「米国リート」(IYR)と「米国住宅価格」(アメリカ・S&Pケースシラー住宅価格・20都市)についての記事。
「米国リート」と「米国住宅価格」
金融商品である米国リート(本記事では以下IYR)と米国住宅価格(本記事では以下アメリカ・S&Pケースシラー住宅価格・20都市)にはどのような関連があるのか。
住宅価格を確認することが米国リート動向を判断するうえで、価値があるのかどうか、考えてみます。
「米国リート」と「米国住宅価格」の推移
「米国リート」(IYR)は2000年7月からのデータがあるので、2000年7月を「1」として、米国リートと米国住宅価格の推移をグラフにしてみました。
※出所:S&P/Case-Shiller 20-City Composite Home Price Index (SPCS20RSA) | FRED | St. Louis Fed、ETF iShares Dow Jones Us 過去データ - Investing.comより作成
ここから何が言えるか。
「米国リート」と「米国住宅価格」の関係①:両者は強い正の相関関係
月足のデータですが、2000年7月~2022年8月までの両者の相関を出してみると、相関係数は「0.88」でした。
強い正の相関があることを示唆する数値であり、住宅価格が上がる時期にはリートも上昇しやすい(その逆もしかり)という、ふつうな感じの結果に。
「米国リート」と「米国住宅価格」の関係②:リートの方が激しく動く
※出所:S&P/Case-Shiller 20-City Composite Home Price Index (SPCS20RSA) | FRED | St. Louis Fed、ETF iShares Dow Jones Us 過去データ - Investing.comより作成
グラフをみると明らかですが、リートの方が住宅価格より激しく動きます。
2000.7月⇒2007.1月でリートは2.5倍近くまで上昇、2009.2月には0.7倍程度まで暴落しています。
同期間、住宅価格は1.9倍程度までの上昇、2009.2月でも1.36倍までしか下げていません。
今年に入ってリートは大きく下げていますが、住宅価格は2022年6月まで上昇。
リートが「中銀金融政策(金利動向)」「金融市場」「投資家のセンチメント」の影響をもろに受ける金融商品であるためであると思われます。
「米国リート」と「米国住宅価格」の関係③:住宅価格下落期は珍しい
※出所:S&P/Case-Shiller 20-City Composite Home Price Index (SPCS20RSA) | FRED | St. Louis Fed、ETF iShares Dow Jones Us 過去データ - Investing.comより作成
2000.7月以降、ほとんどの時期で住宅価格は上昇しています。
下げトレンドは3回のみ(3回目はまだ「トレンド」といえるかは怪しいですが)。
概ね欧州債務危機の時期にかぶる2回目は無事でしたが、住宅バブル崩壊期の1回目は壊滅的、3回目となる2022年でもリート価格はそこそこに下落。
当たり前といえば当たり前ですが、金融引き締め時期、住宅価格下落時期のリート投資は要注意。
一方で紆余曲折はあっても住宅価格上昇時のリートへの長期投資は、この期間ではリターンが良好
今後もこの傾向が続くかは不明ですが、どちらかといえば住宅価格上昇トレンド時期のリート投資がよりセイフティーか。
「米国リート」と「米国住宅価格」の関係④:トレンドが読みやすそうなのは住宅価格
※出所:S&P/Case-Shiller 20-City Composite Home Price Index (SPCS20RSA) | FRED | St. Louis Fed、ETF iShares Dow Jones Us 過去データ - Investing.comより作成
あくまでこの期間の経験則ですが、トレンドが読みやすかったのは住宅価格。
同じ月足データですが、なめらかな住宅、ギザギザなリート。
住宅価格は2022年6月が直近ピークで、7月、8月と急速に下落してきています。
高止まりする住宅ローン金利や景気動向をなどをみていると、おそらく住宅価格下落トレンドは当分続きそうであり、それはリートにとってもよくない状況ではあるといえそう。
おわりに
住宅価格が明確に下げてきたように感じたのでリートに絡めて記事にしてみました。
住宅価格を確認することが米国リート動向を判断するうえで、価値があるのかどうか
と書いていましたが、個人的にはある程度価値がありそうだと感じます。
ちなみに今のIYRの利回り(過去1年の分配金から算出)は約3.4%。
今の米10年国債利回りは約4.0%。
国債利回りよりリート利回りが低い状態がまだ続いており、この意味でも米国リートには個人的にはネガティブ。
今後住宅バブル崩壊期のような壮大なリートの暴落がみられるのかは不明ですが、気になる状況。