米国市場を
「米国株式の割安割高を判断する目安」
になると思われる指標などで概観してみます。
ごく簡単な米国市場の概観
<先週のS&P500>
※出所:米S&P 500インデックス(SPX - Investing.com
2.23は「2747」。2.16が「2732」だったので1週間で約0.5%上昇。
2018年1月末の「2824」は少しまだ遠いです。
<先週の米国10年国債利回り>
2.23は「2.87%」。
先週は「2.95%」まで上昇するシーンもありましたが、週末に大きめの下落。
2.16「2.87%」、昨年末は「2.41%」。
定点観測
以下の5つで定点観測してみます。
★恐怖指数<米国市場。S&P500の変動性>
★ジャンク債スプレッド<米国市場。クレジットスプレッドの一つ>
★S&P500のPBR<米国の代表的な株価指数のPBR>
★米国バフェット指標 <米国の時価総額÷米国の名目GDP>
★マージンデット指数<マージンデット÷米国名目GDP×100>
恐怖指数
恐怖指数(VIX指数)とは
①S&P500を対象とするオプション取引のボラティリティを元に算出される指数
②数値が高いほど投資家が相場の先行きに不透明感を持っているとされる
③1990年2月~2018年1月の長期平均「19.4」
④わたしは主に株式が割安な時期を示唆する指標と考えています(「30」以上で割安かも?)
⑤「10」程度で安定している時期は、投資家は安心・楽観・高揚していると考えられる
推移グラフと現在の状況判断
<1990年からの長期チャート>
※出所:S&P 500 VIXインデックスのグラフより管理者作成 ※期間:1990年~
ここ1ヶ月のチャート。
2018.2.23は「16.49」でした。
2018.2.9は「29.06」、2.16は「19.46」だったので、順調に落ち着いてきています。
長期平均(「19.4」)を明確に下回ってきました。
市場心理はやや安心モードに偏っており、割安な状況ではなさそうです。
<恐怖指数について詳しくはコチラ↓>
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ジャンク債スプレッド
ジャンク債スプレッドとは
①ジャンク債スプレッド
=米国のハイ・イールド債の利回り-米国債(10年物)の利回り
②ジャンク債スプレッドが大きい⇒株式は割安傾向
③ジャンク債スプレッドが小さい⇒株式は割高傾向
④★平均値(幾何平均):3.1
★中央値:3.0
<期間:1996.12月~2017.12月の月末>
推移グラフと現在の状況判断
※出所:◎St. Louis Fed◎米国 10年 債券利回りのデータより管理者作成 ※期間:1996.12月末~2017.12月末
2018.2.22時点のジャンク債スプレッドは「1.9」で、2.15の「2.0」よりやや縮小。
2月初めの急落で少しスプレッドは拡大しましたが、先週はわずかに縮まりました。
水準としては割高圏の目安「2.0」以下で、長期平均の「3.1」よりはかなり低い値です。
単なる近年の経験則ですが、この指標からは株式は
「割高傾向?」
と推測。
※2018.2.22時点のジャンク債利回り「4.86%」、米国債(10年物)の利回り「2.92%」
<ジャンク債スプレッドについて詳しくはコチラ↓>
S&P500のPBR
S&P500のPBRとは
①PBRは株式の割安割高を判断する基本的な指標の一つです。1株当たりの純資産に対し、株価が何倍まで買われているかを表したのがPBR(株価純資産倍率)です
②PBRが小さいほど割安、大きいほど割高と判断します
③S&P500のPBRは米国市場の割安割高を判断する一つの目安であり、わたしは主に割安な時期を知る目安として参考にしています
推移グラフと現在の状況判断
※出所:S&P 500 Price to Book Value
1999年末~直近のS&P500のPBRの推移です。
2018.2.23時点の推計値は「3.44」、2.16の「3.42」より微増。
ITバブルの頃にははるかに及びませんが、サブプライムバブルの頃(2.91)よりは大きな値です。
長期平均の「2.76」は上回っており、現在は少なくとも
割安な水準ではなさそう
です。
※出所:S&P 500 Price to Book Value
<S&P500のPBRについて詳しくはコチラ↓>
米国バフェット指標
米国バフェット指標とは
①米国バフェット指標=米国の時価総額÷米国の名目GDP
②米国株式の割安割高を判断する目安
③1995~2017年の各年末のデータから、
★平均値:1.25
★中央値:1.32
④近年の経験則の域を出ませんが
★1.05以下は株式は割安圏?
