「株式信用取引の是非」についてさまざまな意見があるようなので、個人的な見解を書いてみる記事。
今回はわたしが感じる信用取引の3つの<利便性>について。
<利便性>①:比較的簡単に借金ができる
例えば野村証券のオンライン専用支店、野村ネット&コール口座では信用取引買い方金利(年利)が0.5%です。
信用取引開設の審査さえ通れば、
☆現金や現物株式などを担保に
☆担保の3.3倍程度の金額の株式を
☆年利0.5%という低利で借金して
買うことができます。
一般に信用力が低いとみなされがちな無職でも個人事業主でも、銀行や信用金庫で借金する際の手続きや審査の煩雑さに比べると、驚くような簡単さで借金ができてしまいます。
本人が思っているだけでなく、実際に
「期待値がプラスの投資手法」
(取引を一定期間数多く繰り返せば利益が出る投資手法)
を実行できる人にとっては、借金が低利で比較的簡単にできることは、非常に大きなメリットです。
一方で
「期待値がマイナスの投資手法」
(取引を一定期間数多く繰り返せば損失が出る投資手法)
しかできない投資家にとっては、信用取引は現物取引に比べ手数料が増え、お金が減るスピードを加速してしまう最悪なシステムでしかありません。
<利便性>②:市場リスクを軽減できる可能性
何らかの理由(ファンダメンタル、テクニカル、今後の需給動向など)で、ある銘柄を買いたくなったとします。
例えば三菱地所(以下:三菱)を買いたくなったします。
しかし、市場には市場リスクがあり、三菱にどれだけ魅力的な条件がそろっていても、大震災や戦争、テロ、金融危機、政変の発生等、不測の事態でわたしが買った三菱の株価は、三菱固有の要因ではなく、市場全体のネガティブな動きに引きずられ、みるも無残な暴落チャートを描くかもしれません。
そんなとき、信用取引で、例えば三井不動産(以下:三井)の空売りポジションも持っておくという手法もあります。
わたしが「三菱ほど三井を高く評価していない」という条件はつきますが、
☆三菱を1000万買って、同時に三井を300~1000万程売る
というポジションを作れば、
☆三菱を1000万買うだけ
という素っ裸のポジションよりもネガティブな市場リスクに対して格段に強い状態となります。
もちろん市場全体が上げ相場の場合や想定外の三井の上昇でネガティブな結果となる可能性を引き受ける必要がありますが、理屈の上では、
信用取引により裸ロングより防御力の高いポジションを作りやすくなる
とはいえます。
逆に三菱を売りたくなったとき、裸ショートで三菱を売るより三井のロングをいくらか組み合わせることで、市場全体が急騰したときのリスクを軽減できる可能があります。
予測不能な市場リスクに対するポジションの防御力を向上させ得ること
それが信用取引の利便性の一つだと思います。
※三菱地所、三井不動産のペアは例えであり、実際にロングショートしやすい銘柄かどうかは不明です
<利便性>③:「売り」から入れる
<利便性>②でも触れていますが、信用取引の利便性の一つは個別銘柄の株価が下がることで利益が出る取引ができることだと思います。
多くの銘柄の分析を進めていくと、
買いたい銘柄だけでなく売りたい銘柄も発見することになる
というのはあまり一般的ではないかもしれませんが、わたしの中ではごく自然です。
A、B、Cという3つの銘柄があり、わたしの評価が高い順に「A⇒B⇒C」であったなら、銘柄Aを買って(ロング)、銘柄Cを売る(ショート)ロングショートポジションを作りたくなるのも、わたしの中ではごく自然であり
銘柄分析はそのためにやるんじゃないの?
と思っていますが、下手にこの手の意見をいうと変人扱いされます。
ただ、
今後、ある銘柄が上がるか
だけでなく
今後、ある銘柄が下がるか
さらに
今後、ある銘柄とある銘柄のどちらがより上がるか(下がるか)
という視点もあった方が、市場全体が長い下落相場となった場合などは特に、収益機会は増える可能性があると思います。
競馬で例えれば
どの馬が一着になるか
だけでなく
どの馬が最下位になるか
さらに
DとEの馬、どっちの馬が早いか遅いか
といった賭け方の選択肢が増えるという感覚。
個人的には選択肢は多い方がありがたい。
おわりに
わたしが投資を始めたのは2005年頃。
2008~2012年くらいの日本株は総じて悲惨な状況で、わたしは主に日本株を取引していたので、投資に関してこういった「市場リスクを嫌う」ねじ曲がった見識を持つように至ったのかもしれません。
ひねくれ、あまのじゃくの血が入ったわたしのような人の一部には売りから入れる信用取引は合うかもしれませんが、投資するしないも自由、信用取引するしないも自由、
自分に性分に合った期待値がプラスだと自分が信じていられる投資のやり方
を各人が身につけ、好きなように投資をすればいいと感じる次第。
※投資や信用取引を勧める意図は全くありません。投資は自己責任で