先週の米国市場を
「米国株式の割安割高を判断する目安」
になると思われる指標などで概観してみます。
ごく簡単な米国市場の概観
<先週のS&P500>
※出所:米S&P 500インデックス(SPX - Investing.com
12.7は「2633」。前週比−4.6%と大幅下落。
米中会談前の上げ幅を一気に吐き出しました。
11月末は「2760」だったので、12月は現時点で−4.6%。
10月末の「2712」も下回っています。
最高値は2018年9月の「2941」で今は高値から「-10.5%」の水準。
<先週の米国10年国債利回り>
12.7は「2.86%」。
先週末は「2.99%」だったので、週間で利回りは大幅に低下。
昨年末は「2.41%」で今年は約「0.4~0.5%」高い水準。
定点観測
以下の4つで定点観測してみます。
★恐怖指数<米国市場。S&P500の変動性>
★ジャンク債スプレッド<米国市場。クレジットスプレッドの一つ>
★S&P500のPBR<米国の代表的な株価指数のPBR>
★米国バフェット指標 <米国の時価総額÷米国の名目GDP>
恐怖指数
<ここ半年>
<先週>
12.7は「23.23」。前週の「18.07」より大幅上昇。
昨日も書きましたが、わたしは12月は短期的なリスクオンと考えていて、VIXロングポジションは12/3に処分していました。
せっかくずっと持っていたのに裏目。
水準としては長期平均(「19.3」)より高く、米国の市場心理は
やや不安?
と推測。
目安の「30」以下であり、株価が割安な状況ではなさそうです。
<恐怖指数について詳しくはコチラ↓>
www.yukimatu-value.com
スポンサーリンク
ジャンク債スプレッド
ジャンク債スプレッドとは
①ジャンク債スプレッド
=米国のハイ・イールド債の利回り-米国債(10年物)の利回り
②ジャンク債スプレッドが大きい⇒株式は割安傾向
③ジャンク債スプレッドが小さい⇒株式は割高傾向
④★平均値(幾何平均):3.0
★中央値:3.0
<期間:1996.12月~2018.10月の月末>
推移グラフと現在の状況判断
※出所:◎St. Louis Fed◎米国 10年 債券利回りのデータより管理者作成 ※期間:1996.12月末~2018.6月末
12.6時点のジャンク債スプレッドは「2.9」で、前週の「2.6」より大幅拡大。
スプレッドが拡大トレンドにあります。
今までより相対的に
「ジャンク債からマネーが逃げ、米国債にマネーが集まっている」
と推測され、
「投資家の心理が冷え、リスク許容度が低くなってきている?」
のかもしれません。
※ジャンク債利回り「5.80%」、米国債(10年物)の利回り「2.89%」
長期平均「3.0」に急接近しており、水準としては
ふつう?
と推測。
<最近の推移>
※出所:◎St. Louis Fed◎米国 10年 債券利回りのデータより管理者作成 ※期間:2016.1月~2018.12月(12月は6日のデータ)
<ジャンク債スプレッドについて詳しくはコチラ↓>
S&P500のPBR
※出所:S&P 500 Price to Book Value
1999年末~直近のS&P500のPBRの推移です。
12.7時点の推計値は「3.15」。前週の「3.30」から大幅に低下。
水準としてはITバブルの頃のピーク(5.06)に及ばず、サブプライムバブルの頃のピーク(2.91)は上回る水準。
長期平均の「2.79」は大幅に上回っており、現在は少なくとも
割安な水準ではなさそう
です。
※出所:S&P 500 Price to Book Value
<S&P500のPBRについて詳しくはコチラ↓>
米国バフェット指標
米国バフェット指標とは
①米国バフェット指標=米国の時価総額÷米国の名目GDP
②米国株式の割安割高を判断する目安
③1995~2017年の各年末のデータから、
★平均値:1.25
★中央値:1.32
④近年の経験則の域を出ませんが
★1.05以下は株式は割安圏?
★1.40以上は株式は割高圏? と推測⑤米国の時価総額=NYSE+Nasdaqで計算
推移グラフと現在の状況判断
米国の時価総額は2018年10月末で約「33.4兆ドル」(前月末は「36.1兆ドル」)。
2018年10月末の米国バフェット指標は「1.64」(前月末は「1.77」)。
2017年末のバフェット指標は「1.66」だったので、今年は10ヶ月経過時点でわずかに数値が低下。
現在、割高圏の目安「1.4」を上回っていると推測され、現在の米国株式は
割高圏?
と推測。
9~10月は久々に2カ月連続で時価総額が減少。
※データ出所:https://www.world-exchanges.org/、世界経済のネタ帳のデータより作成
※2018年米国名目GDP:20.41兆ドル(IMF推計)。2017年は19.39兆ドル
米国バフェット指標について詳しくはコチラ↓
現時点での米国市場の割高割安、4つの指標からの推測、まとめ
あくまで経験的な判断ですが、現時点で各指標が示唆する株式の割安、割高の判断をまとめます。
★恐怖指数⇒割安ではなさそう
★ジャンク債スプレッド⇒ふつう?
★S&P500のPBR⇒割安ではなさそう
★米国バフェット指標 ⇒割高圏?
総合的に判断すると、わたしは米国株式は「割高圏?」と推測します。
現時点での米国株の長期投資のタイミングとしては
①リスク資産の資産配分が大きくなりすぎていれば、所定の配分に戻す
②資産配分において、株式の配分比率を減らす
③資産配分において、現金の配分比率を増やす
④長期投資を一時やめる(投資をやめる機会を探している場合)
のに適す時期だと考えています。単なる経験則ですが。
※概ね10年以上を想定した長期投資に関する一つの判断です。短期、中期的な投資には役立たない可能性が高いです
※基本的にできるだけ「割高な時期に株を売り、割安な時期に株を買う」という判断に基づいています
※単なる個人の感想です。未来は誰にも予知できません。投資は自己判断、自己責任で
ITバブル、サブプライムバブル、現在のデータ比較
※表のデータ出所 ・世界のバフェット指標:GLOBAL NOTE、https://www.world-exchanges.org/ ・OECD景気先行指数:OECD Data ・シラーPER:Shiller PE Ratio ・失業率:US Unemployment Rate ・実質経済成長率:BEA National Economic Accounts ・長短金利差:米国債・金利 - Bloomberg
・S&P500のPBR:2007年の水準に少し近づく
・S&P500のCAPEレシオ:「30」を下回り2007年の水準に近づく
・長短金利差:縮小傾向
あとがき
最近ときどきニュースで
「米中貿易摩擦の激化による世界的な景気減速が懸念され…」
という感じのフレーズをみかけますが、CLIやPMIでみると世界景気は
2017年11~12月頃
からすでにピークアウトの兆しが見られていました。
もう1年近く減速トレンドにあるといえなくもない状況です。
米中の対立は世界景気の減速懸念に拍車をかけていると思われますが、米中の対立がクローズアップされる前からの
「世界景気の減速トレンド」
を取り上げる視点がもう少しあってもいいような気がします。
わたしには景気減速の決定的な理由はわかりませんが、景気は「循環的」らしく、上り坂の後下り坂が来るのは、歴史的にはごく自然で、景気の下り坂で株価も下り坂になりやすい模様。
※出所:Leading indicators - Composite leading indicator (CLI) - OECD Dataより作成
関連記事