ユキマツの「長期投資のタイミング」

「景気(企業利益動向)」「中銀の金融政策(金利動向)」「投資家のリスク許容度」などから長期投資のタイミングを探る投資ブログ

「長期投資に適しそうな国の選定作業」⑪ ~フィリピン・経済成長編~

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長期投資に適する国は事前に分かるものなのか?

そんなことは考えない方が身のためか?

「長期投資に適しそうな国の選定作業」シリーズの11回目はアセアンの一角、フィリピンです。

フィリピンのメモ

人口は約1億人で世界12位の人口大国です。

名目GDPランキング(ドル建て)では、世界第36位。

一人当たり名目GDPは約2900ドル、まだ伸びしろが大きそうな水準です。

※データは IMF - World Economic Outlook Databases (2017年4月版)より

 

中国のメモ

全世界の株式を対象とした株価指数「MSCI ACWI」(浮動株調整後)では、中国は約3.7%程度の配分になるようです。

この指数の国別シェアでは米国、日本、イギリスに続いて第4位にランクインしています。

※データ出所:iシェアーズ MSCI ACWI ETF 2017.7.21時点

長期投資に適するのは、長期的な経済成長率が高い国ではないか?

一般にある国の「名目経済成長率」とその国の「時価総額(市場規模)の増加率」には長期的には正の相関があるとされます。

そして、「時価総額の増加率」と「株式インデックスの上昇率」にも正の相関があります。 

したがって、

長期的に経済成長する国の株式インデックスは長期的に上昇しやすい

つまり、

長期投資に適するのは、長期的な経済成長率が高い国ではないか?

という仮説が成り立ちます。


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長期的な経済成長が期待できる国を予測することは可能なのか?

上記の仮説が正しくて、投資する前に長期的な経済成長を成し遂げる国を予測することができれば、その国の株式インデックスを長期保有することで、長期投資の収益率を大きくできそうな気がします。

 

では、長期的な経済成長が期待できる国を予測することは可能なのか?

 

おそらく確実に予測することは不可能だと思われます。

 

今、高い成長率を維持していても、今後何らかの理由でガクッと落ちるかもしれない、その後も長期的に低迷するかもしれない、逆に今、成長率が低くても、何らかの理由で成長率が上昇しないとはいえません。

 

内戦や政治の混乱、大地震、自然災害、感染症の大流行など、全く予期せぬアクシデントが起きれば、経済成長どころの話ではなくなります。

株価予測と同様、未来のことは断言できないと思われます。

ただ、以下のような手順を踏むことによって予測の精度を少し向上させることができる、かもしれません。

※あくまで「予測が当たる確率が上がるかもしれない」程度の話です

 

①できれば人口が増える国や地域の株式インデックスを選択する

実質経済成長率に関しては、

実質経済成長率

=人口増加率+一人当たり経済成長率

という式が成り立ち、二つの要素に分けて考えることができるようです。

 

つまり、一年間で人口が1%増えれば、一人当たり経済成長率が0%でも、実質経済成長率は1%になります。

逆に、人口が1%減れば、一人当たり経済成長率が1%でも、実質0成長になってしまいます。

この式を見れば、長期的な人口の増減が一国の経済規模に大きな影響を与えることは明白です。

 

そして、「人口予測」は数ある経済指標の中で、比較的、的中率が高い指標とされます。

※「予測」という言葉を使っていい経済予測は、人口くらいだ(他の指標はなかなか予測が難しい)と主張する人もいます

 

「現在の人口、将来の出生率、将来の生存率、将来の国際人口移動率」などのデータがあれば、ある程度精度の高い予測ができるようです。

したがって、比較的予測が当たりやすい人口増加率を頼りに「長期的な経済成長が期待できる国を予測する」こと、つまり

できれば人口が増える国や地域の株式インデックスを選択する

 のは理屈では正しいことになります。

※単に人口増加率が高ければいいわけでもなく、一人当たり経済成長率とのバランスが大切だと思われます

②一人当たり経済成長率は、近年の長期データを用いて推測するのもアリか?

次に、一人当たり経済成長率について考えてみます。

こちらは、人口増加率より予測が難しく振れ幅も大きな要素です。

何か手はあるのか?

