日本株に比べて安定感が強かった先週の米国市場を
「米国株式の割安割高を判断する目安」
になると思われる指標で概観してみます。
指標は以下の5つです。
★恐怖指数<米国市場。S&P500の変動性>
★ジャンク債スプレッド<米国市場。クレジットスプレッドの一つ>
★S&P500のPBR<米国の代表的な株価指数のPBR>
★米国バフェット指標 <米国の時価総額÷米国の名目GDP>
★マージンデット指数<マージンデット÷米国名目GDP×100>
各指標を一つずつ確認していきます。
恐怖指数
恐怖指数(VIX指数)とは
①S&P500を対象とするオプション取引のボラティリティを元に算出される指数
②数値が高いほど投資家が相場の先行きに不透明感を持っているとされる
③1990年1月~2017年7月末の長期平均は「19.5」
④わたしは主に株式が割安な時期を示唆する指標と考えています(「30」以上で割安かも?)
⑤「10」程度で安定している時期は、投資家は安心・楽観・高揚していると考えられます
推移グラフと現在の状況判断
※出所:ヤフーファイナンスデータより管理者作成 ※期間:1990年1月~2017年7月末
2017.9.8は「12.12」です。下記グラフはここ1ヶ月の推移です。
※出所:Yahoo Finance
7月までの「10」前後というの極めて低い状態から、8月に入って「16」程度まで上昇する時期もありました。
しかし、また徐々に「10」に近い状態に落ち着いています。長期的にみれば、9.8の「12.12」という数値はかなり低い水準です。
この指標からは、米国市場の投資家心理は安心、楽観モードで
「株式は割安ではなさそう」
と推測されます。
ちなみに、日本版恐怖指数、日経VIの過去三カ月の動きと比べると、米国市場S&P500がいかに動揺していないかがよくわかります。
日経VIは「12」あたりの最低水準から「20」近くまで上昇しています。
<日経VI、ここ3ヵ月推移>
※出所:恐怖指数(VIX 日経VI VSTOXX) 日経平均比較チャート
<恐怖指数について詳しくはコチラ↓>
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ジャンク債スプレッド
ジャンク債スプレッドとは
①ジャンク債スプレッド
=米国のハイ・イールド債の利回り-米国債(10年物)の利回り
②ジャンク債スプレッドが大きい⇒株式は割安傾向
③ジャンク債スプレッドが小さい⇒株式は割高傾向
④★平均値(幾何平均):3.1
★中央値:3.0
<期間:1996.12月末~2017.6月末の月末>
推移グラフと現在の状況判断
※出所:◎St. Louis Fed◎米国 10年 債券利回りのデータより管理者作成 ※期間:1996.12月末~2017.6月末
2017.9.7時点のジャンク債スプレッドは「2.1」で割高圏の目安「2.0」を少し上回っていますが、長期平均の「3.1」よりはかなり低い値です。
単なる近年の経験則ですが、この指標からは株式は
「割高傾向?」
と推測。
※9.7時点のジャンク債利回り「4.13%」、米国債(10年物)の利回り「2.04%」
<ジャンク債スプレッドについて詳しくはコチラ↓>
S&P500のPBR
S&P500のPBRとは
①PBRは株式の割安割高を判断する基本的な指標の一つです。1株当たりの純資産に対し、株価が何倍まで買われているかを表したのがPBR(株価純資産倍率)です
②PBRが小さいほど割安、大きいほど割高と判断します
③S&P500のPBRは米国市場の割安割高を判断する一つの目安であり、わたしは主に割安な時期を知る目安として参考にしています
推移グラフと現在の状況判断
※出所:S&P 500 Price to Book Value
上記グラフは1999年末~2017.9.8のS&P500のPBRのグラフです。
2017.9.8時点の推計値は「3.13」であり、先週の「3.15」から若干低下しました。
長期平均の「2.76」は上回っており、現在は少なくとも割安な水準ではなさそうです。
※出所:S&P 500 Price to Book Value
<S&P500のPBRについて詳しくはコチラ↓>
米国バフェット指標
米国バフェット指標とは
①米国バフェット指標=米国の時価総額÷米国の名目GDP
②米国株式の割安割高を判断する目安
③1995~2016年の各年末のデータから、
★平均値:1.23
★中央値:1.31
④近年の経験則の域を出ませんが
★1.05以下は株式は割安圏?
