「恥は一時、大志は一生」という言葉がありますが
「上げはじわじわ、下げは一瞬」
という印象も受ける10月の下げ。
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2月とは何が異なるか
今年の2~3月頃にもS&P500で10%ほどの下げ相場が ありました。
10月との相違点をわたしなりに考えてみました。
★米国の金利、量的引き締め
2018年10月時点ではFRBの金融引き締めが着々と実行されつつあります。
利上げ+量的引き締め
です。
FFレートの上昇とFRB資産縮小は確実に進行しています。
※2月頃は量的引き締めはそれほど目立たない水準
<FFレート:ここ1年>
※出所:Effective Federal Funds Rate | FRED | St. Louis Fed
<FRB資産:ここ1年>
※出所:All Federal Reserve Banks: Total Assets | FRED | St. Louis Fed
今の米10年債利回りは「3.1%」程度。
2月頃のピークは「2.8~3.0%」程度。
徐々に高くなってきています。
<米10年債利回り:ここ1年>
※出所:https://jp.investing.com/rates-bonds/u.s.-10-year-bond-yield
金利の影響は軽視できないと思われます。
また量的引き締めの進行による緩和マネーの吸収はボディブローの効いてくるかもしれません。
今後FRBの量的引き締めのペースはさらに加速する見込み。
2018年以降、中銀の市場へのサポート力は顕著に低下。
※参照記事:想定以上のペースダウン
★世界景気
2月と何が異なるか?
一番の相違は
●世界景気の減速トレンドが目立ってきた
ことかもしれません。
本ブログでは毎月世界景気に関する記事を書いています。
世界景気に関して2018年3月時点で
「小さなほころび」
4月時点で
「トレンドがパッとしません」
5月時点で
「相変わらず微妙」
6月時点で
「やや減速気味」
7~10月にはそれぞれ
「6~9ヶ月続く世界景気の減速トレンド」
という記事を書いてきました。
日本の景気だけを考慮した主張や米国の景気だけを考慮した主張は多いです。
米国景気は好調だから米国市場は大丈夫
的な。
わたしは米国上場企業は世界展開している企業も多く、
・仮に米国景気が良好で
・米国上場企業の米国国内の収益は良好でも
・海外事業の収益が悪化すれば
それは当然米国市場にとってネガティブ要因だと思います。
米国は巨大ですが世界経済の一部に過ぎません。
世界展開している企業の収益は中長期的には世界景気に大きな影響を受けるはず。
まず世界全体の景気をみてから個別の国の景気を論じてもいいように感じます。
話が脱線しましたが、2月と10月の違いは
世界景気の減速トレンドが認識されやすくなってきたこと
かもしれません。
CLIやPMIが指標として有効と仮定して、世界景気が9ヶ月間も減速トレンドなら、世界的に株価にも影響が出てきてもおかしくはないのかも。
「世界経済が拡大する」なら「世界全体の株式インデックスへの長期投資は正しい」
とする仮説はよく見かけますが、
「世界景気が減速トレンドに入った」
と判断できれば、
「ポートフォリオをリアロケーションしてリスク資産の配分比率を段階的に下げておく」
(世界景気が拡大トレンドに入った⇒リスク資産の配分比率を段階的に上げておく)
というアイデア、わたしにはごくしっくりきます。
ただ、そういう主張はどういうわけかあまり見かけませんね。
●世界景気も周期的に具合が悪くなっている(1997年以降で6回)
●そういう時期、総じて世界の株式市場規模は大きく縮小するかヨコヨコだった
(世界の市場規模が縮小する時期、概ね世界的に株価は低迷)
のは、過去の事実なんですが、謎。
無論、今回は違う、可能性もありますが。
※出所:https://www.world-exchanges.org/、Leading indicators - Composite leading indicator (CLI) - OECD Dataより作成
世界景気の減速トレンドをともなう下げ相場
次に「世界の時価総額」(世界全体の株式市場規模)からみた2000年以降の下げ相場の
★持続期間
★下げ幅
の概略をつかんでみます。
※出所:https://www.world-exchanges.org/より作成
近年の世界景気の減速トレンドをともなう下げ相場のまとめです。
下げ相場の最長記録は30ヶ月。
最短記録は9ヶ月。
市場規模の最大縮小率は54.1%。
市場規模の最小縮小率は19.2%。
※2018年を除く
世界の時価総額の視点でみた目安に過ぎませんが、大まかな目途がついて便利なデータかもしれません。
今後来るかわかりませんが、わたしにはITバブル崩壊期のような長期の下落相場(2年半)をロング一本でしのぐ気力は、もはやなさそう。
※出所:https://www.world-exchanges.org/より作成
おわりに
個人的には相場の大局への影響が大きい
世界景気
や
中央銀行の金融政策
の確認は投資を続ける上でとても大事と感じます。
ただ、観察していても将来が読めるわけでは決してありません。
未来を知る水晶玉ではなく、あくまで
現状はどうか?
を探るための便利な指標だと思います。
現状は
★世界景気の減速トレンドが9ヶ月以上続いている
★新興国だけでなく先進国の株式市場も怪しくなってきた
★中銀(特にFRB)の金融政策は引き続き引き締め的?
そんな感じでしょうか。
また、いわずもがなですが、今後も世界景気の減速トレンドが続くかは不明です。
突然世界の中銀が緩和的になれば、市場環境は一変するでしょう。
騒ぐほどの下落相場でなかった・・・
そうなるかもしれませんが、そうはならないかもしれない。
個人的には
「世界の景気減速を背景に2019年を中心にダラダラとさえない展開が続く」
というネガティブストーリーがメインシナリオですが、現時点の一つの認識、勘です。
世界景気がさえない時期は無理しないのが無難な気はしますが、先のことなど誰にも分かりません。
投資は自己判断、自己責任で。
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