先週の米国市場を
「米国株式の割安割高を判断する目安」
になると思われる指標などで概観してみます。
ごく簡単な米国市場の概観
<先週のS&P500>
※出所:米S&P 500インデックス(SPX - Investing.com
4.16は「4185」。前週比「+1.4%」。
4月月間では「+5.4%」と絶好調。
最高値は2021年4月の「4191」。
<先週の米国10年国債利回り>
4.16は「1.59%」。前週の「1.66%」から低下。
先週は
★株価⇒上昇
★債券利回り⇒低下
★ドル指数⇒低下
という動きでした。
定点観測
以下の4つで定点観測してみます。
★恐怖指数<米国市場。S&P500の変動性>
★ジャンク債スプレッド<米国市場。クレジットスプレッドの一つ>
★S&P500のPBR<米国の代表的な株価指数のPBR>
★米国バフェット指標 <米国の時価総額÷米国の名目GDP>
恐怖指数
<先週>
4.16は「16.25」。前週の「16.69」より低下。
水準としては長期平均(「19.3」)よりやや低く、米国の市場心理は
やや安心?
と推測。
割安時期の目安の「30」より低い水準。
※参考:2018年以降の高い値(場中含む。概算値)
・2018.2月:「50」
・2018.12月:「36」
・2020.3月:「85」
・2020.10月:「41」
<恐怖指数について詳しくはコチラ↓>
www.yukimatu-value.com
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ジャンク債スプレッド
本記事のジャンク債スプレッドとは
①ジャンク債スプレッド
=米国のハイ・イールド債(格付け:BB)の利回り-米国債(10年物)の利回り
※本記事ではオプション調整後
②ジャンク債スプレッドが大きい⇒株式は割安傾向
③ジャンク債スプレッドが小さい⇒株式は割高傾向
④★平均値(幾何平均):3.3
★中央値:3.2
<期間:1997年1月~2021年3月の月末>
⑤5%以上のスプレッドの時期に株価は概ね割安か?
推移グラフと現在の状況判断
<1997年以降>
※出所:ICE BofAML US High Yield BB Option-Adjusted Spread (BAMLH0A1HYBB) | FRED | St. Louis Fedより作成 ※期間:1997.1月末~2021.4.15
4.15時点のジャンク債スプレッド(%。格付けBB、オプション調整後)は「2.35
」で、前週の「2.32」よりやや拡大。
※コロナ前のボトムは1.9%程度
スプレッドの長期中央値は「3.2」で今は中央値より約27%低い水準。
投資家心理は
やや楽観~楽観?
か。
<ジャンク債スプレッドについて詳しくはコチラ↓>
www.yukimatu-value.com
S&P500のPBR
※出所:S&P 500 Price to Book Valueより作成
1999年末~直近のS&P500のPBR推移。
4.16時点の推計値は「4.55」(前週は「4.49」)倍で前週より上昇。
ITバブル以来の高水準。
コロナ後のピーク更新。
長期の中央値「2.78」を64%ほど上回っており、株価水準は
割高
か。
※最近のS&P500の高PBR
①2018年1月:3.60倍(直近で世界景気が最もよかった時期)
②2018年9月:3.51倍(直近で米国の経済成長率が最も高かった時期)
③2020年1月:3.76倍(コロナ前、2019年9月以降の世界景気拡大期のピーク)
④2021年4月:4.55倍(コロナ後)
※出所:S&P 500 Price to Book Value
<S&P500のPBRについて詳しくはコチラ↓>
米国バフェット指標
米国バフェット指標とは
①米国バフェット指標=米国の時価総額÷米国の名目GDP
②米国株式の割安割高を判断する目安
③米国の時価総額=NYSE+Nasdaqで計算
推移グラフと現在の状況判断
米国の時価総額は2021年2月末で約「45.1兆ドル」。
米国バフェット指標は「2.06」。
米国バフェット指標の10年移動平均「1.50」より約37%高い水準。
今のS&P500は2021年2月末(3811)より10%ほど高い水準。
株価水準は
割高?
か。
※データ出所:https://www.world-exchanges.org/、世界経済のネタ帳、Gross Domestic Product (GDP) | FRED | St. Louis Fedのデータより作成
※2021年米国名目GDP推計値:21.92兆ドル
米国バフェット指標について詳しくはコチラ↓
現時点での米国市場の割高割安、4つの指標からの推測、まとめ
あくまで経験的な判断ですが、現時点で各指標が示唆する株式の割安、割高の判断をまとめます。
★恐怖指数⇒割安ではない?
★ジャンク債スプレッド⇒割安ではない?
★S&P500のPBR⇒割高?
★米国バフェット指標 ⇒割高?
以上から米国株の水準は
割高?
と推測。
現時点での米国株の投資タイミングに関しては
ややネガティブ~ネガティブ?
な印象。
※個人の直感、感想です。先のことは不明。投資は自己判断、自己責任で
最近のバブル崩壊後の株価低迷期と現在のデータ比較
※表のデータ出所 ・世界のバフェット指標:GLOBAL NOTE、https://www.world-exchanges.org/ ・OECD景気先行指数:OECD Data ・シラーPER:Shiller PE Ratio ・失業率:US Unemployment Rate ・実質経済成長率:BEA National Economic Accounts ・長短金利差:米国債・金利 - Bloomberg ・かい離率:米S&P 500インデックス(SPX - Investing.com
引き続き割高っぽい状況。
・S&P500のPBR、シラーPER:高水準
・長短金利差:長期金利低下に伴い大きく縮小
米国 30年物住宅固定金利
米国住宅市場に影響が大きそうな米国の30年物住宅固定金利。
4.15は「3.04%」(前週比-0.09%)。
上昇傾向はいったん終了、2週連続で低下。
2021.1.7の直近ボトム「2.65%」と比べると「+0.39%」。
コロナ前の2020年1月頃は3.5%以上。
<米国 30年物住宅固定金利:ここ5年>
※出所:30-Year Fixed Rate Mortgage Average in the United States (MORTGAGE30US) | FRED | St. Louis Fedより
おわりに
ITバブル時のピークまで、
●S&P500のPBR:あと約11%(今4.55倍、当時5.06倍)
●シラーPER:あと約18%(今37.60倍、当時44.19倍)
とそこそこに迫ってきました。
中銀動向や金利水準、経済成長への期待度合い、将来の人口動向見通しなど、過去とは全く異なり単純比較できませんが、とりあえずこれらの指標的には過去数十年で相当に高い株価水準にいるらしいことを示唆。
現在の株高要因として
★コロナショック後、ある種「戦時下」における各国中銀の金融緩和、財政出動
★リーマンショック後から続く世界的な金融緩和の流れ(量的緩和や株式ETF買いなどを含む)
★2009年以降、12年以上続く株価上昇トレンド
などが挙げられると思われますが、
★1981年以降40年近く続く米国長期金利の低下トレンド
というのも、大きな要因か。
<米10年国債利回り:1962年~>
※出所:10-Year Treasury Constant Maturity Rate (DGS10) | FRED | St. Louis Fedより作成
インフレ等により金利低下という株価にとってアドバンテージとなっていた要因が今後剥がれ落ちるときが来るのか、引き続き金利は低位安定しほどほどの調整を挟みつつもそこそこに株価上昇トレンドが続くのかどうか。
米中対立、コロナといった大きなテーマも複合的に絡み、しばらくは実に不透明感の強い状況が続きそう。