市場は実体経済を映す鏡に過ぎない
という言葉があります。
この言葉が正しければ、市場に関わる投資家は市場の動きだけでなく実体経済も見ていないと、市場で何が起こっているのか、うまく理解できないことになります。
鏡に映った映像はしょせん投影物であり、実体ではない、投影物ばかり追っていても真実には近づけない、という理屈です。
実際そうなのか、どの程度実体経済の観察や分析が長期投資や資産運用に影響してくるのか、はっきりしたことはわたしにはわかりません。
※中にはチャート分析だけで稼げてしまう人もいるでしょうから
少なくともいえるのは、全く実体経済のことがわからないで投資をするより、少しでも知っている方が、どちらかといえばいいのかもしれない、特に長期投資に関しては、実体経済の動向は、重要度が比較的高いかもしれません。
わたしもそれほど詳しいわけではなく、わたしの学習も兼ねて米国実体経済の有力な指標となる米国GDP(国内総生産)を取り上げます。
米国GDPを把握するメリット
米国GDPを知ることが何に役立つのか、2点ほど挙げてみます。
①世界経済・金融の中心地である米国の実体経済の動向を知ることは、世界経済の動向を探る上で役立つ可能性が高い
②長期投資のタイミングを決断したり、投資方針を定める手がかりになる可能性がある
米国GDPの最新データを知るには
まず上記サイトに行きます。
トップページの赤枠で囲ったリンクをクリックすると、下記のようなExcelの画面に移りますので、最近の情報がある一番下まで進みます。
すると上記の「2017q1」の欄があります。
緑枠で囲った数値が2017年第1四半期(2017.1~3月)の実質GDPの値、約16.9兆ドルです。
その横の「19027.6」は名目GDPの値で、2017q1で米国の名目GDPが約19兆ドルであることを示しています。
このようにこのサイトで最新の四半期ごとの米国のGDPが簡単に確認できます。
beaのサイトが優れている点
当サイトの情報が優れている点は二つあります。
まず、時系列で四半期ごとのデータが確認できるため、
2016年の第1四半期~2017年の第1四半期の成長率はどうだったか?
というように、自由に期間を設定してGDP成長率を知ることができます。
二つ目は、四半期ごとの最新データの実数を知ることができます。
「年率換算で〇%の成長」「前期から〇%の成長」というニュースはよく見ますが、
じゃあ、一体今のGDPの実数はいくつなのか?
と思って探しても、意外に見つからないので(わたしの探し方が悪かったかもしれませんが)、このサイトが重宝しています。
GDPデータの使い方
あくまでわたしの個人的で経験則に基づいた使い方ですが、米国実質GDPデータの使い方は以下の3つです。
①過去1年ごとの実質経済成長率を四半期に分けて把握する
②実体経済の危機を知り、株式市場の危機を探る
③実体経済の好景気を知り、株式市場に「参入するか」あるいは「とどまっていていいのか」を探る
※「正しい」使い方かどうかはわかりません
※以下のグラフ、データはすべてbeaのサイトのデータを基にしています
①過去1年ごとの実質経済成長率を四半期に分けて把握する
上記のグラフは1995年第1四半期~2017年第1四半期の1年ごとの実質GDP成長率を四半期ごとに追ってグラフにしたものです。
※例えば、2016.1q~2017.1qの1年間の成長率は「16525.0⇒16861.6」の変動なので、2.0%になります。順次、2015.4q~2016.4qは〇〇%、2015.3q~2016.3qは〇〇%と計算し、グラフ化したのが上記表です
四半期ごとに確認することで、データの即時性が上がります。
リアルタイムでなく約3ヵ月に一回の更新になりますが、データは無料ですし、ありがたいことです。よくある2015年は○○%、2016年は○○%という1年ごとのデータでは、即時性が乏し過ぎます。
また、3ヵ月の変動に過ぎない四半期データを年率換算して算出したデータをしばしば見かけますが、ぶれが大きすぎ、わたしはあまり重視していません。
②実体経済の危機を知り、株式市場の危機を探る
近年は2度のバブル崩壊期があります。
①2000~2002年頃のITバブル崩壊期
②2008~2009年頃のサブプライムバブル崩壊期
であり、市場が崩壊するだけでなく、実体経済も大きな減速期となっています。
①では一時ゼロ成長に近くなり、②では一時「-4%」という極端な不況に見舞われています。
ここからいえることは、一つの経験則として、①や②の時期のように、急速に経済成長率が下降する時期には、
現金比率を上げる
市場から一時去る
という対応をしてもいいのかもしれない、ということです。
単なる経験則ですが、「市場は実体経済を映す鏡に過ぎない」のなら、実体が壊れつつあれば、鏡に映る像(市場)も壊れるリスクが高いかもしれません。
③実体経済の好景気を知り、株式市場に「参入するか」あるいは「とどまっていていいのか」を探る
②とは逆に米国の実体経済が順調で不穏な動きが見えないなら、市場にとどまっていていい可能性は上がるように思えます。
例えば①の時期はITバブル前~ITバブル時期に当たるのですが、約2.5%以上の経済成長を長期的に実現できていた好景気の時代でした(5%の成長率って、今から思えばすごいです)。
そして、2000年春頃にバブルがはじけるのですが、それまでは経済成長率に不穏な動きは見えず、1999年いっぱいは粘って市場にできるだけ長くとどまっていた方がよかったのかもしれません(単なる結果論ですが)。
また、②や③の時期は、バブル崩壊過程が終了し、経済成長を取り戻す時期です。
バブル崩壊を経験するとなかなか株を買いにくくなりますが、②や③のような実体経済の力強い回復を確認できれば、長期投資を思い切って始める勇気をもらえるかもしれません。
つまり、「市場は実体経済を映す鏡に過ぎない」のなら、
実体経済が劇的に回復している以上、市場もきっと回復するはずだ
と考え、投資を始められるかもしれません。
現在はどうか
2015年は総じて経済成長率の低下が続き、1.5%程度まで下落、やや不穏な状況でしたが、2016年以降、小康を保っている状況と思われます。
直近の1年間の成長率は前述のように「2.0%」であり、悪い数字ではなく、ずるずると成長率が落ちている状況ではありません。かといって、すごくいいわけでもない、微妙な感じ、今後の動向次第でしょうか。
おわりに
以上、「市場は実体経済を映す鏡に過ぎない」を拠り所に米国GDPについて取り上げました。
それほど注目していなかったのですが、けっこういい指標かもしれません。
ブログを書いていると勉強にもなります。
ただ、一つの経験則に過ぎないので、よければ実体経済の動向を示唆する以下の指標もご参考ください。
<米国の景気動向の指標です>
<世界の景気動向の指標です>