米国個人の利払い費から景気動向を推測する記事。
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米国個人の利払い費の長期推移
米国の個人の利払い費(米国個人の住宅ローンなどの負債から生じる利払い費の総額。月ごとのデータ。以下、利払い費)の長期推移です。
グレーは景気後退期。
※出所:Personal interest payments (B069RC1) | FRED | St. Louis Fedより作成 ※期間:1959.1~2019.8
ここ5回の景気後退期のうち4回で、景気後退期の前後、利払い費は減少・停滞傾向にあることが観察できます。
①景気悪化⇒個人が住宅ローンや自動車ローンなどで債務を増やすことを控える、あるいは債務を返済する動きが加速する
②景気悪化⇒利下げ、金利が低下
などの要因で景気後退期の前後に利払い費が減る、または増えにくくなる?と推測。
※出所:Personal interest payments (B069RC1) | FRED | St. Louis Fedより作成 ※期間:1959.1~2019.8
前年同月比でみる利払い費の長期推移
※出所:Personal interest payments (B069RC1) | FRED | St. Louis Fedより作成 ※期間:1960.1~2019.8
上記は利払い費の前年同月比の長期推移。
単位は%。
プラスは前年より利払い費が増加。
マイナスの時期は前年割れ。
+14%なら前年同月より14%利払い費が多かったことになります。
必ずではないですが、景気後退期から次の景気後退期までに概ね前年比+10%を超えるピーク期が2回訪れやすいことが確認できます。
※出所:Personal interest payments (B069RC1) | FRED | St. Louis Fedより作成 ※期間:1960.1~2019.8
1度目のピークを青、2度目を赤で囲っています。
なぜ2回のピークを経て景気後退を迎える傾向があるのか?
あくまでわたしの仮説です。
★1度目のピーク
景気後退後の反動からくる急速な景気回復を背景に、個人が債務を増やし、金利も大幅に上昇するため前年比で大きなプラスとなる
★1度目のピーク後にみられる利払い費増加傾向の息切れ、鈍化
急速な景気回復がいったん落ち着くと、利払い費の増加率もいったん落ち着く
★2度目のピーク
いったん落ち着いていた景気拡大が再び加速。
長期的な景気拡大を背景に世の中は徐々に楽観モードへ。
金回りは総じてよくなり、個人のリスク許容度は再度上昇し負債は増大。
景気の過熱から利上げも実施され金利も上昇。
結果、利払い費の増加率は2度目のピークを迎える。
★2度目のピーク後にみられる景気後退
信用拡大というテコも利用して実現された景気の絶頂期は長続きはせず、景気拡大ペースの鈍化から膨らんだレバレッジの縮小過程へ。利下げなども実施され金利は低下傾向となることも手伝って個人の利払い費は再度縮小、景気後退の一因となるか。
現在はどうか?
※出所:Personal interest payments (B069RC1) | FRED | St. Louis Fedより作成 ※期間:1959.1~2019.10
2019年10月までの利払い費の長期推移。
直近では2019年6月がピークで7~9月は減少。
10月は反転しやや増加しています。
※この指標はデータ修正の度合いが大きい印象。来月ガラッと変化している可能性も
※出所:Personal interest payments (B069RC1) | FRED | St. Louis Fedより作成 ※期間:1960.1~2019.10
前年比でみた最新のグラフです。
2009年以降の景気拡大期における利払い費は
★2015年頃に1度目の増加率のピーク
★2018年10月に2度目の増加率のピーク
を迎えているようにみえます。
<利払い費の前年同月比:ここ5年>
※出所:Personal interest payments (B069RC1) | FRED | St. Louis Fedより作成 ※期間:2014.10~2019.10
2018年10月(直近ピーク):+14.5%
2019年10月(最新データ):+3.8%
と増加率は明確な低下トレンド。
利払い費の過去の経験則からは、今後このまま前年割れしていくようなら、かなりネガティブな印象を受ける指標とはなります。
0%には至らず、この辺で持ち直せばチャイナショック程度の低下となります。
実際はどうなりますか。
個人的にはこの指標は無視はせず、妄信はせず、一応用心(ヘッジを外さない)。
<2回目のピークからの急速な低下時期:四角の時期>
おわりに
利払い費(前年比)のグラフだけをみていると景気後退まっしぐらのようにも見えますが、あくまで一つの指標。
9月以降のFRBの隠れQEや世界的な金融緩和が力技で「今回は違う」状況(ここからじわじわ持ち直す、みたいな)を作り出し、延長戦?が続くかもしれません。
前年割れまで行くのかどうか、役に立つか立たないかは不明ですが、とりあえず気にはなる指標。
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