ドルの実質実効為替レートを見てみます。
実質実効為替レートを確認するメリット
名目レートだけでなく「インフレ変動」や「貿易額」で調整を施した為替レート(=実質実効為替レート)も知っておくことで、現在の為替レートの水準を知る手掛かりになる、かも
実質実効為替レートとは
2018.2.20現在「1ドル=107円程度」のレートは「名目レート」です。
実質実効為替レートの「実質」は
「実質」→「インフレ変動(物価変動)で調整した」
の意味です。
また、実質実効為替レートの
「実効」→「貿易額などに応じて加重平均して算出した」
の意味です。
一言でいうと、実質実効為替レートは単純な名目レートではなく、
各国のインフレ変動や貿易額に応じた調整を施した為替レート
のことで、一般的な名目レートでは把握しにくい
通貨の「実力」を推し量る指標
とする人もいます。
※詳しくは
●コトバンク:実質実効為替レート(ジッシツジッコウカワセレート)とは
●金融情報サイト:実効為替レート
●マネー研究所:実質実効レートで「円の真の実力」を知る
などを参照ください。
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実質実効為替レートの使い方の一例
一般的にはレートが高い方が通貨高、低い方が通貨安を意味します。
全くの個人的な用い方で正しいかどうかはわかりませんが、わたしは一つの目安として、長期的な
「実質実効為替レート平均値」と「現在値」のズレ
を確認し、通貨の割安割高の目安として用いています。
●長期的な平均値より高い⇒通貨高?
●長期的な平均値の同じくらい⇒ふつう?
●長期的な平均値より低い⇒通貨安?
※適切な使い方かどうかは知りません
ドルの実質実効為替レートの推移
※出所:<BIS>Effective exchange rate indices( Monthly data: Narrow indices)のデータより管理者作成 ※グラフ期間:1973.1月~2018.1月
1973年以降45年間の推移です。
この期間の
●長期平均:109.9<オレンジのライン>
●中央値:107.2
です。
概ね「110程度」を中心とした「100~120」の範囲にあることが多いですが、逸脱している時期もあります。
●赤枠の時期⇒ドル高の時期?
●青枠の時期⇒ドル安の時期?
かもしれません。
※出所:<BIS>Effective exchange rate indices( Monthly data: Narrow indices)のデータより管理者作成 ※グラフ期間:1973.1月~2018.1月
このグラフだけ見ると、最近のドル安傾向は、やや行き過ぎたドル高が、平均値に向かって平均回帰しつつあるようにも、みえなくもないです。
一本調子には行かないと思いますが。
2013年以降のドル高の原因、らしきもの
単なる仮説ですが、実質実効為替レート上確認される2013年以降のドル高の一因は
★2013年以降の日銀の大規模な量的緩和<円安要因、ドル高要因>
※出所:Central Bank Assets for Euro Area (11-19 Countries) | FRED | St. Louis Fedのグラフより管理者作成
<2014年夏以降、横ばいだったFRB資産推移>
※出所:All Federal Reserve Banks: Total Assets | FRED | St. Louis Fedのグラフより管理者作成
端的にいえば、
●日銀とECBの大規模緩和
●2014年夏以降、横ばいだったFRB資産
その3者のスタンスの差が相対的なドル高、円安、ユーロ安を生み、現在それが修正されつつあるのかもしれません。
ドルの実質実効為替レートの現在
※出所:<BIS>Effective exchange rate indices( Monthly data: Narrow indices)のデータより管理者作成 ※グラフ期間:1973.1月~2018.1月
2018.1月のドルの実質実効為替レートは「117.46」でした。
●長期平均:109.9<オレンジのライン>
●中央値:107.2
と比べると高いところにあり、
少しドル高
なのかもしれません。
おわりに
基本的に長期的な為替レートの決定要因は、
比較する通貨国の長期的なインフレ率の差ではないか?
よって
インフレ変動も加味した実質実効為替レートも長い目でみるとそれなりに役立つ?
と思っていますが、一個人の見解です。
為替レートは政治の影響も強そうですし、あくまで一つの目安として、ご参考までに。
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・主要通貨の実質実効為替レートランキング。
・中央銀行の動向に関する記事です。
・ビットコインとカネ余りと中央銀行。