少し古いデータになりますが、1970年から2006年までの37年間について、1年間の平均リターンを調べた実績値として
①日本債券:6.5%
②日本株式:10.7%
③外国債券:4.4%
④外国株式:9.8%
というデータがあります。
※出所:『大人の投資入門』北村慶 2008年
この期間のデータでは、4つの資産クラスの中で、日本株式の期待リターンが最も高かったことになります。
しかし、2017年に生きるわたしたちにとって、問題は今後です。
もう少し時間軸を前にずらし、1995~2015年の20年間の推移を、「時価総額(市場規模)」と「名目GDP」の観点から見つめてみることで、日本の株式インデックス(日経平均やTOPIX)は長期投資に適するのかどうか、考察してみます。
日本、米国、世界の時価総額の推移
※出所:以下のサイトデータより管理者作成①GLOBAL NOTE②WFE
上記グラフは「1995年末の時価総額=1.0」として、世界、米国、日本の時価総額(すべてドル建て)の20年間の動きを追ったものです。
単位は<倍>です。
米国や世界の時価総額は20年で3.5~4.0倍になっているのに対し、日本は1.5倍に届きません。
この期間、時価総額の年率平均の伸びは「世界:7.0%」「米国:6.6%」「日本:1.6%」です。
※ドル建ての計算なので、円建ての数値とは異なります
※時価総額は概ね株価インデックスに連動します
20年といえば、十分長期投資の名に値する期間です。
どうしてこんなに差がつくのか。
主要な原因として時価総額と経済規模の関係が挙げられます。
長期的には一国の時価総額(市場規模)と名目GDP(国内総生産。経済規模)の間には正の相関があるとされます。
つまり、長期的には経済規模が大きくなれば市場規模も大きくなり、経済規模があまり大きくならなければ、市場規模もあまり大きくならない傾向があるとされます。
では実際にこの20年間でGDP(経済規模)がどのように変化したかみてみます。
日本、米国、世界の名目GDPの推移
※出所: Global Note
上記グラフは1995~2015年の名目GDP(ドル建て)の推移を示しています。
ぱっとみて、世界、アメリカは増加傾向、日本は停滞傾向であると判断できます。
実際、 20年間で
日本は5.45兆ドル⇒4.38兆ドルで約20%の減少
米国は7.66兆ドル⇒18.04兆ドルで約135%の増加
世界は30.99兆ドル⇒74.20兆ドルで約139%の増加
です。
それぞれの経済成長率の年率平均は
「世界:4.5%」「米国:4.4%」「日本:-1.1%」
です。
同期間で時価総額の増加率は年率平均で
「世界:7.0%」「米国:6.6%」「日本:1.6%」
でした。
※実質実効為替レートでみると、1995年頃は超円高、2015年頃は超円安であり、これは日本のドル建て名目GDPが20年間でマイナス成長である要因の一つです
つまり、この期間、このケースにおいては、
長期的には経済規模が大きくなれば市場規模も大きくなり、経済規模があまり大きくならなければ、市場規模もあまり大きくならない傾向がある
という仮説はそれなりに説得力を持ちそうです。
すなわち、
あまり経済成長しなさそうな国の株式インデックスを長期的に保有していても、あまり期待できないかもしれない
ということになります。
結局、日本の株式インデックスへの長期投資が報われるために必要な条件は何か?
このように考えてみると、結局のところ、TOPIXや日経平均への長期投資が報われるために必要な要因は、
今後の日本の経済成長ではないか?
という仮説が有力になってきます。
そして、冒頭の『1970年から2006年までの37年間について、1年間の平均リターンを調べた実績値として国内株式は10.7%であった』という過去の実績の価値は、意外に低いのかもしれません。
結論
以上をふまえて、
日本の株式インデックスは長期投資に適するか?
に対して、本記事では、
★今後、日本の長期的な経済成長が期待できる人にとっては
⇒ 適す
★今後、日本の長期的な経済成長があまり期待できない人にとっては
⇒ 適さない
を回答にしたいと思います。
また、長期投資と経済成長率はおそらく切っても切れない関係にあると思われ、後日「経済成長率」に関する記事を書かせていただく予定です。