。

※単に人口増加率が高ければいいわけでもなく、一人当たり経済成長率とのバランスが大切だと思われます

②一人当たり経済成長率は、近年の長期データを用いて推測するのもアリか?

次に、一人当たり経済成長率について考えてみます。

こちらは、人口増加率より予測が難しく振れ幅も大きな要素です。

何か手はあるのか?

 

経験的な私見に過ぎませんが、

実質経済成長率

=人口増加率+一人当たり経済成長率

なので、

一人当たり経済成長率

=実質経済成長率ー人口増加率

になります。

したがって、例えば、

過去10年の一人当たり経済成長率の平均

=「過去10年の実質経済成長率の平均」ー「過去10年の人口増加率の平均」

になります。

10年を20年にしても同様です。

このように、単年度ではなく、一人当たり経済成長率の「長期平均」を参考にすることで、ある程度将来予測はできるかもしれません。

仮に、2005~2015年の一人当たり経済成長率の平均=1.0%であれば、2015~2025年の平均値も「1.0%」から極端に大きくぶれないのではないか、という推測です。

一年ごとの変動は大きいですが、長期でならすと意外とぶれは小さいようなのです。

米国の実質経済成長率、人口増加率、一人当たり経済成長率

ここから米国の実質経済成長率、人口増加率、一人当たり経済成長率について紹介します。

まず長めの期間で俯瞰してみます。

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※出所:世界経済のネタ帳のデータより管理者作成

上記の表は、米国の実質経済成長率、人口増加率、一人当たり経済成長率を

「1980~2015年」の35年間

「1990~2015年」の25年間

の年率平均で示したものです。

この期間に関しては、人口増加率はあまり変わらず、一人当たり経済成長率が少し低下傾向にあるように見えます。

 

次に、35年間を10、10、10、5年間で区切って年率平均を算出し、さらに2015~2035年の人口増加率の推計を加えると、下記表になります。

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※出所:世界経済のネタ帳国連人口推計2015年版のデータより管理者作成

2000~2010年にはITバブルの崩壊や米国発の金融危機があり、その影響もあってか成長率は大きく低下していますが、その後少し持ち直していることがうかがえます。

また、全世界と同様、人口増加率は長期的に低下傾向であり、1990~2015年には「1.0%」であったものが、2015~2035年は「0.6%」程度になると推計されています。

つまり、人口の要素だけで近年より「0.4%」程度、経済成長率は不利な状況に置かれていることになります。

一人当たり経済成長率に関しても、あまり芳しいものではありません。

1980年代、1990年代は「2.0%」を超える水準にありましたが、1990~2015年の年率平均は「1.4%」に過ぎません。

仮に今後もこの傾向が続くなら、

0.6%(人口増加率)+1.4%(一人当たり経済成長率)=2.0%

の式から、米国の長期的な実質経済成長率の平均値は「2.0%」前後の水準で推移し、近年の実績(2.4~2.7%)よりやや下振れする可能性が高いと推測されます。

したがって、一人当たり経済成長率の上昇がなければ、長期的な米国株式インデックスの上昇率もこれまでより緩やかになるかもしれません。

 

ただ、ポジティブにとらえれば、人口増加が続く国であり、「長期的な2.0%程度の経済成長」も現実的な数字であり、

米国は長期投資に適する国

との解釈にはあまり無理がないとわたしは思います。

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まとめ

米国の実質経済成長率に関して考察してみました。

今後、長期的な人口増加率の低下に起因する「実質経済成長率の低下」とそれに起因する「株式インデックス上昇率の低下」の可能性は十分考えられますが、その他の先進国より相対的に期待や安心感を持ちやすい国なのではないかと思われます。

※まだ記事にしていませんが、日本やドイツの人口予測はけっこう厳しいものがあります

また、本記事は経済成長の観点のみを扱っていますが、

◎世界最強の軍事力

◎金融、IT・情報産業のメッカ

◎食料・資源・エネルギーの安全保障の面でも不安が少ない

◎世界3位の人口大国

◎巨大な多国籍企業、IT企業の存在

◎基軸通貨ドル

◎英語圏である優位性(移民や優れた人材を呼び込みやすい)

などの観点からも、米国の優位性は、しばらく続くような気がするため、米国は長期投資に適しそうな国ではないかとわたしは思います。

今の米国株は割高だと推測しますが・・・

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