1国の市場全体の時価総額を名目GDPで割った数値を算出し、その数値が高ければ株価は割高、低ければ割安とみなす指標、バフェット指標。
日本のバフェット指標を観察。
バフェット指標の二つの弱点
この指標を過大評価しないために明確な弱点を2点指摘。
①ある国の上場企業の海外事業からの収益は、その国の名目GDPとさほど関連しないのでは?
例えば日本の企業群が米国など海外で大きな収益を上げ、結果時価総額が大きく伸びたとしても、日本国内の名目GDP自体と密接には関連しないと思われ、この場合、日本のバフェット指標は過大な数値となってしまう可能性が高い。
世界全体の時価総額を世界全体の名目GDPで割って世界全体のバフェット指標を算出する
ならば、この問題は軽減できるか。
②ある国のGDP向上に貢献している企業は必ずしも上場企業だけではない
株式上場していなくても有力な企業は存在するため、有力企業が上場している、していない、という条件でその国のバフェット指標は大きく変化してしまう可能性が高い。
極端な例でいえば、サウジアラビアのバフェット指標はサウジアラムコが上場する、しない、で数値が全く変わってしまうため、この場合、サウジアラビアの株価の割安、割高はサウジアラムコが上場する、しない、という条件にほぼ依存する、という結論になり、信頼性は低くなる。
こういった弱点を考慮したうえでこの指標は用いられるべきか。
日本のバフェット指標
※出所:以下サイトデータより管理者作成 日本取引所グループ 世界経済のネタ帳
※期間:1985年1月末~2023年7月末
オレンジは10年移動平均。
1989年末の日本のバブル時期には「1.42」倍を超え、長らくそれがピークでした。
しかし暫定ながら2023年6月末には「1.44」倍となり過去最高を更新。
7月末は「1.46」倍。
10年移動平均は7月末で「1.13」倍程度で、移動平均から3割近くも高い水準であり、この視点からは今は割高感がありそう。
移動平均からの乖離率を観察
1994年12月以降の10年移動平均からの乖離率を観察。
例えば、2023年7月末だとバフェット指標が「1.46」倍。
10年移動平均は「1.13」倍なので、移動平均からの乖離率は「+28.8」%。
2009年2月末だとバフェット指標が「0.51」倍。
10年移動平均は「0.73」倍だったので、移動平均からの乖離率は「-30.6」%。
こんな感じで1994年12月以降の10年移動平均からの乖離率をグラフ化。
※出所:以下サイトデータより管理者作成 日本取引所グループ 世界経済のネタ帳
※期間:1994年12月末~2023年7月末
2013年2月まではマイナスの時期が多く、2013年3月以降はずっとプラス圏。
<10年移動平均からマイナスの時期>
マイナスの時期は1990年代の日本のバブル崩壊後、ITバブル後、サブプライムバブル後の不況、欧州債務危機などの時期。
<10年移動平均からプラスの時期>
プラスの時期はITバブル、サブプライムバブル、アベノミクス以降の金融緩和・円安政策の時期。
この見方を妄信するなら、
バフェット指標が10年移動平均から-20%以上低い時期に日本株を買っておき、放置する
という戦略がうまくいったようにみえますが、2013年以降10年間一度も「買いのチャンス」がやってきていない、というちょっと偏った戦略。
おわりに
先の展開は不明、指標の妄信は危険
というのが経験則。
かといって指標の全無視も偏りすぎかとも思うので、
5年や10年の移動平均からの乖離なら、それなりの目安になることもあるかも
というのが個人的なこの指標に対するスタンス。
今後
☆日本の物価上昇が収まらず、政権支持率を浮揚できず、金融緩和政策が継続できず、株安となり、久々に10年移動平均以下になるような大きな株価下落が来るのか
☆引き続き政府債務を目減りさせたい意向もあって、円安インフレ政策が継続し、円安株高が続き、2013年以降のプラス圏を維持し続けるのか
☆米国不況などの外的要因に振り回されるのか
先のことは不明ながら、興味深い状況。