ユキマツの「長期投資のタイミング」

「景気(企業利益動向)」「中銀の金融政策(金利動向)」「投資家のリスク許容度」などから長期投資のタイミングを探る投資ブログ

「2017.3月」金融機関の貸出態度判断DI<日銀>で探る信用状態

世の中の金回りをよくする役目を引き受けているのが、金融機関。

その金融機関の貸し出し態度は今、どうなのか。

それを知ることは、おそらく長期投資に役立ちます。

日銀が3カ月ごとに発表しているデータ、

金融機関の貸出態度判断DI(以下、DIと略)の紹介です。

金融機関の貸出態度判断DIとは

日銀が行っている調査の一つで、

日本の金融機関の貸出態度に関して、

「緩い」と回答した社数の構成比(%)

から

「厳しい」と回答した社数の構成比(%)

を減じたもの。

です。

全社数の60%が「緩い」と回答し、40%が「厳しい」と回答すれば、「60-40=20」

から、「DI20」になります。

そして、DIが

●大きくなるほど⇒貸し出し態度が緩い

●小さくなるほど⇒貸し出し態度が厳しい

と判断します。

1983.6月以降の30年以上のデータがあります。

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わたしなりの解釈

わたしなりのDIの解釈を書きます。

※一般的なものではありません

DIは日本の信用状態を判断する一つの指標だと思われます。 

※「信用買い残」「マージンデット」と同様、わたしはDIを信用状態を探るための指標と位置付けています。 

<信用状態とは>

またどこかで詳しく説明させていただきますが、ごく簡単に「信用」を説明すると、

信用=貸し借りの関係

 であり、

借金したら拡大して借金を返したら縮小するもの

それが信用(クレジット)です。

「信用状態=世の中の借金(マネー)のふくらみ具合」ともいえます。

では「株式の割安割高」と「信用状態」がどう関係するのか?

 

端的に乱暴にいってしまうと、

●世の中全体の借金が膨らめば膨らむほど(誰かが借金すればするほど)

●世の中のマネーは膨張し

●世の中全体の資産評価額は増加し、株価は上がりやすく

●株式は割高になる傾向がある

と思われます。

★信用拡大

⇒マネー膨張

⇒「資産評価額」増加傾向

⇒株価上昇傾向

⇒株式は割高?

同様に、

●世の中全体の借金がしぼめばしぼむほど(誰かが借金を返せば返すほど)

●世の中のマネーは収縮し

●資産評価額は減少し、株価は下がやすく

●株式は割安になる傾向がある

と思われます。

★信用縮小

⇒マネー収縮

⇒「資産評価額」減少傾向

⇒株価下落傾向

⇒株式は割安?

要するに、

株価は、世の中全体の借金の膨らみ具合(信用状態)の影響も受ける

ので、

信用状態の把握は株式の割安割高の判断指標にもなり得る

 と考えます。

DIは金融機関の貸し出し態度を示唆する指標なので、金融機関の貸し出し態度が

★緩い

⇒信用拡大(ふくらむ)

⇒世の中のマネー膨張傾向

⇒株価上昇傾向

⇒株式は割高?

★厳しい

⇒信用収縮(しぼむ)

⇒世の中のマネー収縮傾向

⇒株価下落傾向

⇒株式は割安?

と判断する目安になるとわたしは考えています。 

 

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DIの推移と歴史

DIには「中小企業」「大企業」「中堅企業」の三種類あるのですが、本ブログでは「中小企業」のDIを用います。

中小企業が最も金融機関の貸し出し態度に敏感と思われるからです。

では1983年以降のDIの推移をみてみましょう。

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※以下サイトデータより管理者作成 日銀

概ね「-20~+30」の間で推移しています。

これだけでは殺風景なので、大きなイベント情報を書き込んでみると以下のようになります。

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※以下サイトデータより管理者作成 日銀

上記グラフから、日本の近年の経済動向の歴史がうかがえます。

●日本の80年代のバブル景気を金融機関が支えていたらしい

●バブル崩壊は1990年頃に始まり、その影響は長く続いていたようだ

●アジア通貨危機(1997~1998年頃)でDIはどん底まで落ち、ITバブル(1999~2000年頃)の風にもあまり乗れていない

●ようやくサブプライムバブル(2006~2007年頃)で息を吹き返す

●しかし、このバブルも崩壊し、リーマンショック後(2009年)に大きな底をつける

●その後、2013年頃からは金融機関の貸し出し態度は、緩みっぱなし 

DIの使い方

日経平均とDIを並べてみてみます。 

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※出所:以下サイトデータより管理者作成 日銀 ヤフーファイナンス

※日経平均は1984.6月からのデータのなので、約1年始まりはずれています

わたしの個人的な使い方ですが、過去の経験から、大雑把な判断として、

●DI:-10以下 ⇒ 日本株は割安?

●DI:+10以上 ⇒ 日本株は割高?

の目安にしてもよいのではないかと思います。

日経平均のグラフの赤四角は割高圏の目安、青四角は割安圏の目安です。

1980年代はほとんど赤四角の範囲に入ってしまい、アバウトで精度はあまり高くない指標ですが、他の指標と併せて用いると、威力を発揮する指標ではないかと考えています。

DIの現状判断<2017.3月データ>

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※出所:以下サイトデータより管理者作成 日銀

2017.3月のDIは「+20」です。

割高圏の目安「+10」を大きく上回っており、今の日本の金融機関の貸し出し態度は「とても緩い」と推測されます。

つまり、日本では信用が膨張傾向で、株価はあふれるマネーに支えられている可能性を拭い去れない状態と推測されます。 

おわりに 

3ヵ月ごとのデータですが、DIは信用状態を探る意味で、長期投資に役立ちそうな指標です。

ただ、DIは信用状態を反映する一つの目安に過ぎず、DIによる判断は単なる近年の経験則であり、未来を予測する指標ではありません。

他の指標とあわせて利用すると現状判断の精度が上がると思われます。

本サイトでは約3ヶ月ごとにデータを確認、追跡していく予定です。

DIは以下のサイトで公表されています。

日銀《主要時系列》統計データ表

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