 

経験的な私見に過ぎませんが、

実質経済成長率

=人口増加率+一人当たり経済成長率

なので、

一人当たり経済成長率

=実質経済成長率ー人口増加率

になります。

したがって、例えば、

過去10年の一人当たり経済成長率の平均

=「過去10年の実質経済成長率の平均」ー「過去10年の人口増加率の平均」

になります。

10年を20年にしても同様です。

 

このように、単年度ではなく、一人当たり経済成長率の「長期平均」を参考にすることで、ある程度将来予測はできるかもしれません。

仮に、2005~2015年の一人当たり経済成長率の平均=1.0%であれば、2015~2025年の平均値も「1.0%」から極端に大きくぶれないのではないか、という推測です。

一年ごとの変動は大きいですが、長期でならすと意外とぶれは小さいようなのです。

フィリピンの実質経済成長率、人口増加率、一人当たり経済成長率

ここからフィリピンの実質経済成長率、人口増加率、一人当たり経済成長率について紹介します。

長期的な俯瞰

まず長めの期間で俯瞰してみます。

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※出所:世界経済のネタ帳のデータより管理者作成

上記の表は、フィリピンの実質経済成長率、人口増加率、一人当たり経済成長率を

「1980~2015年」の35年間

「1990~2015年」の25年間

の年率平均で示したものです。

人口は年率平均2%程度の増加、「一人当たり経済成長率」は「1~2%台」が長期平均。

この数値だけみると、悪くはないですが、インドやインドネシア、中国などと比較すると新興国としては少し物足りない感もあります。

 

年代ごとの年率平均と所感

次に、1980~2015年の35年間を10、10、10、5年間で区切って年率平均を算出し、さらに「長期投資」を想定し、2015~2035年の人口増加率の推計を加えると、下記表になります。

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※出所:世界経済のネタ帳国連人口推計2015年版(中位推計)のデータより管理者作成

人口増加率は今後低下していくと思われるものの、2015-2035年の20年で年率1.3%

の増加と推計されています。

先進国と比較すると高い水準です。

 

そして注目すべきは、一人当たり経済成長率。

1980年代には、マイナスでした。

1990年代もパッとしませんが、徐々に増加傾向、2010-2015年は4%程度まで上昇してきています。

かつての政治の混乱や1997年のアジア通貨危機の影響などにより経済発展はなかなか困難な雰囲気でしたが、近年は明るい兆しがさしている、という感じでしょうか。

アジア通貨危機とは|金融経済用語集

 

未来のことはわからず、わたしの勝手な推測ですが、これまでの長期平均を重視すると、

1.3%<人口増加率>+3.5~4%<一人当たり経済成長率>=4.8~5.3%

の計算から、2015-2035年の実質経済成長率は年率平均でざっと

5%

を期待できなくもないかもしれません。

5%は高い水準なので、

フィリピンは長期投資に適する国?

と推測します。

※わたしの推測が当たる保証もなく、過去のデータを眺めて行った一つの判断に過ぎないので、投資は自己判断、自己責任でお願い致します

参考データ

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※出所: GLOBAL NOTE、WFEのデータより管理者作成 ※時価総額は2003年末~2016年末で比較

これまで記事にした国や全世界のドル建て「名目GDP」と「時価総額」の変動を、データがそろいやすい2003~2016年の期間でまとめた表です。

 

フィリピンはインドやインドネシアと同じくらいのGDPの変化ですが、この期間に関して時価総額の上昇幅は約10倍と、とても大きいです。

今後もこのペースが続く保証はなく、市場もまだ小さく(2016年末でフィリピンの時価総額は約27兆円程度。日本の20分の1以下。1ドル=113円換算)、今後何かあったときの下落幅も大きくなりそうな雰囲気はありますが。

あとがき

・1986年2月22日に起きた「エドゥサ革命」(二月革命、ピープル・パワー革命)で、マルコス政権崩壊

・1991年 ピナツボ山の噴火

・1997年 アジア通貨危機

いろいろ大変な時期を経て、近年は高めの経済成長を続けているフィリピン。

 

ただ、2016.6月にドゥテルテ大統領就任。

それまでの親米路線から親中路線?へのシフト、麻薬組織との激しい闘争など、国民の高い支持を受ける大統領の下、何か波乱の芽のようなものもあるようなないような。

 

国民の年齢が若くて働き手も増え続け、長期的には期待を持ちやすい一方、貧富の差も激しくどこか危なっかしい、投資対象国としてわたしにはそんな印象がある国です。

関連記事です。インド、中国、インドネシアも記事にしています

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