為替レートの水準を推し量る一つの視点「実質実効為替レート」で円の水準を推測。
・投資判断はご自身で行ってください
・本ブログ記事に何らかの投資行動を推奨する意図はありません
実質実効為替レートを確認するメリット
名目レートだけでなく「インフレ変動」や「貿易額」で調整を施した為替レート(=実質実効為替レート)も知っておくことで、現在の為替レートの水準を知る手掛かりになる、かも。
実質実効為替レートとは
2024.10.2時点「1ドル=144円程度」の円のレートは「名目レート」。
実質実効為替レートの「実質」は
「実質」→「インフレ変動(物価変動)で調整した」
の意味。
また、実質実効為替レートの
「実効」→「貿易額などに応じて加重平均して算出した」
の意味。
実質実効為替レートは単純な名目レートではなく、
各国のインフレ変動や貿易額に応じた調整を施した為替レート
のことで、一般的な名目レートでは把握しにくい
通貨の「実力」を推し量る指標
とする人もいます。
※参照
●コトバンク:実質実効為替レート(ジッシツジッコウカワセレート)とは
●金融情報サイト:実効為替レート
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円の実質実効為替レートの推移(5年移動平均を併記)
※出所:主要時系列統計データ表より作成
※グラフ期間:1980.1月~2024.8月
最新値2024年8月の円の実質実効為替レートは「72.66」(前月は「68.27」)。
8月は大きめに円高方向に動きました。
「円の実質実効為替レート」と「5年移動平均」
※出所:主要時系列統計データ表より作成
※グラフ期間:1980.1月~2024.8月
1980年からの円の実質実効為替レートとその5年移動平均。
円安、円高の判断の一手段として5年移動平均からの乖離率を観察する方法があり、本記事では
☆移動平均より今のレートが小さい⇒円安?
☆移動平均より今のレートが大きい⇒円高?
と判断。
ざっくりいえば、
☆オレンジで〇をした時期が円安?
☆青で〇をした時期が円高?
と判断。
この見方で行くと、今は円安。
次に5年移動平均から上下どちらに何%ずれているか、「5年移動平均からの乖離率」と「ドル円レート」を併せて観察。
「円の実質実効為替レート・5年移動平均からの乖離率」と「ドル円」
※出所:主要時系列統計データ表、USD JPY 過去データ - Investing.comより作成
※グラフ期間:1990.1月~2024.8月
赤:「円の実質実効為替レート・5年移動平均からの乖離率(%)」
青:「ドル円」
です。
1990.1~2024.8までの両者の相関係数は「-0.59」で逆相関があり、
☆5年移動平均からの乖離率が下がる⇔ドル円が上がる(円安)
☆5年移動平均からの乖離率が上昇する⇔ドル円が下がる(円高)
という傾向あり。
今は円安か?
※出所:主要時系列統計データ表、USD JPY 過去データ - Investing.comより作成
※グラフ期間:1990.1月~2024.8月
2024年8月の5年移動平均からの乖離率は「-14.5%」(前月は「-20.2%」)。
乖離率「-25%~-15%」
を「明確な円安ゾーン」とすると、8月の値は
明確な円安ゾーンを脱出したところだが、まだ円安傾向
と推測される水準。
おわりに
※出所:主要時系列統計データ表、USD JPY 過去データ - Investing.comより作成
※グラフ期間:1990.1月~2024.8月
移動平均からの乖離率「-15%以下」が長く続いたのは
①2013.2~2015.12(2年10ヵ月)
②2022.4~2024.7(2年3ヵ月。23年1月のみ「-14.9%」)
①は言わずと知れたアベノミクス全盛期、政治的な円安誘導時期。
②は2022年3月から始まった米国の急激な利上げ(0.25%⇒5.50%)、日米金利差拡大に伴う円安時期。
米国が利下げに転じた今、今後も利下げが続けば中長期的に円安はしばらく修正され続ける?
というのが個人的な今後のメインシナリオですが、そう単純に動くのか、動かないのか、はたして。
※参考記事