ユキマツの「長期投資のタイミング」

「景気(企業利益動向)」「中銀の金融政策(金利動向)」「投資家のリスク許容度」などから長期投資のタイミングを探る投資ブログ

Jリートの値動きがさえない理由とJリートスプレッドの確認

f:id:yukimatu-tousi:20170809203259p:plain※出所:SBI証券(旧SBIイー・トレード証券)

上記グラフは2016.7月~2017.7月の東証Jリート指数とTOPIXの値動きを比較したものです。

この期間、TOPIXは20%以上の上昇、Jリートは10%以上の下落となっています。

比較的相関の強い両者の不自然な動きに頭を悩ませていたのが、7月13日頃のこと、記事にもしています↓

www.yukimatu-value.comいろいろな方が記事にもしておられ、「不自然さの理由」らしきものもあるようなので、理由らしきものとJリートスプレッドについて記事にしたいと思います。

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Jリートの値動きがさえない理由らしきもの

ブロガーの「もんきーぱぱ」さんは下記ブログの中で、Jリート下落の要因として、4つの点を指摘されています。

●ドル高への期待による下落

●金融機関(日銀除く)による売り

●毎月分配型投信の販売自粛

●金利上昇への不安

J-REIT下落の原因と今後の見通し(2017年第3四半期) - ほったらかし投資の達人

 

また、下記2017.5.26付けの日経新聞の記事では、特に「毎月分配型投信の販売自粛」について以下のような記載があります。引用します。

東証に上場するREIT、全58銘柄の時価総額は合計約11兆円。この約4分の1に相当する約2.5兆円を毎月分配型投信が保有している。

(中略)

顧客本位の業務運営「フィデューシャリー・デューティー(FD)」を金融機関に求める金融庁が、運用資産を払い戻してまで分配金をかさ上げする動きもあるとして毎月分配型投信を問題視。業界では「お上には逆らえない」として販売自粛が相次いでいる。 

この結果、国内REITに投資する毎月分配型投信からは資金が流出し始めている。日興リサーチセンターの調べによると、4月は1年1カ月ぶりの資金流出(232億円)となった。5月に入っても先週末19日までに推計で118億円流出したようだ。

www.nikkei.com

 

おそらく最近のJリート下落には様々な理由があるのでしょうが、Jリート時価総額の4分の1程度を占める「毎月分配型投信の販売自粛」の影響は大きいと思われます。

今後もこの投信が今までのように販売できず、資金流出が続けば、株高をよそに、Jリートはさえない動きを続ける可能性もあります。f:id:yukimatu-tousi:20170811101730j:plain

Jリートは割安か?

Jリートが割安な状態にあるのか、その判断の目安の一つとしてわたしはJリートスプレッドを確認しています。

Jリートスプレッドは

「Jリートの平均利回り-日本国債利回り(10年物)」

のことで、クレジットスプレッドと同じような発想で、「Jリートの利回り」と「長期国債の利回りの差」が

大きいほどJリートは割安

小さいほどJリートは割高

とみなす指標です。

※クレジットスプレッドについてはコチラ↓

www.yukimatu-value.com

※この指標はあまり一般的ではないかもしれないので、ご参考程度に。またJリートスプレッドという名称も一般的ではありません

 

下記グラフは2001~2017年のJリートと長期国債の利回りの推移を示したものです。

f:id:yukimatu-tousi:20170810224411p:plain

※出所:JAPAN-REIT.COM日本 10年 債券利回りのデータより管理者作成 ※国債の長期金利がマイナスの時期は「0%」で表示

次に同期間のJリートスプレッド、つまり【Jリートの平均利回り-日本国債10年物の利回り】の推移を確認してみます。

f:id:yukimatu-tousi:20170810224548p:plain※出所:JAPAN-REIT.COM日本 10年 債券利回りのデータより管理者作成

2001年からの長期平均は「3.2」です。

個人的には割安時期の経験的な目安を「5.0以上」としています。

2017.7月末の値は「3.9」であり、平均値「3.2」を上回り、比較的割安っぽいが、「5.0」にはまだ届かない「少し~まあまあ割安?」という値です。

 

Jリートスプレッドが大きい理由らしきもの

前述したように、TOPIXとJリート指数は比較的相関が高く、TOPIXは割安ではなさそうな状態ですが、Jリートには少し割安感があります。

その理由を考えてみると、前述したような理由でJリートが安くなっていることに加え、

日銀の量的緩和政策で長期金利が低く抑えられていること

が、Jリートスプレッド=【Jリートの平均利回り-日本国債10年物の利回り】の値を大きくしている要因のような気がします。

 

つまり、このスプレッドの大きさは日銀(⇒量的緩和)、金融庁(⇒フィデューシャリー・デューティー)の動向、意向に大きな影響を受けている可能性があるややイレギュラーな状態でもあると推測できます。

Jリートは買いか?

では比較的割高っぽい日本株に比べて、少し割安っぽいJリートは「買い」なのか?

 

個人的には「見送り」です。

その理由

①もっと割安な時期、スプレッドが「5.0」程度の時期に買いたい

②Jリートの時価総額、約11兆円のうち約4分の1に相当する約2.5兆円を毎月分配型投信が保有していて、この投信からの資金流出懸念が続くなら、Jリート指数が上がってもいい時期でも、なかなか上がれない可能性があり、長期投資として買う気になれない。

日本の全株式市場の時価総額は現在約620兆円程度ですが、もし620兆のうち140兆円程度を毎月分配型投信が保有していて、この投信から資金流出が続く、あるいは続く可能性がある、と聞けば、やはり日本株を長期保有する気にはならない、ような気がします(その流出額にもよりますが)。

約4分の1の存在は大きいかなあ、と感じます。

今後もときどきJリートスプレッドについて記事にしていく予定です。

 

関連記事です。米国のクレジットスプレッドの具体例。二つです

www.yukimatu-value.com

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