先週の米国市場を株式の割安割高を判断する目安になると思われる指標などで概観してみます。
簡単な米国市場の概観
<S&P500>
※出所:米S&P 500インデックス(SPX - Investing.com
7.29は「4130」で前週比「+4.2%」。
7月月間では「+9.1%」でした。
2022年1月の最高値「4819」より「-14.3」%水準。
<米国10年国債利回り>
7.29は「2.66%」。前週は「2.75%」で先週も低下。
先週は
★株価⇒上昇
★債券利回り⇒低下
★ドル指数⇒低下
という動きでした。
定点観測
以下の4つで定点観測してみます。
★恐怖指数<米国市場。S&P500の変動性>
★ジャンク債スプレッド<米国市場。クレジットスプレッドの一つ>
★S&P500のPBR<米国の代表的な株価指数のPBR>
★米国バフェット指標 <米国の時価総額÷米国の名目GDP>
恐怖指数
<ここ5年>
7.29は「21.33」。前週の「23.03」より低下。
水準としては長期平均(「19.3」)よりやや高く、米国の市場心理は
ふつう~やや不安?
と推測。
短期的な割安時期の目安の「30」は下回る水準。
※参考:2018年以降の高い値(場中含む。概算値)
・2018.2月:「50」
・2018.12月:「36」
・2020.3月:「85」
・2020.10月:「41」
・2022.1月:「39」
<恐怖指数について詳しくはコチラ↓>
www.yukimatu-value.com
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ジャンク債スプレッド
本記事のジャンク債スプレッドとは
①ジャンク債スプレッド
=米国のハイ・イールド債(格付け:BB)の利回り-米国債(10年物)の利回り
※本記事ではオプション調整後
②ジャンク債スプレッドが大きい⇒株式は割安傾向
③ジャンク債スプレッドが小さい⇒株式は割高傾向
④★平均値(幾何平均):3.30
★中央値:3.14
<期間:1997年1月~2022年6月の月末>
⑤5%以上のスプレッドの時期に株価は概ね割安か?
推移グラフと現在の状況判断
※出所:ICE BofAML US High Yield BB Option-Adjusted Spread (BAMLH0A1HYBB) | FRED | St. Louis Fed
※期間:1997.1月末~2022.7.28
7.28時点のジャンク債スプレッド(%。格付けBB、オプション調整後)は「3.28」で、前週の「3.28」と変わらず。
スプレッドの長期中央値は「3.14」で今は中央値より約4%高い水準。
投資家心理は
ふつう~やや悲観
か。
<ジャンク債スプレッドについて詳しくはコチラ↓>
www.yukimatu-value.com
S&P500のPBR
※出所:S&P 500 Price to Book Valueより作成
1999年末~直近のS&P500のPBR推移。
7.29時点の推計値は「4.10」(前週は「3.93」)倍で前週より上昇。
長期の中央値「2.80」を46%ほど上回っており、株価水準は
割高
か。
※最近のS&P500の高PBR
①2018年1月:3.60倍(直近で世界景気がよかった時期)
②2018年9月:3.51倍(直近で米国の経済成長率が最も高かった時期)
③2020年1月:3.76倍(コロナ前、2019年9月以降の世界景気拡大期のピーク)
④2021年12月:4.73倍(コロナ後)
※出所:S&P 500 Price to Book Value
<S&P500のPBRについて詳しくはコチラ↓>
シラーPER
※出所:Shiller PE Ratioより作成 ※期間:1995.1~2022.6
1995年以降のシラーPERの推移。
1995年以降の中央値は「26.5」倍。
2022年6月までの5年移動平均は「31.9」倍。
7.29は約「31.0」倍で前週(29.7)より上昇。
長期の中央値より約17%高く、5年移動平均より約3%低い水準。
株価水準は
やや割高?
と推測。
※出所:Shiller PE Ratio
※参考:シラーPER(CAPEレシオ)とは|金融経済用語集 - iFinance
現時点での米国市場の割高割安、4つの指標からの推測、まとめ
あくまで経験的な判断ですが、現時点で各指標が示唆する株式の割安、割高の判断をまとめます。
★恐怖指数⇒割安ではない?
