現在の為替レートの水準を推し量る材料になり得る「ドルの実質実効為替レート」を見てみます。
実質実効為替レートを確認するメリット
名目レートだけでなく「インフレ変動」や「貿易額」で調整を施した為替レート(=実質実効為替レート)も知っておくことで、現在の為替レートの水準を知る手掛かりになる、かも
実質実効為替レートとは
2018.5.29現在「1ドル=109円程度」のレートは「名目レート」です。
実質実効為替レートの「実質」は
「実質」→「インフレ変動(物価変動)で調整した」
の意味です。
また、実質実効為替レートの
「実効」→「貿易額などに応じて加重平均して算出した」
の意味です。
一言でいうと、実質実効為替レートは単純な名目レートではなく、
各国のインフレ変動や貿易額に応じた調整を施した為替レート
のことで、一般的な名目レートでは把握しにくい
通貨の「実力」を推し量る指標
とする人もいます。
※詳しくは
●コトバンク:実質実効為替レート(ジッシツジッコウカワセレート)とは
●金融情報サイト:実効為替レート
●マネー研究所:実質実効レートで「円の真の実力」を知る
などを参照ください。
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実質実効為替レートの使い方の一例
一般的にはレートが高い方が通貨高、低い方が通貨安を意味します。
個人的な用い方で正しいかどうかはわかりませんが、わたしは一つの目安として、長期的な
「実質実効為替レート平均値」と「現在値」のズレ
を確認し、通貨の割安割高の目安として用いています。
●長期的な平均値より高い⇒通貨高?
●長期的な平均値の同じくらい⇒ふつう?
●長期的な平均値より低い⇒通貨安?
※適切な使い方かどうかは知りません
ドルの実質実効為替レートの推移
※出所:<BIS>Effective exchange rate indices( Monthly data: Narrow indices)のデータより管理者作成 ※グラフ期間:1973.1月~2018.4月
1973年以降45年間の推移です。
この期間の
●長期平均:109.9<オレンジのライン>
●中央値:107.2
です。
概ね「110程度」を中心とした「100~120」の範囲にあることが多いですが、逸脱している時期もあります。
●赤枠の時期⇒ドル高の時期?
●青枠の時期⇒ドル安の時期?
かもしれません。
※出所:<BIS>Effective exchange rate indices( Monthly data: Narrow indices)のデータより管理者作成 ※グラフ期間:1973.1月~2018.4月
このグラフだけ見ると、最近のドル安傾向は、やや行き過ぎたドル高が、平均値に向かって平均回帰しつつあるようにも、みえなくもないです。
ドルと円の実質実効為替レートを重ねてみてみます。
※出所:<BIS>Effective exchange rate indices( Monthly data: Narrow indices)のデータより管理者作成 ※グラフ期間:1973.1月~2018.4月
この指標では2015年以降「ドル高」「円安」傾向でしたが、長期的には徐々に平均回帰し、
ドル安、円高方向
に為替が動きそうな雰囲気はあります。
一本調子には行かないと思いますが。
ドルの実質実効為替レートの現在
※出所:<BIS>Effective exchange rate indices( Monthly data: Narrow indices)のデータより管理者作成 ※グラフ期間:1973.1月~2018.4月
2018.4月のドルの実質実効為替レートは「116.86」でした。
●長期平均:109.9<オレンジのライン>
●中央値:107.2
と比べると高いところにあり、どちらかというと
ドル高
なのかもしれません。
おわりに
長期国債利回りが大きく変動。
先日3.1%を一時超えていた米国長期債利回りは2.8%台へ。
質への逃避?
とりあえず米国債にお金が逃げ込んでいる様子。
2年債との長短金利差は0.4%台前半へ。
ひと月前まで2%以下だったイタリアの長期国債利回りは3%を超えています。
イタリア国債価格は急激な下落。
イタリアは世界9位の経済大国(2017年、ドル建て名目GDPは全世界の2.4%)。
また、破綻する破綻するといわれ続けて破綻しないドイツ銀行の株価も大きく下落。
※出所:DB | ドイツ銀行 ニューヨーク 株式-Investing.com
一応、警戒してもいいニュース。
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