ユキマツの「長期投資のタイミング」

「景気(企業利益動向)」「中銀の金融政策(金利動向)」「投資家のリスク許容度」などから長期投資のタイミングを探る投資ブログ

【ジャンク債スプレッド】で探る株式の割安、割高

知っている人にはいまさらな常識、知らない人は全く知らない指標の一つ、クレジットスプレッドとその具体例、ジャンク債スプレッドの紹介です。

※わたしなりの個人的な解釈なので、一般的ではない可能性があります。

クレジットスプレッドを知るメリット

 

長期的観点から株式の割安割高を判断する手がかりになると思われます

 

クレジットスプレッドとは 

債券を発行する発行体の代表として国や企業があります。

国が発行する債券は国債、企業が発行する債券は社債と呼ばれます。

国と企業を比較すると、一般的に信用力(債務不履行を起こさない可能性)が高いのは国債であり、低いのは社債です。

つまり、社債より国債の方が相対的に債務不履行を起こす可能性(デフォルトリスク)が低いとされています。

 

ここでもし、国債と社債の利回りが同じであれば、安定的な利回りを求める投資家は、国債に投資します。

利回りが同じなのに、わざわざデフォルトリスクの高い社債に投資する意味がないからです。

したがって、資金調達のために企業が社債を発行して投資家に買ってもらうためには、基本的に国債より高い金利を上乗せして設定しなければなりません。

こうして、社債と国債の利回りには自然と利回り差が生まれ、上乗せされた分の利回り差をクレジットスプレッドと呼びます。

 

たとえば、債券が償還されるまでの期間が同じ社債と国債があり、社債の利回りが5%、その国の国債利回りが2%であった場合、

5%-2%=3%

がクレジットスプレッドです。

投資家はこの企業と国に3%分信用力の差がある、それだけ社債は国債よりデフォルトリスクが高いと判断していると考えられます。

★信用力の差⇒利回りの差=クレジットスプレッド

★クレジットスプレッド=信用力の低い債券利回りー信用力の高い債券利回り

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クレジットスプレッドをどう解釈するか

 

さて、このクレジットスプレッド、常に一定しているわけではありません。

絶対的・確定的な利回りの差があるわけではなく、開いたり縮んだり、常に変動しています。

つまり投資家が判断する「債券発行体の信用力」は確定的なものではなく、その時々の状況に応じて信用力の評価は、ぶれているともいえます。

 

その要因は需給要因、債券発行体である企業の業績や財務状況、国家財政、社会の安定度などなど、多々あると思われますが、わたしは中でも、投資家心理や投資家のリスク許容度に着目します。

 

つまり、投資家心理が安心・楽観傾向でリスク許容度が高い時期には、本来社債に潜むリスクは過小評価され、このような時期には安心だけど利回りの低い国債よりも、

少し危険だけど利回りの高い社債が好んで買われ、

 その分社債の利回りは過剰に低くなり(※一般に債券価格が上がると利回りは低くなります)、結果的に国債利回りとの差が過剰に小さくなり、

スプレッドが縮小する

傾向があると考えます。

 

逆に、投資家心理が不安・悲観傾向でリスク許容度が低い時期には、社債リスクは過大評価され、このような時期には利回りは低くても安心な国債が好んで買われ、

利回りは高いかわりにリスクが高い社債は過剰に売られ、

その分社債の利回りは高くなり(※一般に債券価格が下がると利回りは高くなります)、結果的に国債利回りとの差が過剰に大きくなり、

スプレッドが拡大する

傾向があると考えられます。

★投資家心理が安心・楽観傾向、リスク許容度が高い

⇔社債発行体の信用力が過大評価される

⇔高い利回りにつられて社債が過剰に買われ利回りが低下

⇔スプレッド縮小(国債との利回り差が縮小)

 

★投資家心理が不安・悲観傾向、リスク許容度が低い

⇔社債発行体の信用力が過小評価される

⇔過剰なリスク回避の心理から社債が過剰に売られ利回りが上昇

⇔スプレッド拡大(国債との利回り差が拡大)

この仮説が正しければ、

クレジットスプレッドの動向を観察していれば、投資家心理やリスク許容度を探ることができる可能性が高い

と考えられます。

そして、一般に「投資家心理が安心・楽観、リスク許容度が高い」時期は株式は割高になりやすく、「投資家心理が不安・悲観、リスク許容度が低い」時期は、株式は割安になりやすいと考えられるので、

クレジットスプレッドの長期的な観察

 が株式の割安割高時期の判断にも役立つ可能性があるとわたしは考えます。

クレジットスプレッドの使い方

 基本的に、

★クレジットスプレッドが縮小するとき

⇒投資家心理は安心・楽観傾向、リスク許容度高い

⇒株式などのリスク資産は割高傾向

★クレジットスプレッドが拡大するとき

⇒投資家心理は不安・悲観傾向、リスク許容度が低い

⇒株式などのリスク資産は割安傾向

と判断します。

より具体的には、

①長期間のクレジットスプレッドのデータを集め、その平均値(代表値)を求め、

②平均値よりスプレッドが大きい時期は、どうちらかというと投資家心理は不安・悲観傾向、リスク許容度は低い状態であり、株は割安傾向

③平均値よりスプレッドが小さい時期は、どうちらかというと投資家心理は安心・楽観傾向、リスク許容度高い状態であり、株は割高傾向

と判断します。

 

