米国投資家のリスク許容度を探る一材料になると思われる指標「マージンデット」の確認。
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マージンデットとは
マージンデット(Margin Debt)は、米国の株式市場(ニューヨーク証券取引所)が公表していたデータです。
マージンデットは「証拠金債務」のことであり
アメリカの投資家が株の売買ために金融機関から借りているお金の総額
のことです。
わざわざ金利を払って借金して株式投資につぎ込む金額(マージンデット)が増えることは、投資家のリスク許容度が上昇していると解釈。
逆に、マージンデットが減少することはリスク許容度が低下していると解釈。
※わたしの知る限り、2017年11月までは<ニューヨーク証券取引所>のサイトで数値が確認できたのですが、それ以降確認できず。
2017年12月以降のデータはマージンデットと同様の
Debit Balances in Customers' Securities Margin Accounts(Margin Statistics | FINRA.orgより)の数値を代用しています。
マージンデットを知るメリット
★米国市場における投資家のリスク許容度を探る材料になり得るか
※マージンデットが増える⇒リスク許容度上昇⇒株高要因
※マージンデットが減る⇒リスク許容度低下⇒株安
マージンデット(前年同月比)の長期推移グラフ
1996年1月末~2019.3月末のマージンデット(前年同月比。%)の長期推移グラフ。
※出所:ニューヨーク証券取引所、Margin Statistics | FINRA.orgより作成
バブル期に前年同月比で大きく増加。
バブル後に急減し株価低迷期には前年割れが続く、という傾向があるようです。
最新のマージンデット(前年同月比)と株価
直近では前年比で
2017年12月:+21.4%
がピーク。
その後低下傾向にあり、2018年10月以降は10カ月連続で前年割れが続いています。
最新データ2019年7月は約6021億ドルで
前年同月比:-7.8%(前月も-7.8%)
となっています。
※出所:ニューヨーク証券取引所、Margin Statistics | FINRA.org、S&P500 インデックス(SPX) - Investing.comより作成 ※期間:2016年1月末~2019年7月末
<2016年後半から2017年>⇒マージンデットの前年比は上昇傾向
<2017年12月以降>⇒低下傾向
過去の傾向ではマージンデットの前年割れが続く時期は株価下落の時期にあたることが多かったですが、最近に関しては
・S&P500は最高値付近
・マージンデット前年比は10ヶ月間マイナスを記録
とアベコベな状況。
今後どちらに収束していくのか、興味深い状況。
参考データ:マージンデットとS&P500
<A>
※出所:https://jp.investing.com/indices/us-spx-500、ニューヨーク証券取引所、Margin Statistics | FINRA.orgより作成 ※期間:1996.1~2019.3
S&P500とマージンデット(前年同月比)を併記したグラフ。
緑の四角で囲んだ部分がマージンデットが前年割れの時期。
<B>
※出所:https://jp.investing.com/indices/us-spx-500、ニューヨーク証券取引所、Margin Statistics | FINRA.orgより作成 ※期間:1996.1~2019.3
上記の緑の四角で囲んだ部分はマージンデットが安定的に前年超えしている時期。
前年割れの時期<A>に比べると、前年超えの時期<B>のS&P500は堅調を維持していることが多いです。
大きな株価下落が2回起きているのは前年割れの時期<A>の時期。
信用サイクルの動向を探る一材料として参考になるか?
おわりに
引き続き米国株高の中、7月末のマージンデットの前年比は10ヶ月連続でマイナス。
「今回は違う」
かもしれませんが、個人的には一応防御を意識したくなるデータ。
世界景気や投資家のリスク許容度は今のところ総じて
①2018年1月末あたり
か
②2018年9月末あたり
にピークアウトしていることを示唆する指標が多い印象。
この指標は概ね①の頃がピークで②の時期に前年割れスタート、というパターン。
ちなみにまた記事にしますが、米国製造業PMI(8月速報値)は「49.9」で50割れ。
わずかに景気減速を示唆。
サービス業PMIも「50.9」と前月(53.0)より大幅低下。
PMIの数値では景気減速傾向が強くなっており、そこそこ元気だった米国景気が徐々に「欧州、日本、中国」景気サイドに近づいている感じ。
この視点からも個人的には一応防御を意識したくなる状況。
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