先週の米国市場を
「米国株式の割安割高を判断する目安」
になると思われる指標などで概観してみます。
ごく簡単な米国市場の概観
<S&P500>
※出所:米S&P 500インデックス(SPX - Investing.com
6.10は「3901」で前週比「-5.1%」。
6月月間では今のところ「-5.6%」。
2022年1月の最高値「4819」より「-19.0」%水準。
<米国10年国債利回り>
6.10は「3.17%」。前週は「2.94%」で先週も急上昇。
先週は
★株価⇒下落
★債券利回り⇒上昇
★ドル指数⇒上昇
という動きでした。
定点観測
以下の4つで定点観測してみます。
★恐怖指数<米国市場。S&P500の変動性>
★ジャンク債スプレッド<米国市場。クレジットスプレッドの一つ>
★S&P500のPBR<米国の代表的な株価指数のPBR>
★米国バフェット指標 <米国の時価総額÷米国の名目GDP>
恐怖指数
<ここ5年>
6.10は「27.75」。前週の「24.79」より上昇。
水準としては長期平均(「19.3」)より高く、米国の市場心理は
やや不安?
と推測。
短期的な割安時期の目安の「30」は下回る水準。
※参考:2018年以降の高い値(場中含む。概算値)
・2018.2月:「50」
・2018.12月:「36」
・2020.3月:「85」
・2020.10月:「41」
・2022.1月:「39」
<恐怖指数について詳しくはコチラ↓>
www.yukimatu-value.com
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ジャンク債スプレッド
本記事のジャンク債スプレッドとは
①ジャンク債スプレッド
=米国のハイ・イールド債(格付け:BB)の利回り-米国債(10年物)の利回り
※本記事ではオプション調整後
②ジャンク債スプレッドが大きい⇒株式は割安傾向
③ジャンク債スプレッドが小さい⇒株式は割高傾向
④★平均値(幾何平均):3.30
★中央値:3.14
<期間:1997年1月~2022年5月の月末>
⑤5%以上のスプレッドの時期に株価は概ね割安か?
推移グラフと現在の状況判断
※出所:ICE BofAML US High Yield BB Option-Adjusted Spread (BAMLH0A1HYBB) | FRED | St. Louis Fedより作成 ※期間:1997.1月末~2022.6.9
6.9時点のジャンク債スプレッド(%。格付けBB、オプション調整後)は「3.01」で、前週の「2.71」より大きめに拡大。
スプレッドの長期中央値は「3.14」で今は中央値より約4%低い水準。
投資家心理は
ふつう~やや楽観
で、6.9時点のデータではまだ余裕をかましている状況。
<ジャンク債スプレッドについて詳しくはコチラ↓>
www.yukimatu-value.com
S&P500のPBR
※出所:S&P 500 Price to Book Valueより作成
1999年末~直近のS&P500のPBR推移。
6.10時点の推計値は「3.87」(前週は「4.08」)倍で前週より大きく低下。
長期の中央値「2.80」を38%ほど上回っており、株価水準は
割高
か。
※最近のS&P500の高PBR
①2018年1月:3.60倍(直近で世界景気がよかった時期)
②2018年9月:3.51倍(直近で米国の経済成長率が最も高かった時期)
③2020年1月:3.76倍(コロナ前、2019年9月以降の世界景気拡大期のピーク)
④2021年12月:4.73倍(コロナ後)
※出所:S&P 500 Price to Book Value
<S&P500のPBRについて詳しくはコチラ↓>
シラーPER
※出所:Shiller PE Ratioより作成 ※期間:1995.1~2022.5
1995年以降のシラーPERの推移。
1995年以降の中央値は「26.5」倍。
2022年5月1日までの5年移動平均は「32.0」倍。
6.10は約「30.5」倍で前週(32.1)より低下。
長期の中央値より約15%高く、5年移動平均より約5%低い水準。
株価水準は
やや割高?
と推測。
※出所:Shiller PE Ratio
※参考:シラーPER(CAPEレシオ)とは|金融経済用語集 - iFinance
現時点での米国市場の割高割安、4つの指標からの推測、まとめ
あくまで経験的な判断ですが、現時点で各指標が示唆する株式の割安、割高の判断をまとめます。
★恐怖指数⇒割安ではない?
★ジャンク債スプレッド⇒ふつう~やや割高?
★S&P500のPBR⇒割高?
☆シラーPER⇒やや割高?
長期的には米国株の水準は
やや割高~割高?
と推測。
現時点での米国株の投資タイミングに関しては
ややネガティブ~ネガティブ?
な印象。
※個人の直感、感想です。先のことは不明。投資は自己判断、自己責任で
最近のバブル崩壊後の株価低迷期と現在のデータ比較
※表のデータ出所 ・OECD景気先行指数:OECD Data ・米国失業率:US Unemployment Rate ・実質経済成長率:BEA National Economic Accounts ・マージンデット:Margin Statistics | FINRA.org ・長短金利差:米国債・金利 - Bloomberg
・S&P500のPBR:高水準
・シラーPER:やや楽観ゾーンか
・長短金利差:2年債利回りが10年債以上に急騰し、先週の「0.28%」⇒「0.10%」に大きく縮小
2018年との金利、株価比較
前回FRBの「量的引き締め+利上げ」がセットで実施され、株式市場が大きく崩れ出したのが2018年10月頃。
当時と今の比較。()内は前週値。概算値。
利上げは2回、量的縮小は2022年6月に開始。
②はここ2週で大きく上昇、2018年より「0.1%」ほど高い水準。
③も再上昇、2018年より「0.3%」ほど高い状態。
おわりに
米国物価上昇率の沈静化期待が大きく損なわれ、米10年債利回りの急騰、大幅な株安となった先週。
それでも
・S&P500のPBRはここ20年ほどの中央値よりまだ40%近く高い水準で
・シラーPERもここ27年ほどの中央値より約15%高い水準で
あくまで個人的主観ですが、まったく割安感を感じない株価水準であり、景気動向、中銀スタンス、投資家のリスク許容度的にも買い向かう魅力を感じない状況。
S&P500はピークから「-19%」水準で、節目の「-20%」を常態的に下回り、
あの頃はバブルだったんだなあ
とみんなが感じる下げ相場になってくるか
ぎりぎりこの辺で持ちこたえ、株式インデックスに積み立て長期投資!
の気概が保たれる雰囲気になるか、興味深いポイント。
濃密な2022年ももうすぐ半分が過ぎるころ。