時代や国を問わず、説得力を持ちつづけそうな言葉を拾ってまとめていくシリーズ「時空をこえたメッセージ」の8回目です。
今回はジョン・K・ガルブレイスの古典からのメッセージです。
62年前のメッセージ
知識があろうとなかろうと、不況の到来を予想することは誰にもできないのであって、それは当時もいまも変わらない。
(中略)
株式市場はブームに沸いていたが、どんなブームもいつかは終わる
(中略)
いったん株価の上昇が止まったら、つまり値上がりを当て込んで買う人が市場に流れ込んでこなくなったら、そのときには借入金利や保証金を払ってまで株を買う意味はなくなり、誰もが売ろうとするだろう。市場は売り一色になり、急落に転じることになる。
(中略)
風船を破裂させるのは簡単だが、針を刺して徐々に空気を抜くのはむずかしい。
引用元:『大暴落1929』ジョン・K・ガルブレイス<著>村井章子<訳> 日経BP社 2008
『大暴落1929』は米国における世界恐慌の顛末を、簡明に丁寧に描いたガルブレイスの著作であり、初版は1955年とのこと。
本多清六の『私の財産告白』の初版は1950年なので、ほぼ同時期です。
※『私の財産告白』についてはこちら↓
こんなある意味「古臭い」著作たちにわたしが惹かれるのは、わたしの頭が古臭いのか、あるいは投資家心理やバブルの発生と崩壊過程は、いつの時代もそれほど変わらない部分があるからかもしれません。
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身も蓋もない常識的な意見
・知識があろうとなかろうと、不況の到来を予想することは誰にもできないのであって、それは当時もいまも変わらない。
(中略)
・株式市場はブームに沸いていたが、どんなブームもいつかは終わる
引用元:『大暴落1929』ジョン・K・ガルブレイス<著>村井章子<訳> 日経BP社 2008
「不況の到来がいつかは誰にもわからない。
ブームはいつまで続くかわからないが、いつかは終わる。」
当たり前なことのようですが、常識的で謙虚な言葉であり、わたしは好きです。
また、ハワード・マークスがいいそうな言葉でもあります。
ハワード・マークスは今後何が起きるかは全く予測できないが、
今、信用サイクルのどの段階にいるかはある程度分かるハズ
という内容のことを述べています。
ハワード・マークスの著作⇒Amazon CAPTCHA
マージンデット、信用買い残を観察する意義の一つ
いったん株価の上昇が止まったら、つまり値上がりを当て込んで買う人が市場に流れ込んでこなくなったら、そのときには借入金利や保証金を払ってまで株を買う意味はなくなり、誰もが売ろうとするだろう。市場は売り一色になり、急落に転じることになる。
引用元:『大暴落1929』ジョン・K・ガルブレイス<著>村井章子<訳> 日経BP社 2008
1929年の大恐慌の時代から、米国ではすでに信用取引が活発に行われており、大暴落の直前には「ブローカーズ・ローン」(今でいう「マージンデット」のようなもの)が急増しており、株式ブームの盛り上がり、投機熱の激しさを反映していたとのこと。
近年のデータにおいても「マージンデットとS&P500」の相関は非常に強く、
「株価が上がれば借金してでも株を買いたくなる人の習性」
は根本的には変わっていないようです。
上記のメッセージも含めて考えると、マージンデットの数値が頭打ちする頃、そろそろ株ブームもピークを迎えるのかもしれない、という仮説が成り立ちます。
単なる仮説に過ぎませんが、今後もマージンデットや信用買い残のチェックは続けるつもりです。
※参照記事
・マージンデット
・マージンデットとS&P500の相関
バブルかもしれないけど・・・当局の考えること
風船を破裂させるのは簡単だが、針を刺して徐々に空気を抜くのはむずかしい。
引用元:『大暴落1929』ジョン・K・ガルブレイス<著>村井章子<訳> 日経BP社 2008
この文章の少し後、バブルに対する当局のとり得る対応の選択肢は
「ただちに何らかの措置を講じて人工的にバブルを崩壊させるか、あとでもっと重大な事態になるまで放置するか、どちらかしかない。(中略)人工的にやった場合には、責任者は誰かがあからさまになる」
引用元:同上
という文章が確認できます。
結局1929年のバブルを、当局は放置し、責任者はあいまいになったようです。
確かに、積極的に何か手をうち、後でバブルを破裂させた責任者として血祭りに上げられるよりは、
「バブルを作り上げてしまったかなあ、早めに対処した方がよさそう」
と分かっていても放置したくなる人の気持ち、人間らしいものでしょう。
現在でも金融当局のバブルに対処する選択肢が上記の二つ、
・人工的に崩壊させる
・放置
なのかどうかもわかりませんし、ITバブルの頃のグリーンスパン元FRB議長やサブプライムバブルの頃のバーナンキ元FRB議長の腹の中を、わたしが知る由もないのですが、もしかしたら、
風船を破裂させるのは簡単だが、針を刺して徐々に空気を抜くのはむずかしい
そんな言葉が「難しい対応を迫られた当局関係者の頭にチラッとよぎる」くらいのことはあったかもしれません。
単なるわたしの妄想ですが。
あとがき
以下、『大暴落1929』の第5章までの目次です。
第1章 夢見る投資家
第2章 当局の立場
第3章 ゴールドマン・サックス登場
第4章 夢の終わり
第5章 大暴落
・・・
別にもうすぐ暴落が来ると騒いでいるわけではありません。未来のことはわかりません。
ただ、こういう本を読んでおくと、もし下落相場に直面したとき、少しは耐性ができているかもしれません。
※下記サイトのデータによれば、ダウ平均は1929年9月に「386」の高値をつけ、1932年7月に「41」まで下落。約90%の暴落。こんなレベルの大暴落はもう起きないかもしれません。
<データ元>ダウ平均マン
また、下落相場が来なくても、バブルを知っている人、例えばリーマンショックやITバブルを経験したことのある人なら、単純に面白い読み物かもしれません。
「時空をこえたメッセージ」シリーズ、よければどうぞ。