ユキマツの「長期投資のタイミング」

「景気(企業利益動向)」「中銀の金融政策(金利動向)」「投資家のリスク許容度」などから長期投資のタイミングを探る投資ブログ

湯船のお湯が抜けていく?

我が家の湯船は蛇口から直接お湯を入れて浴槽に貯めるタイプです。

浴槽には穴が開いていて栓があって、はめ込んだ栓を抜くと浴槽のお湯は流れていってしまいます。

一度、お湯を貯めるつもりが栓をするのを忘れ、10分以上たってお湯の貯まり具合を見に行くと、お湯がダダ漏れでまったく貯まっておらず、実にもったいなく悔しい思いになったことがあります。

さて、ここでもし浴槽の穴が十分に小さかったなら、10分貯めたお湯は、全部流れなかったでしょうか?

おそらく流れなかったでしょう。

7~8分貯めた分くらいは流れきらず、残っていた可能性もあります。

より具体的な例を出します。

1分間に蛇口から15Lのお湯が出るとして、浴槽の穴の排水能力が1分当たり5Lなら、10分後、150Lのお湯が出て、浴槽からは50Lのお湯が抜けます。結果、「150-50=100L」の式から、10分後の浴槽のお湯はかなり残っていることになります。

一方、浴槽の穴の排水能力が1分当たり15L以上なら、お湯は残っていないでしょう。

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 以上はたとえ話です。

★浴槽に貯まったお湯:マネー総量

★蛇口から出るお湯の量:中央銀行の債券購入によるマネー供給量

★浴槽の穴から排水されるお湯の量:償還される債券の金額

のイメージです。以下、本論に移ります。

※あくまで例え話なので、正確性に欠ける部分があります

先週のFOMC

先週のFOMCでFRBの資産縮小を年内に開始する可能性が示唆されました。

2017.4.26の時点で、FRBの資産規模は約4.47兆ドルです。

※データ出所:The Fed - Monetary Policy

今年中に開始されるかもしれない縮小プランによる資産縮小額は

一年目:年間0.3兆ドル(3000億ドル)

二年目以降:年間0.6兆ドル(6000億ドル)

との報道もされています。

2008~2014年のFRBによる量的緩和

そもそもFRBの量的緩和(QE)による資産購入額はどのくらいの規模だったのか、ふり返ってみます。

QEは2008~2014年の間に3度実施されています。

QE1<期間:2008~2010年><買い入れ資産額:1.72兆ドル>

QE2<期間:2010~2011年><買い入れ資産額:0.60兆ドル>

QE3<期間:2012~2014年><買い入れ資産額:1.61兆ドル>

合計買い入れ資産額:3.93兆ドル

途中、途切れている期間もありますが、ざっと6年かけて3.9兆ドルを買い入れていたことになります。

※データ出所:『中央銀行は持ちこたえられるか』河村小百合<2016年集英社新書>

そして、2014年10月のQE3終了後、現在まで2年半以上、FRBは約4.5兆ドルの資産規模を増やさず、減らさず、維持してきました。

満期が来て償還される債券を再び買い替えることで、排水されるお湯と同じ量のお湯を蛇口から注ぎ込み、浴槽に貯まっているお湯の量(マネー総量)を保ってきたと表現できます。

<FRB保有資産の推移>

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※出所:The Fed - Monetary Policyのデータより管理者作成

FOMCのアナウンスと資産規模の縮小プラン

それを、先週のFOMCで、初年度は0.3兆ドル、次年度以降0.6兆ドルずつ減らしていく可能性があります・・・とアナウンスしてきたわけです。

もしこのプラン通りのことが実施されれば、FRBの資産額は現在4.5兆ドルとすると、

1年後(2018年):4.2兆ドル

2年後(2019年):3.6兆ドル

3年後(2020年):3.0兆ドル

4年後(2021年):2.4兆ドル

5年後(2022年):1.8兆ドル

6年後(2023年):1.2兆ドル

7年後(2024年):0.6兆ドル・・・

と減っていく可能性があります。

つまり、

2014.10月~2017年⇒排水される量蛇口から出るお湯の量

だったのが、

2017年後半のどこかの時点⇒排水される量蛇口から出るお湯の量

の状態に変化する可能性があるわけです。

その結果、かつてのQE並みの激しいペースで、マネー総量が増加ではなく、減少していく可能性があるといえます。 

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FRB資産規模縮小の影響

もし本当にこのようなペースで資産縮小がなされれば、債券市場、株式市場にとっては大きなネガティブ要因になります。

米国債市場では有力な買い方の購入ペースが落ちることになり、国債価格は下がる(利回りは上がる)可能性が大きくなります。

株式市場にとっては、国債の金利が上がることは大きな株価下落要因です。

また、浴槽のお湯の量、マネー総量をFRBが減らしていくことは、株式市場にとってはやはり大きな株価下落要因です。何もいいことはありません。いうなれば、「逆量的緩和」のようなことが、米国で今年中に始まるかもしれない、ということです。

おわりに

2008年の世界金融危機以降、時期にズレはあるものの、米国、ユーロ圏、英国の中央銀行は金融システム維持のため最後の貸し手として資産規模を拡大し、マネー総量を増やしてきたと思われます。中国でもリーマンショック後、4兆元の景気対策がとられました。日本でも大規模な金融緩和政策がとられています。

<ここ5年間の日銀保有資産の推移>

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 ※出所:Bloomberg Markets ※<単位:10億円>

現在の株式の高騰は少なからず2008年以降のマネー総量の増加に支えられている部分が大きいと思われます。

そして、マネー総量の流れを読む上で、FRBの動きは重要だと思われます。

もしFRBが浴槽に貯まったお湯の量を減らしていく方針を強硬に堅持した場合、金融市場には大きな波乱が予想されます。

ただ、日銀やECBは現在も量的緩和を継続しており、また、FRBが本当に今回の発表通りに事を進めるのかどうか、とりあえず発表して市場の様子をうかがっているのか、わたしのような一個人投資家にはわかりません。

(実際こんなペースでの縮小は無理じゃないか?途中で何かが破綻して、「逆量的緩和の逆」=「量的緩和」に逆戻りするのでは?という意見もあるようです)

ただ、現在の株高をもたらしている大きな要因に変化の兆しが見えてきている可能性はあります。

湯船のお湯は減り始めるのかもしれない・・・

不安を煽るつもりはありませんが、大局的な観点から2017年は一つのターニングポイントなのかもしれないので記事にしました。

今後もFRBの動向は何かあれば記事にしていきたいと思います。

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