JPモルガンアセットマネジメントの資料で興味深いグラフを見つけました。
上記グラフは米国の名目GDPの推移と米国の
・投資適格社債
・ハイ・イールド債
・S&P500
・REIT
のトータルリターンの推移を表したものです。
期間は1993年1月末~2017.6月末の14年5ヶ月です。
それぞれの資産のリターンの推移がとてもわかりやすく描かれています。
※配当収入にかかる税率などは配慮されていなさそうですが不明です
資産ごとのグロスリターン
1993~2017年で米国の物価は約1.6倍になっています。
※GDPデフレーターより。データ出所: 世界経済のネタ帳
したがって、1.6倍より資産は大きくなっていてくれないと、実質的に投資で資産が増えたとはいえません。
では、この期間で資産ごとにどのくらいリターンがあったのか、大雑把に見てみましょう。
1位 リート 約12倍
2位 S&P500 約9倍
3位 ハイ・イールド債 約6倍
4位 投資適格社債 約4倍
※名目GDPは約3倍
投資適格社債ですら約4倍です。
結果論になりますが、この期間に関しては、これらの資産に分散投資して一定の資産配分を守って長期投資を続けていれば、基本的に物価上昇率(約1.6倍)を大きく上回る投資リターンを実現できたことになります。
したがって、この期間に関しては、これらの資産のインデックスに長期分散投資を行うことは正解だったといえそうです。
米国市場へ長期投資を始める動機づけとしては申し分のない資料の一つといえるでしょう。
リターンの変動から読み取れること
過去のリターンというのは不変です。
眺めていると、非常に安心感があり、勇気をもらえるものです。
ただ、未来のリターンは常に不安定で不確実です。
この資料が伝えてくれることは、あくまでこの期間は素晴らしいリターンであった、ということだけで、未来もこの傾向が続くかは誰にもわかりません。
そして、輝かしいリターンの推移を描くこのグラフにも、注意すべきポイントがあります。
※出所:JPモルガンアセットマネジメント資料より管理者作成
それが①②ような、バブル崩壊期の存在です。
①はITバブル崩壊時期です。
この時期は株式が大ダメージを受けました。株式は「400」⇒「200」あたりまで激減しています。
同時期、リートと投資適格社債はこの時期、むしろ上昇しており、ハイ・イールド債は横這いです。
この時期は分散投資の良さが際立つ「株式暴落型」のバブル崩壊だったといえます。
②はサブプライムバブル崩壊期、いわゆるリーマンショック後の世界同時株安時期です。
この時期はリートが壊滅状態に陥りました。概ね「750」⇒「300」以下まで、半分以下に暴落しています。
株式も約半減、ハイ・イールド債は3~4割減、さすがに投資適格社債は軽微なダメージでしたが、総じて「暴落」という名にふさわしい「リスク資産総崩れ型」のバブル崩壊期だったといえます。
簡単にまとめると、上記グラフから
・14年で2回、長期投資家にとってとても厳しい時期があったこと。
・この期間に関して、資産価格は総じて上がっている時期が圧倒的に多かったですが、いつも上がり続けるわけではないこと
が確認できます。
当たり前のことですが、暴落、長期低迷時期さえなければ投資は楽しいと思います。しかし、永遠に株価が一本調子で上がることは、どうもないようです。上下動を繰り返しながら、実体経済の成長の度合いをベースに上昇していくらしい。
そして、株価の下落トレンドや暴落は今後、当分来ないかもしれないし、今年中に来るかもしれない、あるいはごく軽微な「調整相場」で済むかもしれない。
おそらく誰にもわかりません。
したがって、
「現在の資産配分における現金比率を上げるのが正しいのか正しくないのか」
も、誰にもわかりません。
例えば5年後、2022年くらいには「わかっている」かもしれませんが。
投資スタイルを崩さないことの重要性
ただ、長期投資家に技量、能力の差があるとすれば、その真価が最も表れやすいのは、このような暴落期、長期低迷期の投資行動だと思います。
こういう時期に
・自分のスタイルを崩さない
・怖くなって投資をやめない
そういう投資家は長期投資家として優れている可能性が高いと思われます。
わたしは基本的にチキンハートであり、もしもの暴落を耐え忍ぶ度量はないので、2015年にさっさとゲームから降り、現在現金100%です。
この2年間、特に後悔はありません。
種々の指標から
割高と自分が思うなら株やリートとは距離を置く
割安と自分が思うなら株やリートに近づく
長期投資に関しては、基本的にはそんなスタイルです。
バフェット太郎氏にかかれば・・・
バフェット太郎氏にかかればこんなわたしの投資スタンスは「超クソダサい」かもしれませんが、今後も堂々と「クソダサさ」をさらしていくつもりです。
長期投資で大事なのは「投資スタイルの優劣」以上に
自分に合った投資スタイルを作り上げ、苦しい時期も、それを実行し続けられるか
だと思うからです。
そして、バフェット太郎氏のここでの「クソダサさ」という表現の真意は主に
市場変動と感情に振り回され、値上がりすれば株を買い増し、値下がりすれば株を手放すような、投資スタイルの不安定さ
への警鐘なのではないかと勝手に解釈しています。
こういうスタイルは確率的にとても負けやすいスタイルだと思います。
わたしの一方的な解釈であり、誤解かもしれませんが・・・
おわりに
※出所:JPモルガンアセットマネジメント資料より管理者作成
少し脱線してしまいましたが、もう一度グラフを見てみます。
改めて見て、リート、米国株、すごい勢いです。リートや米国株が
・今後も実体経済(名目GDP)のラインから離れていくのか?
・②の時期のように実体経済のラインに急接近していくのか?
・このままの距離感が続くのか?
どうなるかはわかりませんが、ちょっと離れすぎな気はします。
一般的には、
・投資スタイルや現金比率の再確認
・もしもの下げ相場にどう対処するかのシミュレーションなど
はしておいて損はない時期ではないかとわたしは感じています。
↓関連記事です。近年の株式市場の歴史を時価総額の観点から見た記事です