時代や国を問わず、説得力を持ちつづけそうな言葉を拾ってまとめていくシリーズ
「時空をこえたメッセージ」
の22回目です。
今回は95年前の出版物から。
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もし間違って高値で買ってしまったとしても、必ず取り戻せる時が来る
株投資は短期では損をすることがあっても、長期投資であれば常に株式が有利であり、もし間違って高値で買ってしまったとしても、必ず取り戻せる時が来る
※『金融の世界史』板谷敏彦、2013年、新潮社 より引用
米国ウォール街大暴落(1929年~)にさかのぼること5年、1924年に出版された『長期投資対象としての普通株』という本で主張された仮説です。
著者はエドガー・ローレンス・スミス、証券業者のアナリスト。
スミス氏は19世紀中頃からの債券と株式の収益率分析を根拠に上記のような主張を展開。
氏の主張は大暴落までの強気相場における株式投資の理論的なバックボーンになったとのこと。
ちなみに氏は自ら長期投資の運用会社を設立し大暴落に臨んだそうです。
口先だけでなく自ら勝負している点は清々しい。
※参照:『金融の世界史』板谷敏彦、2013年、新潮社
長く続く好景気がもたらすもの
ここ10年ほど米国の景気拡大が持続し、S&P500の200日移動平均を株価が1年以上持続的に下回る時期はありませんでした。
この10年は
★株価が下げれば押し目と認識して買い
★長期保有していれば
報われる相場でした。
※出所:S&P 500 (^GSPC) Stock Price, Quote, History & Newsより作成
10年は長いです。
人は環境に慣れるもの。
10年も大丈夫だったなら、安心や油断は醸成されやすい。
株投資は短期では損をすることがあっても、長期投資であれば常に株式が有利であり、もし間違って高値で買ってしまったとしても、必ず取り戻せる時が来る
そんな気分になって、好ましいデータを根拠に「長期投資」を始めたくなる時期は、例えば今のような時期?と推測されます。
※実際今から投資を始めるのが正しいかもしれません。先のことは不明
「長期投資」が続けられるかどうかはやってみないとわからない
私見ですが「長期投資」を始められても続けられるかどうか、それは誰にも分からないと思われます。
実際やってみて向き不向きもあるでしょうし、好みの問題もある。
給与や配当でのキャッシュフローがどの程度あるか、投資家のリスク許容度の問題でもあります。
そして長期投資は退屈だったり楽しいものではない時期もあります。
※出所:S&P 500 (^GSPC) Stock Price, Quote, History & Newsより作成
例えば過去2回の米国のバブル崩壊期には1年半~3年足らず、S&P500は200日移動平均を下回る時期が続きました。
実にしんどい時期だったと思われます。
一般的には苦しくなって押し目買いどころではなさそうな時期(おそらく資金も気力も続きにくい)。
たかだか1年半~3年でしょ?
「長期投資」なんだから、そのくらい大丈夫、誰でも我慢できるのでは?
という考えもあると思われますが、資産評価額が1年以上減少を続ける日々というのは、精神衛生上とてもよくない状況かと。
鉄の意志を持つ人や資産に比べてキャッシュフローが多い人、リスク資産への配分が少ない人はしのげるかもしれませんが、何割かの人は苦しくなって投げ売りしてしまい「長期投資」のはずだった投資が「長期投資」でなくなる可能性もなきにしもあらず。
何かの印象というのは大きく変化しうるもの。
大好きだったものが大嫌いになることも。
あんなに心地よかった投資とのつきあいが苦痛でしかなくなることも、投資環境次第ではありうるかと。
つきあいが嫌にならないようにする工夫
ひと付き合いでもそうだと思いますが、他者との関係性はいい時期もあればよくない時期があって普通。
大事な他者とお互いに長くそこそこいい関係性を保つにはそれなりの工夫は必要なのかも。
その工夫とは例えば
★うまくいってない時期に感情的になり過ぎないこと
★必ずうまくいかない時期が来ることを想定し、その前提で対策、準備をしておくこと
★目先の状況に過剰反応せず、またいい時期が来る可能性を楽観的に信じること
かもしれません。
30年の長期投資より3年間の投資の方が成績がよかったり
おそらく市場と投資家との関係性も似た要素があり、うまくいかない時期の想定と対策は必要かも。
株投資は短期では損をすることがあっても、長期投資であれば常に株式が有利であり、もし間違って高値で買ってしまったとしても、必ず取り戻せる時が来る
実際米国の場合、50年100年以上の超長期過去データからは上記仮説は概ね正しいと思われますが、身内に継承するのでなければ個人で今から100年間投資する予定の人はまずいないでしょう。
そして自分が投資する投資期間(例えば10年とか30年)が投資環境の「いい時期」か「よくない時期」のどちらに巡り合えるかは不明。
不幸にして投資環境の「よくない時期」が結果的に「自分が投資する投資期間」の多くを占めた場合、超長期投資のデータに比して、自分の投資パフォーマンスは大きく下がる可能性があります。
では何で投資環境を判断するのか。
またいつもの仮説ですが、長期的な投資環境を判断する指標の一つは「景気動向」ではないかと。
※TOPIXの場合、1989年12月末~2019年6月末まで約30年の長期投資より、世界的な景気拡大期を多く含む2012年5月末~2015年5月末までの3年間投資する方が成績がいい
基本的には
景気拡大期の「市場と投資家との関係性」はうまくいきやすい?
景気減速期の「市場と投資家との関係性」は悪くなりやすい?
と推測。
個人的には
もし間違って高値で買ってしまったとしても、必ず取り戻せる時が来る
というのはやや楽観に過ぎ(「必ず」が引っかかる)、投資家が想定する「自分の投資期間」と「景気トレンド」から、どの時期にどの程度リスクをとるか、それなりに慎重な検討が大事かと思ってみたり。
※単なるわたしの好みのスタンスです。機会損失リスクは大きくなります。投資は自己責任で
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