先週の米国市場を
「米国株式の割安割高を判断する目安」
になると思われる指標などで概観してみます。
ごく簡単な米国市場の概観
<先週のS&P500>
※出所:米S&P 500インデックス(SPX - Investing.com
5.13は「4024」で前週比「-2.6%」。
5月月間では今のところ「-2.6%」。
2022年1月の最高値「4819」より「-16.5」%水準。
<先週の米国10年国債利回り>
5.13は「2.93%」。前週は「3.14%」で先週は大きく低下。
先週は
★株価⇒下落
★債券利回り⇒低下
★ドル指数⇒上昇
という動きでした。
定点観測
以下の4つで定点観測してみます。
★恐怖指数<米国市場。S&P500の変動性>
★ジャンク債スプレッド<米国市場。クレジットスプレッドの一つ>
★S&P500のPBR<米国の代表的な株価指数のPBR>
★米国バフェット指標 <米国の時価総額÷米国の名目GDP>
恐怖指数
<ここ5年>
5.13は「28.87」。前週の「30.19」より低下。
水準としては長期平均(「19.3」)より高く、米国の市場心理は
不安?
と推測。
短期的な割安時期の目安の「30」は下回る水準。
※参考:2018年以降の高い値(場中含む。概算値)
・2018.2月:「50」
・2018.12月:「36」
・2020.3月:「85」
・2020.10月:「41」
・2022.1月:「39」
<恐怖指数について詳しくはコチラ↓>
www.yukimatu-value.com
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ジャンク債スプレッド
本記事のジャンク債スプレッドとは
①ジャンク債スプレッド
=米国のハイ・イールド債(格付け:BB)の利回り-米国債(10年物)の利回り
※本記事ではオプション調整後
②ジャンク債スプレッドが大きい⇒株式は割安傾向
③ジャンク債スプレッドが小さい⇒株式は割高傾向
④★平均値(幾何平均):3.30
★中央値:3.14
<期間:1997年1月~2022年4月の月末>
⑤5%以上のスプレッドの時期に株価は概ね割安か?
推移グラフと現在の状況判断
<1997年以降>
※出所:ICE BofAML US High Yield BB Option-Adjusted Spread (BAMLH0A1HYBB) | FRED | St. Louis Fedより作成 ※期間:1997.1月末~2022.5.12
5.12時点のジャンク債スプレッド(%。格付けBB、オプション調整後)は「3.36」で、前週の「2.83」より拡大。
※リーマンショック後のボトム:「1.96」%(2018年1月末)
スプレッドの長期中央値は「3.14」で今は中央値より約7%高い水準。
投資家心理は
ふつう~やや悲観
か。
<ジャンク債スプレッドについて詳しくはコチラ↓>
www.yukimatu-value.com
S&P500のPBR
※出所:S&P 500 Price to Book Valueより作成
1999年末~直近のS&P500のPBR推移。
5.13時点の推計値は「3.99」(前週は「4.09」)倍で前週より低下。
長期の中央値「2.79」を43%ほど上回っており、株価水準は
割高
か。
※最近のS&P500の高PBR
①2018年1月:3.60倍(直近で世界景気がよかった時期)
②2018年9月:3.51倍(直近で米国の経済成長率が最も高かった時期)
③2020年1月:3.76倍(コロナ前、2019年9月以降の世界景気拡大期のピーク)
④2021年12月:4.73倍(コロナ後)
※出所:S&P 500 Price to Book Value
<S&P500のPBRについて詳しくはコチラ↓>
シラーPER
※出所:Shiller PE Ratioより作成 ※期間:1995.1~2022.4
1995年以降のシラーPERの推移。
1995年以降の中央値は「26.5」倍。
2022年4月1日までの5年移動平均は「31.9」倍。
5.13は約「31.7」倍で前週(32.5)より低下。
長期の中央値より約20%、5年移動平均より約1%低い水準。
株価水準は
やや割高?
と推測。
※出所:Shiller PE Ratio
※参考:シラーPER(CAPEレシオ)とは|金融経済用語集 - iFinance
現時点での米国市場の割高割安、4つの指標からの推測、まとめ
あくまで経験的な判断ですが、現時点で各指標が示唆する株式の割安、割高の判断をまとめます。
★恐怖指数⇒割安ではない?
★ジャンク債スプレッド⇒ふつう~やや割安?
★S&P500のPBR⇒割高?
☆シラーPER⇒やや割高?
長期的には米国株の水準は
やや割高~割高?
と推測。
現時点での米国株の投資タイミングに関しては
ややネガティブ?
な印象。
※個人の直感、感想です。先のことは不明。投資は自己判断、自己責任で
最近のバブル崩壊後の株価低迷期と現在のデータ比較
※表のデータ出所 ・OECD景気先行指数:OECD Data ・米国失業率:US Unemployment Rate ・実質経済成長率:BEA National Economic Accounts ・マージンデット:Margin Statistics | FINRA.org ・長短金利差:米国債・金利 - Bloomberg
・ジャンク債スプレッド:久々に長期平均を上回り、やや不安状態
・シラーPER:やや楽観ゾーンか
・S&P500のPBR:高水準
・マージンデット前年同月比:2022年4月はマイナス幅拡大
2018年との金利、株価比較
前回FRBの「量的引き締め+利上げ」がセットで実施され、株式市場が大きく崩れ出したのが2018年10月頃。
当時と今の比較。
利上げは2回、量的縮小は実施前の状態(2022年6月に開始か)。
②は2018年よりやや低い水準。
③は2018年を0.4%上回っている状態。
2022年5月、株価は瞬間的に約20%まで下落し2018年のショックに一時的に並ぶ。
おわりに
恐怖指数は節目の30を下回り、最近のギザギザの動きをみていると、売り方が利確して次の悲観局面まで一息つきたい、という雰囲気も感じます。
一方、2022年4月の米国のマージンデット(証拠金債務)は前月から大きく減少し、前年比で-8.8%に。
米国のマージンデット(証拠金債務)が投資家のリスク許容度を反映すると仮定すると、急速にリスク許容度は低下中。
※出所:Margin Statistics | FINRA.org、S&P500 過去のレート - Investing.comより作成
1998年以降、マージンデットが前年同月比で60%を超えたのは①ITバブルと②住宅バブルと2021年の③コロナバブルのみ。
①②は下がり落ち始めると、その低下速度も猛烈であり、前年同月比で-40%程度まで下がりました。
③の今回も2021年3月の+71.6%をピークに2022年4月には-8.8%まで急速に下げています。
この指標をみていると、今は「極度の楽観から極度の悲観へ」と向かう可能性のある要注意時期のようにも感じ、わたしは引き続きリスク資産への配分はごく少なめ。
ただ、ジャンク債スプレッドが長期中央値をこえてきたり、シラーPERが5年移動平均を下回るなど、買いやすい材料が増えているのは明らかで、今から買う場合は2021年11月~2022年1月頃に比べれば割安に買える水準、とはいえそう。