長期投資に適する国は事前に分かるものなのか?
そんなことは考えない方が身のためか?
「長期投資に適しそうな国の選定作業」シリーズの10回目はドイツと並ぶEUの中心、フランスです。
フランスのメモ
全世界の株式を対象とした株価指数「MSCI ACWI」(浮動株調整後)では、フランスは約3.37%程度の配分になるようです。
この指数の国別シェアでは第5位にランクインしています。
※データ出所:iシェアーズ MSCI ACWI ETF 2017.10.9時点
また、ドル建ての名目GDPランキング(2016年。IMFデータ)では、米国、中国、日本、ドイツ、イギリスに次いで世界第6位の経済大国です。
長期投資に適するのは、長期的な経済成長率が高い国ではないか?
一般にある国の「名目経済成長率」とその国の「時価総額(市場規模)の増加率」には長期的には正の相関があるとされます。
そして、「時価総額の増加率」と「株式インデックスの上昇率」にも正の相関があります。
したがって、
長期的に経済成長する国の株式インデックスは長期的に上昇しやすい
つまり、
長期投資に適するのは、長期的な経済成長率が高い国ではないか?
という仮説が成り立ちます。
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長期的な経済成長が期待できる国を予測することは可能なのか?
上記の仮説が正しくて、投資する前に長期的な経済成長を成し遂げる国を予測することができれば、その国の株式インデックスを長期保有することで、長期投資の収益率を大きくできそうな気がします。
では、長期的な経済成長が期待できる国を予測することは可能なのか?
おそらく確実に予測することは不可能だと思われます。
今、高い成長率を維持していても、今後何らかの理由でガクッと落ちるかもしれない、その後も長期的に低迷するかもしれない、逆に今、成長率が低くても、何らかの理由で成長率が上昇しないとはいえません。
内戦や政治の混乱、大地震、自然災害、感染症の大流行など、全く予期せぬアクシデントが起きれば、経済成長どころの話ではなくなります。
株価予測と同様、未来のことは断言できないと思われます。
ただ、以下のような手順を踏むことによって予測の精度を少し向上させることができる、かもしれません。
※あくまで「予測が当たる確率が上がるかもしれない」程度の話です
①できれば人口が増える国や地域の株式インデックスを選択する
実質経済成長率に関しては、
実質経済成長率
=人口増加率+一人当たり経済成長率
という式が成り立ち、二つの要素に分けて考えることができるようです。
つまり、一年間で人口が1%増えれば、一人当たり経済成長率が0%でも、実質経済成長率は1%になります。
逆に、人口が1%減れば、一人当たり経済成長率が1%でも、実質0成長になってしまいます。
この式を見れば、長期的な人口の増減が一国の経済規模に大きな影響を与えることは明白です。
そして、「人口予測」は数ある経済指標の中で、比較的、的中率が高い指標とされます。
※「予測」という言葉を使っていい経済予測は、人口くらいだ(他の指標はなかなか予測が難しい)と主張する人もいます
「現在の人口、将来の出生率、将来の生存率、将来の国際人口移動率」などのデータがあれば、ある程度精度の高い予測ができるようです。
したがって、比較的予測が当たりやすい人口増加率を頼りに「長期的な経済成長が期待できる国を予測する」こと、つまり
できれば人口が増える国や地域の株式インデックスを選択する
のは理屈では正しいことになります。
※単に人口増加率が高ければいいわけでもなく、一人当たり経済成長率とのバランスが大切だと思われます
②一人当たり経済成長率は、近年の長期データを用いて推測するのもアリか?
次に、一人当たり経済成長率について考えてみます。
こちらは、人口増加率より予測が難しく振れ幅も大きな要素です。
何か手はあるのか?
