ユキマツの「長期投資のタイミング」

「景気(企業利益動向)」「中銀の金融政策(金利動向)」「投資家のリスク許容度」などから長期投資のタイミングを探る投資ブログ

激変する2022年の投資環境 ①3つの「タイムラグ」

激変する2022年の投資環境において最近感じる3つのことを「タイムラグ」というくくりで書き留める記事。

3つのタイムラグ その1「景気指標と企業利益」

わたしはPMIやCLIなどの景気指標を見るのが好きで、投資スタンスを定める際それなりに参考にします。

今年に入ってグローバル製造業PMIやCLI(OECD全体)などのマクロな景気指標は明らかに悪化しており、直近のCLIは景気の悪化を示唆する水準に、グローバル製造業PMIも8月の数値は「50.3」で、節目の50(これを下回ると景気悪化)に急接近中。

ただ、この手の景気指標の動向が、企業利益や株価動向に即時に直結するかどうかは別問題。

このままPMIやCLIが悪化していく展開となれば、より企業利益の悪化が鮮明になっていくと思われますが、

☆「景気指標悪化のタイミング」と「企業利益悪化のタイミング」

にはそこそこのタイムラグがあることも。

このタイムラグ、どの程度のものになるかは明確にはとらえにくく、けっこう曲者。

景気指標は悪いらしいけど、S&P500のEPS予想からしたら、まだまだ余裕

という楽観を破壊し得るタイムラグかも。

3つのタイムラグ その2「インフレと景気」

日本は今のところさほどでもないですが、欧米の物価上昇率は大したもの。

賃金上昇率を上回る物価上昇率は明らかに景気に対してネガティブと理屈では感じますが、あからさまなインフレ環境では、「インフレが消費を一時的に喚起して」景気にポジティブに働く側面も。

今のうちに高い買い物を済ませないと。

来年の今頃、もっと高くなってるかもしれないから。

的な需要の先食いが欧米では起きている、あるいは起きていたと思われ、インフレの悪影響が実際の景気にもろに反映されるまでには、ある程度のタイムラグがあると思われます。

これもまたどのくらいの期間続くのか、明確に予見するのもむつかしそうで、けっこう曲者。

そして、需要の先食いは後々景気に悪影響を及ぼすリスク要因。

3つのタイムラグ その3「インフレと為替レート」

例えばイギリスのポンドは円に対して、昨年末から2022年7月末までの7ヶ月で4%ほど値上がりしています。

ポンドが円より7ヶ月で4%強くなっています。

この間、イギリスの物価は急上昇し、前年同期比の消費者物価は7月で「+10.1%」。

日本も上昇していますが、7月で「+2.6%」であり、2国間で7%以上の大きな差があります。

物価上昇は通貨価値の下落、物価低下は通貨価値の上昇なので、それだけを考慮すると、通貨価値の落ちているポンドより円が弱くなっているのはなんだか変な感じ。

 

もう一つ、為替レート決定に大きく影響する金利を見てみます。

同じ物価上昇率なら、金利が高くつく通貨の方が金利が低い通貨より魅力があり、選好される傾向があるはず。

7月末の10年国債利回りはイギリスは「1.87%」、日本は「0.18%」。

イギリスの方が「1.7%」ほど高く、国債利回りとしての魅力はイギリス国債の方に軍配が上がる状況。

 

以上まとめると、今年に関しては現段階では物価よりも金利が重視され、

日本と比べて物価が大きく上昇し、金利が大きく上がっているイギリスのポンド

が円より強くなっている状況といえます。

つまり、年初からFX取引で「円売りポンド買いポジションを保有」していれば、

●毎日スワップポイントがもらえて

●為替レートの上昇により含み益が出ている

といういいこと尽くめの素晴らしい取引ができていることになります。

逆に年初から「円買いポンド売りポジションを保有」していれば、毎日金利差で削られ含み損も出ているというろくでもない取引となっています。

 

問題は今後も物価よりも金利差が重視される状態が続くのかどうか。

●毎日スワップポイントがもらえて、含み益も出つづける

状態は理屈では「一定のタイムラグ」を経て

●物価差に起因する為替レートの下落により、ため込んだスワップポイントは同等かそれ以上の含み損で相殺されるという落ちになる(FX業者への手数料はマイナス要因)

というのがFX業界の経験則と思われますが、この「一定のタイムラグ」というのが曲者。

例えばドル買い円売りポジションなどはかなり長期的にハッピーな状態(スワップポイント+ドル上昇の含み益)が続いていると思われ、理屈通りの「物価差に起因する為替レートの下落」がいつやってくるかは全く不明。

ただ金融政策の転換、世界的な景気後退、世界的な信用不安、そういったイベントでゆがみの解消が一気に進む可能性はあり、気になるところ。

まとめ

所詮理屈であれこれ考えても、為替も株価も最終的には「需給」で決まると思うので、

売り方が優勢なら下がり、買い方が優勢なら上がるもの

とも思いますが、以上、最近気になる3つのタイムラグについて書いてみました。

とりあえず年末まであと4ヶ月ほど。

それぞれのタイムラグが4ヶ月でどの程度解消されるのか、解消されないのか、どうなりますか。

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