2017年後半は無双状態だった世界景気に小さなほころび。
この小さなほころびが一時的なものか、大きな変化の始まりか、現段階ではわかりませんが、今は株価が安くはない時期と思われるので、景気動向には敏感になっておいても悪くはないとわたしは思います。
もしも、FRB、ECBが金融引き締め傾向にあるなかで、世界的に景気後退の兆候が鮮明になれば、株価は大きく値下がりする、可能性もあるからです。
世界の景気をCLIとPMIの観点から観察してみます。
①CLI
※出所:- Composite leading indicator (CLI) - OECD Dataより管理者作成
景気指標の一つ、Composite leading indicator (CLI。OECD景気先行指数)の2017.1月~2018.1月の推移です。
「100」が「ふつうの景気水準」、数字が大きいほど好況、小さいほど不況を示唆します。
上記はOECD全体のCLIであり、世界の名目GDPの6割以上を占める国を網羅した景気指数です。
データ更新がゆっくりなのが欠点ですが、先日更新されたデータでは2018年11月が直近のピークとなっています。
大きな落ち込みではありませんが、昨年末以来、世界景気はわずかながら悪化している可能性が示唆されます。
※CLIについて詳しくコチラ↓
●トレンドは回復~少し停滞? ~OECD全体の景気先行指数 2017年11月データ~ - ユキマツの「長期投資のタイミング」
②グローバル製造業PMI
「購買担当者指数」は「PMI」とも呼ばれる景気指標の一つです。
世界の多くの国で採用されており、毎月更新される即時性の高い便利な指標です。
50が分岐点であり、
●50より大きい⇒景気拡大
●50より小さい⇒景気後退
と判断します。
製造業PMIは「製造業購買担当者指数」のことで、製造業全般の景気を示唆します。
グローバル製造業PMIは「全世界の製造業の景気状況」を示唆する指数です。
グローバル製造業PMIの推移を見てみます。
※グローバル製造業PMIについて、詳しくはコチラ(英語サイト)
https://www.markiteconomics.com/Survey/PressRelease.mvc/b91a4793be6444e2b453e67fb805f0e7
※出所:http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2017/fuji20180306mf.pdfより管理者作成
くどいですが、50が分岐点であり、
●50より大きい⇒景気拡大
●50より小さい⇒景気後退
と判断します。
確認しにくいですが、2017.12月をピークに2018.1~2月は小幅に下落しているようです。
世界的に製造業の景気は小幅ながら、数ヶ月減速しているとはいえそうです。
※PMIについて詳しくコチラ↓
●中日独の景気動向 2017年11月データ - ユキマツの「長期投資のタイミング」
※いつもの余談ですが、2000年のITバブル崩壊後、2007年のサブプライムバブル崩壊後にグローバル製造業PMIは急落しており、世界的な製造業の景況感が悪い時期(PMIが50より小さい時期)に株価が割安だったという経験則は得られます。
この指標は【景気の悪い時期に株を買うのがベター?】というわたしなりの仮説の根拠の一つです
③主要国製造業PMI
最後に主要4ヶ国(米中日独)の国別の製造業PMIを確認します。
期間は2016.1月~2018.2月です。
※出所:「https://jp.investing.com/search?q=製造業購買担当者指数 PMI」のデータより管理者作成
2016.9月以降、ずっとこの4ヶ国の製造業PMIは節目の「50」を上回っており、世界的な景気のよさがうかがえます。
直近のピークは
●中国:2017.9月
●ドイツ:2017.12月
●日米:2018.1月
です。
ドイツは2017.12月頃、絶好調であったこと、中国は節目の「50」を下回りかねない水準にズルズルと落ちてきていることが分かります。
おわりに
以上、
【世界景気が2017年11月~2018.1月頃に直近のピークを迎えていたかもしれない】
という仮説の根拠を並べてみました。
だから2018.2月から相場がおかしくなった・・・というのは都合のいい完全な後付けの解釈ですが、大局的には株価は景気と連動性が高いと思われるので、全く的外れでもない可能性はあります。
ただ、株価と同様、現状と過去の推移の確認はできても未来の景気動向は全く不明です。
また景気の指標はたくさんあり、おそらく景気がよいことを示唆する指標もあると思います。
さらに仮にトレンドが少し下降気味だったとしても、グローバル製造業PMIの景気水準自体は高水準です。
一時的に減速し、またすぐ加速することもあるかもしれません。
とりあえず「小さなほころび」程度ではなく、明確な景気減速トレンドが確認できるかどうか、しばらくは景気の観察が大事な時期と個人的には考えています。
そして、景気さえよければ、中央銀行の少々の引き締めをものともしない相場も考えられますが、明確な景気トレンドの転換が確認される中での引き締めは、投資家にとって要注意かと思われます。