以上、クレジットスプレッドの説明と、わたしなりの解釈、その使い方についての説明でした。

以下、ジャンク債スプレッドの説明に移ります。

ジャンク債スプレッドとは

クレジットスプレッドは様々な種類がありますが、そのうちの一つ、ジャンク債スプレッドとその利用方法を紹介します。

ジャンク債スプレッドは

①「米国のジャンク債(ハイ・イールド債。信用力の低い、高リスクの債券)」と「米国債(10年物)」の利回りの差を長期観察し

②投資家心理やリスク許容度を探り

③株式の割安割高の判断の目安にする

 ための指標です。

 ※わたしの個人的な理解、使い方なので、一般的ではない可能性があります

 ※「ジャンク債スプレッド」は一般的な名称ではありません

※本ブログでは米国ジャンク債の利回りとして「BofA Merrill Lynch US High Yield BB」の利回りを用いています。下記サイト参照ください。

fred.stlouisfed.org

例えば、ジャンク債の利回りが7%、米国債の利回りが3%なら

7%-3%=4%

がジャンク債スプレッドになります。

 

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ジャンク債と米国債の利回りの推移

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※出所:◎St. Louis Fed米国 10年 債券利回りのデータより管理者作成

上記グラフは<1996.12月末~2017.5月末>のジャンク債と米国10年国債の利回りの推移を追ったものです。

クレジットスプレッド、すなわち米国債利回りへの上乗せ金利の幅は、開いたり縮まったり、常に変動していることが読み取れます。

リーマンショック後のジャンク債利回りは一時約16%に達しており、債券らしからぬ動きをみせています。(一般に債券は利回りが上がると、債券の価格は下落しています。つまり、ジャンク債の価格はリーマンショック後に暴落しています。)

こういう危機に弱い一面がジャンク債の「ジャンク」と称される所以です。

普段は高利回りで、一見いい商品なんですが、いざというときにもろい動きを見せます。 

【ジャンク債スプレッド】の推移と主要データ

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 ※出所:◎St. Louis Fed米国 10年 債券利回りのデータより管理者作成

上記グラフは<1996.12月末~2017.5月末>のジャンク債スプレッドの推移を示したものです。

ジャンク債スプレッド=ジャンク債利回りー米国10年国債利回り

2002年、2008~2009年、2011年ごろに大きな山があるのが確認できます。

ITバブル崩壊後、リーマンショック後、欧州債務危機の時期にスプレッドが拡大していたことが読み取れます。 

 

【ジャンク債スプレッド】の主要データ

<期間:1996.12月末~2017.5月末の月末データより>

★平均値(幾何平均):3.1

★中央値:3.0

【ジャンク債スプレッド】の使い方

①長期的な平均値との比較

 

20年以上のデータの平均値が約3.1なので、基本的にこの数値より

★小さい

⇒投資家心理は安心・楽観傾向、リスク許容度高い

⇒株式などのリスク資産は割高傾向

★大きい

⇒投資家心理は不安・悲観傾向、リスク許容度が低い

⇒株式などのリスク資産は割安傾向

 と判断する目安にはなるかと思います。

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 ※出所:◎St. Louis Fed米国 10年 債券利回りのデータより管理者作成

 

②5.5を超えるときは株式は「割安圏」、2.0より小さいときは株式は「割高圏」の目安か?

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 ※出所:◎St. Louis Fed米国 10年 債券利回りのデータより管理者作成

あくまで近年の経験則で、理論的なものではありませんが、ジャンク債スプレッドが

★5.5を超えるときは株式は「割安?」

★2.0より小さいときは株式は「割高?」

と判断する目安にしてもよいかもしれません。

同時期のS&P500のグラフを併記してみます。

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 ※出所:ヤフーファイナンスのデータより管理者作成

ただ、米国社債スプレッドと同様、ジャンク債スプレッドも株式の割高圏の時期に関しては、あまり精度が高い情報ではないです。

1996~1997年、2003~2004年は株式が割高な時期とはいえません。

完全に間違っているわけではありませんが、割高な時期に関してはあまり信憑性がない。

どちらかというと、株式の割安圏を判断する上で力を発揮してくれる指標のような気がします。 

そして、「株式の割安圏を判断するのに便利」という意味で、恐怖指数信用評価損益率東証一部PBR米国社債スプレッドと似た傾向を持つ指標かもしれません。

その他

◎ジャンク債利回りのデータと米国10年国債の利回りのデータは下記サイトでほぼリアルタイムで入手できます。

したがって、ジャンク債スプレッドのデータも誰でも簡単に知ることができます。

即時性が高いので便利です。

米国市場の投資家の投資家心理やリスク許容度をある程度反映する指標と思われ、スプレッドが短期的に

★急上昇している⇒明確なリスクオフ相場

★急低下している⇒明確なリスクオン相場

 と判断する指標にもなると思われます。

fred.stlouisfed.org

jp.investing.com

 

◎長期的にみて、今、株式は割安か割高か?

この問いに対して、一つの指標だけで安直に判断するのは危険であり、複数の指標で総合的に判断することが大切とわたしは考えています。

一般に株式が「割安な時期」を判断する目安になると思われる以下の指標も参照ください。

恐怖指数

信用評価損益率

東証一部PBR

米国社債スプレッド

 

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