★1.40以上は株式は割高圏? と推測
推移グラフと現在の状況判断
米国の時価総額は2018.1月末で約「33.6兆ドル」(浮動株調整行わず)。
全世界の37%程度です。
2018.1月末の米国バフェット指標は「1.66」であり、過去最高です。
現在のS&P500は2018.1月末を2.7%ほど下回っており、バフェット指標は依然、割高圏の目安「1.4」を上回っていると予測され、現在の米国株式は割高圏?と推測。
※2018年米国名目GDP:20.20兆ドル(IMF推計)。2017年は19.36兆ドル
米国バフェット指標について詳しくはコチラ↓
マージンデット指数
マージンデット指数とは
①「マージンデット÷米国名目GDP×100」で算出する指数
②米国株式の割安割高を判断するためにわたしが個人的に利用している指標
③1995.1月~2017.11月の各月末のデータから、
★平均値:1.74★中央値:1.70④近年の経験則の域を出ませんが
●「マージンデット指数 1.3以下」⇒株式は割安圏?
●「マージンデット指数 2.4以上」⇒株式は割高圏?
※マージンデットは一般的な指標ですが、「マージンデット指数」は一般的なものではありません
推移グラフと現在の状況判断
※出所:ニューヨーク証券取引所、世界経済のネタ帳のデータより管理者作成 ※期間1995.1月~2017.11月
201712月末のデータはまだ確認できません。
2017.11月末のマージンデットは5809億ドル、10月より195億ドル程度増加。
マージンデット指数は「3.00」であり、過去最高の値です。
この指標の過去のピークは
・ITバブル:2.71(2000年)
・サブプライムバブル:2.63(2007年)
・2015年:2.80
でした。
今回はすでに「3.00」で記録更新中。
割高圏の目安「2.4」を上回っており、株式は割高圏?と推測。
※約3ヶ月近くのタイムラグあり
※出所:ニューヨーク証券取引所、世界経済のネタ帳のデータより管理者作成
マージンデット指数について詳しくはコチラ↓
現時点での米国市場の割高割安、5つの指標からの推測、まとめ
あくまで経験的な判断ですが、現時点で各指標が示唆する株式の割安、割高の判断をまとめます。
★恐怖指数⇒割安ではなさそう
★ジャンク債スプレッド⇒割高傾向?
★S&P500のPBR⇒割安ではなさそう
★米国バフェット指標 ⇒割高圏?
★マージンデット指数⇒割高圏?
総合的に判断すると、わたしは米国株式は「割高圏?」と推測します。
現時点での米国株の長期投資のタイミングとしては
①リスク資産の資産配分が大きくなりすぎていれば、所定の配分に戻す
②資産配分において、株式の配分比率を減らす
③資産配分において、現金の配分比率を増やす
④長期投資を一時やめる(投資をやめる機会を探している場合)
のに適す時期だと考えています。単なる経験則ですが。
※概ね10年以上を想定した長期投資に関する一つの判断です。短期、中期的な投資には役立たない可能性が高いです
※基本的にできるだけ「割高な時期に株を売り、割安な時期に株を買う」という判断に基づいています
※単なる個人の感想です。未来は誰にも予知できません。投資は自己判断、自己責任で
ITバブル、サブプライムバブル、現在のデータ比較
※表のデータ出所 ・世界のバフェット指標:GLOBAL NOTE、World Federation of Exchanges・OECD景気先行指数:OECD Data ・シラーPER:Shiller PE Ratio ・失業率:US Unemployment Rate ・実質経済成長率:BEA National Economic Accounts ・長短金利差:米国債・金利 - Bloomberg
先週と同様、
・恐怖指数の落ち着き
・長短金利差の縮小
が目立った動き。
あとがき
現在のS&P500は1月末比「-2.7%」。
ドル/円は1月末比で「2.2%」の円高。
円建てだとS&P500はざっと5%程度の評価損ですが、もはや大した下落ではありません。
荒々しい環境の中で船出となったパウエルFRB議長、今後どういうかじ取りとなるでしょうか。
ECBがらみでは少し気になるニュース。
上記記事より引用
ワイトマン氏はECBを代表するタカ派で、経済が正常に戻った以上、異例の緩和はできるだけ早く終えるべきだと主張してきた。物価上昇が鈍いのだから緩和解除は急ぐべきではないというドラギ総裁と何度もぶつかり合ってきた。
少し先のことですが、来年2019年秋に任期終了となるECBのドラギ総裁の後任は現時点でワイトマン氏が最有力とのこと。
ワイトマン氏はドイツ連銀総裁で緩和には消極的な様子。
FRBのイエレン元議長、ECBのドラギ総裁、日銀の黒田総裁
という、株式市場に総じて優しかった今までの中央銀行のスタンスが、崩れていく可能性もあるかもしれません。
関連記事です。
2018年、FRBは本格的に資産縮小に取りかかる模様