経験的な私見に過ぎませんが、
実質経済成長率
=人口増加率+一人当たり経済成長率
なので、
一人当たり経済成長率
=実質経済成長率ー人口増加率
になります。
したがって、例えば、
過去10年の一人当たり経済成長率の平均
=「過去10年の実質経済成長率の平均」ー「過去10年の人口増加率の平均」
になります。
10年を20年にしても同様です。
このように、単年度ではなく、一人当たり経済成長率の「長期平均」を参考にすることで、ある程度将来予測はできるかもしれません。
仮に、2005~2015年の一人当たり経済成長率の平均=1.0%であれば、2015~2025年の平均値も「1.0%」から極端に大きくぶれないのではないか、という推測です。
一年ごとの変動は大きいですが、長期でならすと意外とぶれは小さいようなのです。
フランスの実質経済成長率、人口増加率、一人当たり経済成長率
ここからフランスの実質経済成長率、人口増加率、一人当たり経済成長率について紹介します。
長期的な俯瞰
まず長めの期間で俯瞰してみます。
※出所:世界経済のネタ帳のデータより管理者作成
上記の表は、フランスの実質経済成長率、人口増加率、一人当たり経済成長率を
「1980~2015年」の35年間
「1990~2015年」の25年間
の年率平均で示したものです。
人口は微増、「一人当たり経済成長率」は「1%~1%台前半」が長期平均。
この数値だけみると、今後の高い成長率はあまり期待できなさそうです。
年代ごとの年率平均と所感
次に、1980~2015年の35年間を10、10、10、5年間で区切って年率平均を算出し、さらに「長期投資」を想定し、2015~2035年の人口増加率の推計を加えると、下記表になります。
※出所:世界経済のネタ帳、国連人口推計2015年版(中位推計)のデータより管理者作成
人口増加率は2015-2035年の予測では「0.3%」。
一人当たり経済成長率は2000年以降は1%に届きません。
未来のことはわかりませんが、これまでの長期平均を重視すると、2015-2035年の実質経済成長率は年率平均で「0.5~1.0%」程度にとどまるかもしれません。
先進国で比較すると、「1%台後半以上」の成長率が期待できそうなアメリカ、オーストラリア、などの方が魅力的です。
ドイツと同様、フランスへの長期投資はあまりやる気がでない、のがわたしの正直な感想。
単なる個人的な好みですが、
フランスは長期投資にあまり適さない国かもしれない
と推測します。
※わたしの推測が当たる保証もありません。数字を眺めて行った一つの判断に過ぎません。投資は自己判断、自己責任でお願い致します
参考データ
※出所: GLOBAL NOTE、WFEのデータより管理者作成
これまで記事にした全世界と国のドル建て「名目GDP」と「時価総額」の変動を、データがそろいやすい2003~2016年の期間でまとめた表です。
先進国で比較すると、フランスは普通な感じ、アメリカ、豪州がこの期間はいい感じ。
あとがき
フランスの2014年の合計特殊出生率は「1.99」です。
非嫡出子比率は50%を超えているようですが、先進国の中では高い値です。
今後、日本のような急速な人口減社会にはなりにくく、人口は微増するとの予測。
私見ですが、一国のあり様、国民の姿を長期的に根本的に変えてしまうのは、目先の増税、小手先のばらまき政策ウンヌンではなく、消滅可能性都市を増産している人口問題、日本なら少子高齢化、人口減少問題ではないかとわたしは思います。
地方に住んでいるとそれは強く感じます。
子供の母校は廃校にならないだろうか、子供が親になる頃に、子供のふるさとは街として機能しているだろうか・・・そんなことを考えざるを得ない現状。
1989年のバブルの頃にはすでに日本の出生率は「1.57」まで低下していました。
こんな状態が続けば将来、少子高齢化、人口減による社会構造の激変は不可避、ある意味当時から「国難」だったと思われますが、結局今の今まであまり有効な対処ができていない現状。
今後どうするのか、あきらめるのか抜本的対策を打つのか、あきらめるならそれはそれで長期的にどういう方向性を目指すのか、そういう議論にもならなさそうな現状。
この手の長期的視点が不可欠な課題への対応に関しては、どうも日本は後手後手に回っている感じはします。
※その後も日本の出生率は低下を続け、2005年の「1.26」で一応底打ち。2014年で「1.42」。第3次ベビーブームはついにやってこなかった
フランスは1970年代には人口問題に直面し、先々やばいと考え、対策がとられ、1993~1994年頃をボトムに現在の出生率は「2.00」前後で推移。
どこの国にも様々な問題があるでしょうが、この点に関しては国民なのか政府なのか、一部のエリートなのか、誰が主導したのか知りませんが、先見の明があったといえそうです。
投資に関してはあまり魅力を感じませんが、低成長でも現時点で、日本よりは持続可能性が高そうな社会を築けていそうな点で、フランスには少し魅力を感じます。
関連記事です。先進国グループの日本、ドイツなども記事にしています