為替レートの水準を推し量る一つの視点「実質実効為替レート」で円の水準を推測。
・投資判断はご自身で行ってください
・本ブログ記事に何らかの投資行動を推奨する意図はありません
実質実効為替レートを確認するメリット
名目レートだけでなく「インフレ変動」や「貿易額」で調整を施した為替レート(=実質実効為替レート)も知っておくことで、現在の為替レートの水準を知る手掛かりになる、かも。
実質実効為替レートとは
2024.12.16時点「1ドル=154円程度」の円のレートは「名目レート」。
実質実効為替レートの「実質」は
「実質」→「インフレ変動(物価変動)で調整した」
の意味。
また、実質実効為替レートの
「実効」→「貿易額などに応じて加重平均して算出した」
の意味。
実質実効為替レートは単純な名目レートではなく、
各国のインフレ変動や貿易額に応じた調整を施した為替レート
のことで、一般的な名目レートでは把握しにくい
通貨の「実力」を推し量る指標
とする人もいます。
※参照
●コトバンク:実質実効為替レート(ジッシツジッコウカワセレート)とは
●金融情報サイト:実効為替レート
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円の実質実効為替レートの推移(5年移動平均を併記)
※出所:主要時系列統計データ表より作成
※グラフ期間:1980.1月~2024.10月
最新値2024年10月の円の実質実効為替レートは「71.44」(前月は「73.49」)。
10月は円安方向に動きました。
直近ボトムは7月は「68.27」で7月よりは円高方向に移動。
「円の実質実効為替レート」と「5年移動平均」
※出所:主要時系列統計データ表より作成
※グラフ期間:1980.1月~2024.8月
1980年からの円の実質実効為替レートとその5年移動平均。
円安、円高の判断の一手段として5年移動平均からの乖離率を観察する方法があり、本記事では
☆移動平均より今のレートが小さい⇒円安?
☆移動平均より今のレートが大きい⇒円高?
と判断。
ざっくりいえば、
☆オレンジで〇をした時期が円安?
☆青で〇をした時期が円高?
と判断。
この見方で行くと、今は円安。
次に5年移動平均から上下どちらに何%ずれているか、「5年移動平均からの乖離率」と「ドル円レート」を併せて観察。
「円の実質実効為替レート・5年移動平均からの乖離率」と「ドル円」
※出所:主要時系列統計データ表、USD JPY 過去データ - Investing.comより作成
※グラフ期間:1990.1月~2024.10月
赤:「円の実質実効為替レート・5年移動平均からの乖離率(%)・左軸」
青:「ドル円・右軸」
です。
1990.1~2024.10までの両者の相関係数は「-0.59」で逆相関があり、
☆5年移動平均からの乖離率が下がる⇔ドル円が上がる(円安)
☆5年移動平均からの乖離率が上昇する⇔ドル円が下がる(円高)
という傾向あり。
今は円安か?
※出所:主要時系列統計データ表、USD JPY 過去データ - Investing.comより作成
※グラフ期間:1990.1月~2024.10月
2024年10月の5年移動平均からの乖離率は「-15.0%」(前月は「-13.1%」)。
乖離率「-25%~-15%」
を「明確な円安ゾーン」とすると、10月の値は
明確な円安ゾーンで円安?
と推測される水準。
おわりに
米国が利下げに転じた今、今後も利下げが続けば中長期的に円安はしばらく修正され続ける?
というのが個人的な今後のメインシナリオですが、そう単純に動くのか、動かないのか、はたして。
前々回の本シリーズで上記のように書いていましたが、10月以降、単純には動いていません。
FRB利下げが始まったものの、米長期金利は大幅上昇、ブログを書いた2024.10.4の「3.8%」から直近で「4.4%」まで、実に0.6%ほど上昇しています。
米日長期金利差は拡大し、「10月4日⇒直近」でドル円は上昇(1ドル「149」円⇒「154」円)。
FRB利下げ開始⇒米国長期金利 低下⇒円高
というシナリオは今は全否定されており、単純ではない相場の複雑さを物語る展開。
さらに今は
利上げするかも、だった日銀が12月は利上げしなさそう
という思惑もあって円安に動いていそう。
もし12月日銀利上げがあれば大きく円高に動きそうですが、利上げがない場合も含めて、金融政策で為替も株価も振り回されそうな状況。
とりあえず今は円の実質実効為替レートからは
明確な円安ゾーンにいる
との印象。
※参考記事