トランプ大統領はディール(取引)を好むという世評があります。
貿易摩擦はディール?
現トランプ政権がしかける中国との貿易摩擦は
中国と有利に交渉するための単なる取引の一環の一部に過ぎない
という解釈があります。
この解釈だと
●交渉がうまくいけば貿易摩擦は解消し
●リスク要因が減じて株式市場にとって大きなポジティブ要因になり得る?
と解釈できなくもない。
★トランプ大統領が中国との貿易合意の草案作成を要請 - Bloomberg
貿易摩擦は今後の「米国の中国に対する長期的なスタンス」の象徴?
一方、2018年10月4日、ペンス副大統領が保守系シンクタンク、ハドソン研究所で披露した演説が話題になっています。
演説について端的にまとめられていたので、上記サイト記事より引用させていただきます。
力を行使しないオバマを軽視し、国外で権益を広げ、国内ではイスラム教徒を中心に弾圧を強化するなど、やりたい放題だった中国への宣戦布告とも言える内容で、異質な価値観で既存秩序に挑戦する独裁中国に真正面から対峙しようとする政権の姿勢を明らかにしました。
・ペンス氏の演説はある意味中国への「宣戦布告」とも解釈できなくもない内容で
・米国は中国に大してオバマ政権時代のような態度をとらず、中国が米国の主張を受け入れるまで、対峙を続けるというメッセージを現政権高官が発した
それはつまり
米中の貿易摩擦が短期的なディールの一材料ではなく、今後も長期的に続く米中の争いの一端に過ぎない
という解釈につながり、株式市場にとっては
長期的なネガティブ要因
になり得ます。
米中貿易摩擦を
★トランプ氏の一時的なディールに過ぎない
★米中の長期化する可能性のある争いの一貫
のどちらで捉えるべきか、現時点でわたしには分かりません。
できればどっちに転んでも大丈夫な投資ポジションを準備しておきたいところ。
中国のGDPは米国を抜くか?
ところで、
将来中国のGDPは米国を抜く?
とする予測があります。
2050年には中国のGDPは米国の1.3~1.7倍程度になっているのでは?
という予測。
※出所:「2050年の世界」 英『エコノミスト』編集部(著)文藝春秋
ここで1980年以降の中国の名目GDP(ドル建て)の推移を確認してみます。
★中国の名目GDP(米国GDP比。1980年以降)
※出所:World Economic Outlook Databasesより作成
1980~1995年頃までは中国のGDPは米国の10%以下、10分の1以下でした。
2004年頃に15%を超え、そこから劇的に増大し、2018年は米国の65%程度まで迫っています。
米国をあっさり抜いてしまうのか?
一方、EUなどを除いて、近年一国で米国の5割以上に迫った国があり、それは日本です。
日本も含めてみてみます。
★中国・日本の名目GDP(米国GDP比。1980年以降)
※出所:World Economic Outlook Databasesより作成
米国の55%以上のGDPだった時期を囲っています。
為替レートの影響も大きい(1995年頃円高だった)ですが、日本は1995年頃に米国の7割程度まで迫り(かつて日本が世界一の経済大国になる、という予測もあったそうです)その後比率は低下傾向。
現在は25%、米国の4分の1程度です。
一方中国は2012年以降米国の5割以上をキープし、2018年の予測値では65%まで迫ろうというところですが、今後、貿易摩擦に象徴されるような様々な圧力が加わり、今までのようには経済発展できないかも?
そうすると
「急速な高齢化が進みつつあり人口動態的に苦しく」「一人当たり名目GDPが世界平均に近づき、中進国の罠に陥りやすくなっている」中国の伸びは一気にスローダウンし、意外にも、米国に届かない?
という仮説を出せなくもない気がします。
ただ、日本と中国は国も状況も異なり、時代も異なり、先のことは全く分かりません。
「ペンス演説≒長期的な米国の国策」ではなく、政権が交替すれば米国の態度もまた変化するのかもしれず、何ともいえませんが気にはなるところ。
おわりに
米中、2大強国の今後は世界の政治経済に影響が甚大と思われます。
もしかしたら2018年は時代の転換点(米国の中国政策が明確に変化した年)であるかもしれず、個人的には世界景気の動向に注視しつつ今後の米中関係の
「楽観シナリオ」(何事もなかったように両者が矛を収める)
とともに
「悲観シナリオ」(争いが長期化)
にも対応できるようにしたい・・・結局はロングショート継続?
というところ。
杞憂ならいいんですが、一抹の不安はありますね。
※中国と米国の歴史的な関係とペンス演説を絡めた下記ブログ記事もとても勉強になります。
※日経の記事
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