★1.40以上は株式は割高圏? と推測
推移グラフと現在の状況判断
※出所:グローバルノートのデータより管理者作成 ※期間:1995年末~2016年末
2017.7月末の米国バフェット指標は「1.53」であり、過去最高水準です。
割高圏の目安「1.4」を上回っているので、7月末時点では株式は割高圏?と推測。
※2017年米国名目GDP:19.42兆ドル(IMF推計)
米国バフェット指標について詳しくはコチラ↓
マージンデット指数
マージンデット指数とは
①「マージンデット÷米国名目GDP×100」で算出する指数
②米国株式の割安割高を判断するためにわたしが個人的に利用している指標
③1995.1月~2017.7月の各月末のデータから、
★平均値:1.72★中央値:1.69④近年の経験則の域を出ませんが
●「マージンデット指数 1.3以下」⇒株式は割安圏?
●「マージンデット指数 2.4以上」⇒株式は割高圏?
※マージンデットは一般的な指標ですが、「マージンデット指数」は一般的なものではありません
推移グラフと現在の状況判断
※出所:ニューヨーク証券取引所、世界経済のネタ帳のデータより管理者作成 ※期間1995.1月~2017.6月
2017.7月末のマージンデット指数は「2.83」であり、過去最高の値です。
割高圏の目安「2.4」を上回っており、株式は割高圏?と推測。
※出所:ニューヨーク証券取引所、世界経済のネタ帳のデータより管理者作成
マージンデット指数について詳しくはコチラ↓
現時点での米国市場の割高割安、5つの指標からの推測、まとめ
あくまで経験的な判断ですが、現時点で各指標が示唆する株式の割安、割高の判断をまとめます。
★恐怖指数⇒割安ではなさそう
★ジャンク債スプレッド⇒割高傾向?
★S&P500のPBR⇒割安ではなさそう
★米国バフェット指標 ⇒割高圏?
★マージンデット指数⇒割高圏?
総合的に判断すると、わたしは米国株式は「割高圏?」と推測します。
したがって、現時点での米国株の長期投資のタイミングとしては
◎資産配分において、株式の配分比率を減らす
◎資産配分において、現金の配分比率を増やす
◎長期投資を一時やめる
のに適す時期だと考えています。単なる経験則ですが。
※長期投資に関する一つの判断です。短期、中期的な投資には役立たない可能性が高いです
※バリュー投資の発想から「割高な時期に株を売り、割安な時期に株を買う」という判断に基づいています
※単なる個人の感想です。未来は誰にも予知できません。投資は自己判断、自己責任で
ITバブル、サブプライムバブル、現在のデータ比較
※出所・世界のバフェット指標:GLOBAL NOTE、World Federation of Exchanges・OECD景気先行指数:OECD Data・シラーPER:Shiller PE Ratio
米国バフェット指標は1999.12月と並ぶ高い値です。
あとがき
先週の記事で、9月に気になることとして
①FRBの資産縮小、ECBの緩和政策の行方
②米国債務上限問題等、米国の政権運営問題・政治リスク
③北朝鮮がらみ
を挙げていました。
今のところ③が存在感を示しています。
①の「ECBの緩和政策」については、10月に判断持ち越しのようです。
②の米国債務上限問題に関しては、ひとまず安心という報道があります。
その一例↓
一方、広瀬隆雄氏はツイッターで以下のように述べておられます。
税制改革法案の見地からは、今日、トランプと民主党が債務上限引き上げ期限を三か月延長したことは悪いニュースです。なぜなら12月に再び債務上限引き上げの審議をする必要が発生し、税制改革が来年にずれ込むから。
※引用元:広瀬隆雄 (@hirosetakao) | Twitterの2017.9.6のツイート
税制改革法案の成立する可能性が下がる、または成立時期が後ずれすることは、法人税減税の実現が遠のくことであり、米国株式市場にとっておそらくネガティブなことです。
また、今回の合意において、共和党下院トップのライアン議長が批判していた「野党民主党案」にトランプ氏が合意してしまったことで、今後、トランプ氏と共和党指導部との確執がさらに深まり、この確執がトランプ政権の議会・政権運営の障害となるリスクを高めるとの懸念もある様子。
今のところ、北朝鮮もあり、「債務上限問題先送り⇒リスクオン」の流れにはなっていないようですが、今週はどうなるでしょうか。
米国市場に関する関連記事です。
「トランプリスク」と「米国リート」の記事です。