BIS(国際決済銀行)が公表している実質実効為替レートで主要先進国通貨の割安・割高を探ってみます。
実質実効為替レートとは
為替レートにはいくつか種類があります。
2017.7.13現在「1ドル=約113円」のよく聞く為替レートは名目レートです。
「名目」には「実質」が対応します。
「実質」→「インフレ変動(物価変動)で調整した」
の意味です。
また、実質実効為替レートの
「実効」→「貿易額などに応じて加重平均して算出した」
の意味です。
一言でいうと、実質実効為替レートは単純な名目レートではなく、
各国のインフレ変動や貿易額に応じた調整を施した為替レート
のことです。
一般的な名目レートではわからない、
通貨の「実力」を推し量る指標の一つ
とみなす意見もあります。
詳しくは
◎金融情報サイト「実効為替レート」
◎マネー研究所「実質実効レートで「円の真の実力」を知る」
などを参照ください。
先進国8ヶ国の最新「実質実効為替レート・ランキング」
実質実効為替レートは、日本円だけでなく、他の国の通貨でも算出されています。
※BISの以下のサイトを参照ください↓
https://www.bis.org/statistics/eer.htm
本記事では、
<2010=100とする Narrow Indices、15 June 2017版>の
<1973年以降の月間平均データ>
で主要先進8ヶ国の通貨の最新(2017.5月)の実質実効為替レートを確認してみます。
結果は以下のようになります。
<2017.5月の実質実効為替レート>
↑割安?
1位 日本円 78.50
2位 カナダドル 80.11
3位 ユーロ 91.35
4位 豪ドル 95.02
5位 ポンド 101.91
6位 スイスフラン 109.91
7位 NZランドドル 111.27
8位 ドル 124.28
↓割高?
単純にこの数値だけで判断すると、円は最も割安、ドルが最も割高な通貨ということになります。
長期平均と平均値からのかい離
ここまでは一般的な話ですが、ここからわたしの個人的な分析に移ります。
たとえば1973.1月~2017.5月までのドルと円の実質実効為替レートの推移を見てみます。
※出所:Effective exchange rate indicesのデータより管理者作成
ドルと円を比較してみると、なにか不自然な点はありませんか?
わたしはこの44年以上の長期にわたって、実質実効為替レートに関しては、
円がドルより高い時期は、あまりない
ことが気になります。
1990年代は長期にわたって円の方が高い時期が続きましたが、その他の年代ではたいていドルの方が円より大きい値です。
実際にこの期間の平均値は
ドル:109.63
円: 93.06
であり、15ポイント以上、ドルの方が大きくなっています。
その原因が何か、わたしにははっきりしたことはわかりませんが、変動相場制に移行後、経験的に、
実質実効為替レートはドルの方が円より大きい
という傾向があるのは否定できないところです。
では8ヶ国のすべての1973.1月~2017.5月の平均値を見てみましょう。
日本円 93.06
カナダドル 91.19
ユーロ 91.86
豪ドル 88.30
ポンド 119.63
スイスフラン 94.61
NZランドドル 93.50
ドル 109.63
こうして見てみると、原因はよくわかりませんが、ポンドが約「120」と突出して大きく、ドルが「110」でそれに続き、その他の6ヶ国は88~95の間に収まっていることがわかります。2017.5月のレートと併記してみます。
ポンドに着目すると、44年以上の長期平均が約「120」です。
そのポンドが2017.5月時点で「102」でしかないのは、もしかしてポンドは割安なのではないか?という仮説が立たなくもない、と考えられます。
※ポンドの実質実効為替レートはブレグジットがらみで急落しています
上記をふまえて「実質実効為替レートの長期平均」と「2017.5月のレート」を比較してまとめたのが以下の表になります。
この表からは長期平均より低い水準にある
円、カナダドル、ポンドは割安傾向?
長期平均より高い水準にある
豪ドル、スイスフラン、NZドル、ドルは割高傾向?
という推測ができなくもないです。あまり自信ないですが。
これは単なる仮説であり、この判断が概ね正しければ、例えばFXで
円などの3通貨を買い建て、同時に豪ドルなどの4通貨を売り建てて長期間保有
し、割高割安が修正されれば儲かることになりますが、世の中そんなに甘くない気がします。
※一つのアイデアです。投資は自己判断、自己責任でお願い致します。
※ユーロは保留
ただ、一つの観点としては面白いので、ときどき記事にして確認する、かもしれません。
おわりに
後半は何だか変な記事になってしまいましたが、アイデアとしては面白いです。
ただ、実質実効為替レートはあまり参考にならない、という意見もあります。
わたしは長期的にはある程度参考になる指標だと考えていますが(短期、中期的には役立たない可能性が高そう)、いろいろな立場、考えがあります。
あくまでご参考までに。
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