ユキマツの「長期投資のタイミング」

「景気(企業利益動向)」「中銀の金融政策(金利動向)」「投資家のリスク許容度」などから長期投資のタイミングを探る投資ブログ

中国は再び世界景気をけん引するか <3/3>

中国は再び世界景気をけん引するか

をテーマに3つの記事を掲載予定。

今回は3つ目。

これまでの2つはこちら

www.yukimatu-value.com

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ここまでのまとめ

1つ目の記事では

☆CLIという景気指標では、中国景気の落ち込みが底打ちしているようにも見えること

☆GDP、M2、住宅価格指数など中国経済のポジティブな指標

などを確認。

2つ目の本記事では

☆鉱工業利益や設備稼働率をみると、中国製造業が今世界景気をけん引しつつあるようには見えないこと

☆輸入や物価をみると長期トレンドとしての中国の内需の弱まりや不動産市況を中心としたデフレ化の可能性があること

などを確認。

中国は再び世界景気をけん引するか

3つ目の本記事ではわたしなりの結論を提示。

中国の「平均年齢」

「平均年齢」は各国の総人口の推計平均年齢(中央値ベース)。

国連データによれば2022年の中国は38.47歳。

2002年時点では30.07歳だったので、この20年で8.40歳平均年齢が上昇。

日本は2022年48.75歳、2002年は41.41歳、この20年で7.34歳平均年齢が上昇。

同様にドイツは2022年44.85歳、2002年は39.87歳、この20年で4.98歳平均年齢が上昇。

米国は2022年37.89歳、2002年は34.53歳、この20年で3.36歳平均年齢が上昇。

ざっくりいえばこの20年での平均年齢の上昇幅は

☆中国:8歳

☆日本:7歳

☆ドイツ:5歳

☆米国:3歳

であり、国全体として中国はこの4ヵ国では最も早く高齢化しています。

そして2022年時点での平均年齢は

☆中国:38.5歳

☆日本:48.8歳

☆ドイツ:44.9歳

☆米国:37.9歳

であり、すでに中国は米国よりやや「年老いた」国です。

今後もこの傾向が続くならば、中国は米国より早く高齢化し、米国と中国の「平均年齢差」は開いていくと思われます。

☆データ:人口 カテゴリの統計データ一覧 - GLOBAL NOTE

中国の少子高齢化と生産年齢人口比率の低下

<少子化>

中国の15歳未満人口比率は2002年は22.89%。

2021年は17.67%でこの19年で5.22%減少。

<高齢化>

中国の高齢化率は2002年は7.32%。

2021年は13.15%でこの19年で5.83%増加。

<生産年齢人口比率の低下>

中国の生産年齢人口比率(15歳-64歳人口の全体に占める割合)は2002年は69.79%。

2021年は69.18%でこの19年で0.61%低下。

中国の生産年齢人口比率ピークは2009年の72.94%で、ピークから12年で3.76%減少。

以上のように中国は国全体として高齢化し、少子化も進み、働き手世代である生産年齢人口比率も減少してきている状況。

☆データ:人口 カテゴリの統計データ一覧 - GLOBAL NOTE

「中国の少子高齢化と生産年齢人口比率の低下」の影響

日本の生産年齢人口比率のピークは1991年の69.81%。

バブル崩壊時期にあたります。

その後4%を超えるような成長はほぼなくなり、おおむね0~2%の低成長時代に突入。

生産年齢人口比率はこの30年ほどでざっと70%⇒58%まで低下しています。

※出所:日本の統計データ - GLOBAL NOTEデータより作成

一方同時期の中国の経済成長率と生産年齢人口比率はこんな感じ。

※出所:中国の統計データ - GLOBAL NOTEデータより作成

2009年に生産年齢人口比率は約73%でピーク。

その後12年で69%まで、4%ほど一気に低下してきています。

成長率は2009年以降徐々に低下傾向、2016年以降はコロナ反動の2021年以外、7%を超えることはなくなっています。

一般に

☆生産年齢人口比率が高まる時期は人口ボーナス期、比率が低下する時期は人口オーナス期

☆人口オーナス期は労働力の減少による消費の減退や社会保障費の増大などにより低成長に陥りやすい

とされており、中国は明らかな人口オーナス期であり、引き続き低成長化する可能性は高まっていると思われます。

※参考

人口ボーナス|証券用語解説集|野村證券

人口オーナス|証券用語解説集|野村證券

そしてすこぶる雑な指摘とはなりますが、この人口動態面の悪影響が二つ目の記事で触れたような内需の低下(輸入の減少や家賃インフレの低下傾向)を招いている一因かと感じる次第。

中国の輸入(前年比)

※出所:中国 - 輸入(年間) | 1991-2023 データ | 2024-2025 予測

中国の家賃インフレ(前年比)

※出所:中国 - 家賃インフレ | 2001-2023 データ | 2024-2025 予測

よって、

中国は再び世界景気をけん引するか

に関して、もしけん引することがあったとしても以前よりそのパワーは低下している?と感じます。

また中国不動産バブル崩壊説はもう10年以上もささやかれては否定されているテーマですが、今後も今のような中国不動産市場の低迷が続くことで信用不安がくすぶったり、あるいは世界的な不況ともなれば、中国が世界景気をけん引するのではなく、逆に足をひっぱることも、決してないわけではないとも思います。

中国のアドバンテージ

一方、中国にはアドバンテージもあるのかと。

一つは豊富な生産年齢人口。

2015年の9.88億人をピークに2021年には9.77億人まで中国の生産年齢人口は減っていますが、それでも10億人近い生産年齢人口がいるのが中国。

2021年時点で米国の生産年齢人口は2.16億人、日本は0.73億人、ドイツは0.53億人と、インドと並んで生産年齢人口の数で中国は圧倒的です。

※データ:人口 カテゴリの統計データ一覧 - GLOBAL NOTE

生産年齢人口比率が急速に減っていっても、生産年齢人口の絶対値は非常に大きい水準が維持される点は事と場合によっては有利に働くこともあるかも。

二つ目は現状低インフレであること。

一部には

☆中国の地方政府の財政状況悪化から中国は財政出動政策をとりにくい

☆物価の安定を中国政権は何よりも優先する(国民の不満を高めないため)

といった指摘もあるようで、わたしにはその真偽は不明ですが、基本的に低インフレであることは、今後余力さえあれば財政出動や金融緩和政策を実行しやすい状況にあるといえます。

もし中国が後先考えず思い切った政策をとることがあれば、まさに

中国が世界景気をけん引している

としかいえないような状況が生まれるかもしれません。

あまり可能性は高くない気がしますが、一応中国がで財政出動や金融緩和政策をとりやすい低インフレ状態であることは意識してもよいのかも。

中国のM2の伸び(前年比)

※出所:中国 M2貨幣ストック (前年比)より作成

結論

中国は再び世界景気をけん引するか

に関して

財政金融政策発動によりけん引することもあるかもしれないが、あったとしても以前のような力強さはなさそうで、場合によっては足をひっぱることも

というのが現時点の結論。

今後の世界景気の個人的なメインシナリオは

といったものであり、遅くても来年夏ごろには底打ちしてくれればという立場ですが、どうなりますか。

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