FRBの量的引き締め(QT)が2022年6月から開始。
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前回のQTの確認
2017年10月から2019年8月に実施された前回のQT。
月末の概算値だと2年足らずで
・4.5兆ドル⇒3.8兆ドル
・ざっと0.7兆ドル、7000億ドルの減少
でした。
利上げとQTの影響もあってか、2018年10月~12月にかけて、一時的にS&P500は20%程度下げる場面がありました。
今回のQT
☆情報BOX:FRBの量的引き締め、前回より早期着手で加速度的 | ロイター
上記記事によれば今回のQTは2022年6~8月までは月475億ドル、9月以降は月950億ドルとなる予定。
この数値通り実行されれば
・6~8月で1425億ドル
・9~12月で3800億ドル
・2022年だけで5225億ドル
となり、前回2年足らずで減らした金額、7000億ドルの約75%を今年の7ヶ月だけで達成。
2023年2月まで続ければ9ヶ月で約7000億ドルに到達。
前回の2倍以上のハイペース。
それでも今の8.9兆ドルが8.2兆ドルに減るだけで、資産全体からみれば8%程度の減少。
そもそも上記のペースでQTが実施されるかは不明で、いつまで続けられるかも分かりませんが、とりあえずかなりのハイペースでQTが断行される可能性がある状態。
14年間で10倍に膨れ上がる
約14年前、リーマンショック前の2008年8月末のFRB資産は約「0.9兆」ドルでした。
2022年5月末はで約「8.9兆」ドル。
9.9倍、約10倍に膨らんでいます。
同期間でECB資産は約6.1倍、日銀資産は約6.7倍に膨張。
主要先進国中央銀行の資産はこの14年でFRBを筆頭に急増し、人為的な金利抑制、景気刺激策が採用され続けていた、ともいえます。
結果的に14年間で株価が高騰。
S&P500は2008年8月末~2022年5月末で「1283」⇒「4132」と約3.2倍に。
※出所:S&P500 インデックス(SPX) - Investing.comより作成
量的緩和だけが株価高騰の理由とも思いませんが、少なくとも長期のQEが株価高騰の一因であったと思われます。
長期の金融緩和漬けで金融引き締めに慣れていない
いまさらわたしが指摘するまでもなく、ここにきてFRBがいつもの緩和政策を行わず、どちらかというと評判の悪いやりたくもない利上げやQTを行っている、その理由は急速な物価上昇。
<米国消費者物価指数:前年同月比>
※出所:Consumer Price Index: All Items for the United States (USACPIALLMINMEI) | FRED | St. Louis Fedより作成
直近4月の米国消費者物価上昇率は+8.3%。
1990年や2008年に5~6%まで上昇したことはありましたが、8%超えは1980年代以来。
今後の物価動向がどうなるのかは全く分かりませんが、場合によっては米国民が不快に感じるインフレ水準が長期間続く可能性もあり。
そうなると国民の支持を得るために、苦渋の決断として資産価格や経済を犠牲にしても金融引き締め的な政策が断続的にとられ続ける可能性も。
したがって、わたしを含め、長期の金融緩和漬けで金融引き締めに慣れていない投資家は、今後の物価動向次第では、相場観を大きく変化させる必要があるのかもしれません。
個人的には
☆米国消費者物価
Consumer Price Index: All Items for the United States (USACPIALLMINMEI) | FRED | St. Louis Fed
☆米国物価とそれなりに相関があるCRB指数(ドル建ての商品価格)
TR/CC CRB インデックス(TRCCRB) - Investing.com
☆金融引き締めで上昇していくかもしれない米10年債利回りチャート
アメリカ 10年 債券利回り - Investing.com
☆金融引き締めで上昇していくかもしれない米国30年固定住宅金利
30-Year Fixed Rate Mortgage Average in the United States (MORTGAGE30US) | FRED | St. Louis Fed
などの動向は以前より気になる状況。
○今は時代の大きな転換点にあり、不況などで一時的に物価上昇が収まって金融緩和政策に戻るたびに、これまで長期間大量にばらまかれたマネーにより、先進諸国はインフレと「苦渋の決断としての再度の金融引き締め政策への逆戻り」に悩まされる状態が長く続くであろう、と大げさに危機を煽るのが正しいのか
○今後数年以内にインフレは以前の適度な水準に収まって、金融緩和の追い風も受け「株式インデックス積み立て長期投資」が礼賛される時代が再びやって来るのか
すべては今後の物価動向と金融政策次第。
予断を持ちすぎず、数値とともに現状確認しつつ、自分が期待値が高いと感じるポイントでリスクテイクを続けるしかないわけですが、インフレ金融引き締め相場、どうなっていきますか。