為替レートの水準を推し量る一つの視点「実質実効為替レート」で円の水準を推測。
実質実効為替レートを確認するメリット
名目レートだけでなく「インフレ変動」や「貿易額」で調整を施した為替レート(=実質実効為替レート)も知っておくことで、現在の為替レートの水準を知る手掛かりになる、かも
実質実効為替レートとは
2026.25現在「1ドル=159円程度」の円のレートは「名目レート」。
実質実効為替レートの「実質」は
「実質」→「インフレ変動(物価変動)で調整した」
の意味。
また、実質実効為替レートの
「実効」→「貿易額などに応じて加重平均して算出した」
の意味。
実質実効為替レートは単純な名目レートではなく、
各国のインフレ変動や貿易額に応じた調整を施した為替レート
のことで、一般的な名目レートでは把握しにくい
通貨の「実力」を推し量る指標
とする人もいます。
※参照
●コトバンク:実質実効為替レート(ジッシツジッコウカワセレート)とは
●金融情報サイト:実効為替レート
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円の実質実効為替レートの推移(5年移動平均を併記)
※出所:主要時系列統計データ表より作成
※グラフ期間:1980.1月~2024.5月
1980年以降の推移です。
ざっと
1980年「100」
⇒1995年「190」程度(超円高)
⇒2024年「70」程度(円安?)
という推移。
円の実質実効為替レートと5年移動平均
※出所:主要時系列統計データ表より作成
※グラフ期間:1980.1月~2024.5月
1980年からの円の実質実効為替レートとその5年移動平均。
円安、円高の判断の一手段として5年移動平均からの乖離率を観察する方法があり、本記事では
☆移動平均より今のレートが小さい⇒円安?
☆移動平均より今のレートが大きい⇒円高?
と判断。
ざっくりいえば、オレンジで〇をした時期が円安。
青で〇をした時期が円高、と判断。
この見方で行くと、今は円安。
次に5年移動平均から上下どちらに何%ずれているか、「5年移動平均からの乖離率」と「ドル円レート」を併せて観察。
「円の実質実効為替レート・5年移動平均からの乖離率」と「ドル円」
※出所:主要時系列統計データ表、USD JPY 過去データ - Investing.comより作成
※グラフ期間:1984.12月~2024.5月
赤:「円の実質実効為替レート・5年移動平均からの乖離率(%)」
青:「ドル円」
です。
1984.12~2024.5まで全期間の両者の相関係数は「-0.03」で相関なし。
ただ、2000.1~2024.5までの相関係数は「-0.64」で逆相関あり。
2000年以降では
☆5年移動平均からの乖離率が下がる⇔ドル円が上がる(円安)
☆5年移動平均からの乖離率が上昇する⇔ドル円が下がる(円高)
という傾向あり。
今は円安か?
※出所:主要時系列統計データ表、USD JPY 過去データ - Investing.comより作成
※グラフ期間:1984.12月~2024.5月
円の実質実効為替レートが5年移動平均から大きく下がった時期とその時期のドル円を確認。
1990年(-15%)を除いては概ね-25~20%程度で円安にいったん歯止めがかかっています(最もマイナス乖離したのは2014.12の「-24.6%」)。
記憶に新しいところでは2022.10月に「-21.3%」で、ドル円「152円」程度まで円安が進行。
最新値2024.5月の乖離率は「-20.7%」。
6.27の今は5月よりさらに円安が進んでいそうなので、この視点では
ほぼ限界水準まで円安が進行している?
という推測も可能か。
ドル円「160~165円」程度で介入が入りやすそうな感触。
おわりに
2024年の円安ピーク値(概算値)
・ドル円:161円
・ユーロ円:172円
・豪ドル円:107円
2007~2008年の円安ピーク値(概算値)
・ドル円:124円
・ユーロ円:170円
・豪ドル円:108円
ユーロや豪ドルは当時と同程度ですが、今はドルが強そう。
2007~2008年の
☆米ドル指数:「70~80」台 今は「106」
☆米ドルの実質実効為替レート:「80~90台」 2024年5月は「110」
であり、円安であると同時に、現在は2001~2002年以来の
米ドルがやたら強い時期
という認識を持っていてもいいのかも。
<米ドル指数>
※出所:米ドル指数先物 - Investing.com 日本より作成
<米ドルの実質実効為替レート>
※出所:Real Broad Effective Exchange Rate for United States (RBUSBIS) | FRED | St. Louis Fedより作成
※参考記事