★ジャンク債スプレッド⇒ふつう~やや割安?
★S&P500のPBR⇒割高?
☆シラーPER⇒やや割高?
長期的には米国株の水準は
やや割高~割高?
と推測。
現時点での米国株の投資タイミングに関しては
ややネガティブ~ネガティブ?
な印象。
※個人の直感、感想です。先のことは不明。投資は自己判断、自己責任で
最近のバブル崩壊後の株価低迷期と現在のデータ比較
※表のデータ出所 ・OECD景気先行指数:OECD Data ・米国失業率:US Unemployment Rate ・実質経済成長率:BEA National Economic Accounts ・マージンデット:Margin Statistics | FINRA.org ・長短金利差:米国債・金利 - Bloomberg
・S&P500のPBR:高水準
・シラーPER:やや楽観ゾーンか
・米国実質経済成長率:2022.1Qは+3.5%、2Qの速報値は+1.6%。大幅に低下
・長短金利差:10y-3Mは縮小続く
2018年との金利、株価比較
前回FRBの「量的引き締め+利上げ」がセットで実施され、株式市場が大きく崩れ出したのが2018年10月頃。
当時と今の比較。()内は前週値。概算値。
利上げは4回、量的引き締めは2022年6月に開始。
①は先週+0.75%上昇。
②は先週も低下、2018年より「0.4%」低い水準。
③は先週低下、2018年より「0.4%」ほど高い状態。
金融ストレス指数
※出所:St. Louis Fed Financial Stress Index (STLFSI3) | FRED | St. Louis Fed
2022.7.22は「-2.22」(前週は-1.78)で前週より金融ストレス低下。
1994年以降で最もストレスフリーな状態。
※金融ストレス指数について
⇒金融ストレス指数とは|インデックス(指数)用語集|iFinance
おわりに
2022.2Qの米国実質経済成長率は「+1.6%」(速報値、前年同期比)でした。
※出所:Real Gross Domestic Product (A191RO1Q156NBEA) | FRED | St. Louis Fed
2021.4Q「+5.5%」
2022.1Qは「+3.5%」
だったので、この半年で急速に低下してきています。
2020年の景気後退期を除いて、前回2007年12月からの景気後退が始まる頃の成長率は「+2.2%」。
前々回2001年3月からの景気後退が始まる頃の成長率も「+2.2%」。
前々々回1990年7月からの景気後退が始まる頃の成長率は「+1.7%」でした。
過去の経験からいえば今の「+1.6%」はすでに景気後退期に入っていてもおかしくない水準。
失業率は2022年6月で「3.6%」。
※出所:Unemployment Rate (UNRATE) | FRED | St. Louis Fed
かなり低い水準ですが、たとえば1969年からの景気後退が始まる頃の失業率は「+3.5%」でした。
同様に1953年からの景気後退が始まる頃の失業率は「+2.6%」であり、「3.6%」という低水準だから景気後退していない、という主張は、過去の例を見る限り、必ずしも正しくはないといえます。
ただ、景気後退が始まる時期に失業率は必ず上昇しており、2022年6月時点では上昇していないので、この観点で過去の事例を重視するなら、景気後退はまだしていない、ともいえそう。
今後、
①成長率の低下が続く
②失業率が上昇し始める
場合、経験的には景気後退まっしぐらということになり、徐々に企業決算への悪影響が鮮明になり、株価にも影響してくると思われます。
逆に①②が確認されない場合、または何かの理由で予想外に物価が下がり、FRBが想定より早く緩和政策に転換できる状況が来れば、株価は持ちこたえるかもしれない。
とりあえず「7月の失業率」や経済成長率との関連が深くGDPより速報性が高い「7月の個人消費支出」などのデータは気になるところ。
※出所:Real Personal Consumption Expenditures (PCEC96) | FRED | St. Louis Fed
ちなみに実質個人消費支出(前年同月比)は2022年2月までは+5%以上の水準でしたが、3月以降低下、6月は+1.6%ほどまで低下している状況。