(登山家への質問)
なぜ山に登るのですか?
—そこに山があるからさ
(投資家への質問)
なぜ今、株式を買うのですか?
—今が不景気だからさ
不景気な時期は株式が「割安」ではないか?
そんなメッセージを届けてくれる指標、
OECD景気先行指数(Composite leading indicator。以下CLI)
の紹介です。
CLIとは
以下、株初心者のための株式投資と相場分析方法からの引用です。
OECD景気先行指数(CLI)とは
OECD景気先行指数(CLI:Composite Leading Indicators)とは、OECD(経済協力開発機構)が景気循環の転換点を早期に見極めるために1970年代から算出を開始した指数で、鉱工業在庫率、輸入輸出比率、住宅着工戸数、株価指数など、経済活動の変化を示す統計を基に算出される指数のことです(使われる統計は国ごとに異なる)。
OECD景気先行指数(CLI)の見方
OECD景気先行指数(CLI)は、景気の転換点の6~9カ月先行するように作成されていますので、景気の先行きを予想する指数として注目されます。
OECD景気先行指数(CLI)は、その数値が、
・100より低ければ景気の悪化
・100より高ければ景気の拡大を示します。
上記をまとめ、補足すると、CLIは
○OECDが算出している景気動向を判断する指標
○100が基準値
○100より低い⇒景気は悪い
○100より高い⇒景気はよい
○CLIが下降している⇒景気の減速
○CLIが上昇している⇒景気の加速
を意味します。
※CLIの数値は絶対値でなく、データを抽出する期間で変動します。
※OECDについては、以下サイトを参照ください。
どのCLIを見るべきか
CLIには、OECD各国のCLI、OECD全体のCLI、ヨーロッパ地域、その他、中国、インドのCLIなど様々なバージョンがあります。
必要に応じて、確認すればよいのですが、わたしが最も有用と感じるのは、
OECD全体のCLI
です。
その理由はOECD全体の経済規模は
全世界の実質GDPの約7割
名目GDPの約6割
を占めるため、概ね全世界の景気動向を反映しやすいと考えられることです。
※グローバルノートの2015年のデータより
以下、本記事ではこのOECD全体のCLIを見ていくので、
CLI=OECD全体のCLI
の意味で表記していきます。
CLIの推移
※出所:OECD DATE
上記グラフは1995年1月~2017年2月のCLIの推移を示しています。
世界的に株式が割安だった2002~2003年、2009年ごろに、CLIは「99」を下回り、世界的に景気が悪かったことが読み取れます。
また2000年ごろのITバブル、2006~2007年頃のサブプライムバブルの時期にCLIは「101」を上回り、世界的に景気がよかったことが読み取れます。
CLIの使い方
※出所:OECD DATE のグラフを管理者編集
あくまで、わたしの個人的な使い方ですが、
●CLI:101以上
⇒めったにない世界的な好景気
⇒株式は割高⇒株式を売るチャンス
●CLI:99以下
⇒めったにない世界的な不況
⇒株式は割安⇒株式を買うチャンス
と判断します。
※CLIの数値は絶対値でなく、データをみる期間で変化するので、101、99はあくまでこの期間に限った参考値です。
また、CLIが上昇しているか、下降しているか、も重要な情報です。
●100以下の水準でも、景気の底からCLIが上昇してきている
⇒株式の先行きにはプラス要因
●100以上の水準でもCLIが景気のピークから下降してきている
⇒株式の先行きにはマイナス要因
と判断します。
要するに、
●現在の水準(今、好景気か?不景気か?)
●トレンド(今後、CLIが上昇していきそうか?下降していきそうか?)
の2点を確認することで、CLIは
●現在の株式の割安割高水準
●世界の景気動向、その先にある株式の動向
を判断する有力な手がかりになると思われます。
近年のCLIとS&P500、世界の時価総額の推移
※出所:OECD DATE ヤフーファイナンス WFE のデータより管理者作成
上記3つのグラフは1995年1月末~2017年2月末のCLI、S&P500、全世界の時価総額の推移を示しています。
明瞭な好景気で米国の株価は上昇、世界の市場規模は拡大しています。
明瞭は不景気で米国の株価は下落し、世界の市場規模は縮小していることがうかがえます。
なぜ景気が悪いと株価は下がり株式は割安になりやすく、景気がいいと株価は上がり株式は割高傾向になりやすいのか
株価の主要な決定要因は企業利益です。
※より正確には「一株当たり純利益と金利」が主要な決定要因のようです
実体経済の景気がいいと、企業利益は総じて増加します。
したがって、株価は上がりやすくなります。
また、投資は将来の収益を期待して行う行為です。
実体経済の景気がよければ、総じて未来に楽観的な時代の雰囲気が醸成されます。
したがって、将来への期待から株式投資が行われやすく、株価は上がり、ときに割高な水準まで押し上げられると考えられます。
実体経済の景気が悪いと、全ては逆です。
企業利益は減少傾向で株価は下がりやすくなる上に、リストラ、ボーナスカット、将来への不安でいっぱいの時代、株・投資どころではありません。
株式は売られやすく、ときに割安な水準まで株式は売り込まれると考えられます。
このように考えると、長期投資は多くの人が総じて未来に期待してないときに、想像力を膨らませ、自分の判断を信じ、未来に期待し、未来に賭けることができる人が、人より多くの利益を得るゲーム、といういい方もできなくはないと思われます。
景気がよく、株価が高くなってきて、みんなが買ってるから自分も「安心」して買う、というのは、断定はできませんが、長期投資としては、かなりリスキーだと思います。
そして、人より多くなくてもほどほどの平均的な利益でいい、というのなら、愚直なインデックス投資は、長期的に継続できれば、報われる可能性が比較的高く、実績のある投資手法だと思われます。
CLIの問題点
株式の割安割高を探るうえで優れた指標となるCLIですが、データの即時性に欠けます。
概ね2ヶ月おくれのデータになります。
現時点での最新データは2017.2月のデータです。
長期投資ならそれほど問題ありませんが、短期投資の方には役立たない指標かもしれません。
CLIが確認できるサイト
など。
おわりに
最後に再び
(投資家への質問)
なぜ今、株式を買うのですか?
—今が不景気だからさ
冗談のような答えですが、わたしはけっこう長期投資の真実をついていると思います。
本ブログでは継続的にCLIの動向を追跡していく予定です。