時代や国を問わず、説得力を持ちつづけそうな言葉を拾ってまとめていくシリーズ「時空をこえたメッセージ」の9回目です。
今回はバーゲンハンターとして有名なジョン・M・テンプルトン卿からのメッセージです。
ジョン・M・テンプルトン卿とは?
マネー誌が「20世紀最高のストックピッカー(銘柄選択者)」と称えた伝説的なファンドマネジャーのジョン・テンプルトン卿は、世界一流のバリュー投資家として尊敬され、グローバル投資を創始し、50年にわたって市場平均をアウトパフォームしたことで広く知られている。
※引用元:Pan; テンプルトン卿の流儀――伝説的バーゲンハンターの市場攻略戦略
ジョン・M・テンプルトン卿はファンドマネージャーだったようです。
生まれは1912年、亡くなったのは2008年7月、リーマンショックの少し前のことだったようです。
わたしはテンプルトン卿の投資成績の具体的なデータは知りません。
また、上記引用文の「市場平均」がどの市場平均かは知りませんが、
ファンドマネージャーとして、長期にわたって優秀な成績をあげ続けた人物
のようです。
いわば、投資のプロです。
わたしのような素人がその手法を取り入れる、参考にするかは抜きにして、どんな考え、哲学、信念で本物のプロが市場と対峙していたのか、興味は惹かれます。
ここでは『テンプルトン卿の流儀』に記されている2007年9月、94歳の頃のテンプルトン卿の言葉を3つ拾ってみます。
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メッセージ①
日常生活のほぼあらゆる活動において、人は見通しが最も明るいところを目指す。将来有望な業界に職を求めるし、見通しが最良の地域に工場を建設しようとする。だが、上場された投資対象を選ぶ場合にはその反対を実行しなければならないと私は主張する。
※引用元:『テンプルトン卿の流儀』ローレン・C・テンプルトン、スコット・フィリップス<著> 鈴木敏昭<訳> パンローリング株式会社 2010
上記の言葉は、見通しが暗いところを目指して投資対象を物色すべきだ、という主張のようです。
明るいところを目指すな、見通しが暗いところを探れ、と。
おそらく人は放っておくと見通しの明るいところに自然と惹きつけられます。
投資のような、見えない未来に大事なお金を託すような行為においては、不安だし、怖いし、できるだけ大勢と同調している方が心が楽なので、特に、見通しが明るいところを目指す傾向が強くなると思われます。
テンプルトン卿は、
投資では、それは避けた方がよい
と考えていたようです。
メッセージ②
将来の強力な収益力を割安な価格で買えたときは常に良い投資と言える。それを実現する方法は他人が売っているときに買う以外にない。
※引用元:『テンプルトン卿の流儀』ローレン・C・テンプルトン、スコット・フィリップス<著> 鈴木敏昭<訳> パンローリング株式会社 2010
・テンプルトン卿にとっての良い投資
⇒収益力の高い銘柄を割安に買うこと
・その方法
⇒他人がひたすら売っているときに買う
だったようです。
メッセージ③
強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観とともに成熟し、陶酔のなかで消えてゆく。悲観の極みは最高の買い時であり、楽観の極みは最高の売り時である。
※引用元:『テンプルトン卿の流儀』ローレン・C・テンプルトン、スコット・フィリップス<著> 鈴木敏昭<訳> パンローリング株式会社 2010
有名なフレーズです。
ただ、いつが悲観や楽観の極みなのか、凡人にはそれがわからない・・・
まとめ
3つ挙げましたが、この3つをまとめると
多くの投資家が過剰に売っているとき、過剰に悲観しているときに、将来の収益力の高い銘柄を割安に買う、そして、それをできるだけ楽観的な市場で売る
齢94のプロからのメッセージです。
やっぱり普通ではないし、一般的ではないと思います。
過去のチャートを見ていれば、ここで買って、ここで売って、ということが簡単にわかりますが、実践ではそう理屈通りに
「安いから、買う」「高いから、売る」
行為を実行できるわけではありません。
しかし、同様の発言をしている人も見つかります。
「好景気、楽観時代は思い切った勤倹貯蓄」(すなわち金を重しとする)、
「不景気、悲観時代には思い切った投資」(すなわち物を重しとする)
(中略)
要するに利殖の根本をなすものは、「物と金」の適時交替の繰り返し
※出所:『私の財産告白』本多清六著 2005年 実業之日本社
※ここでの「金」はゴールドでなく現金。「物」は株式や土地などの実物資産。
世間が「米国金融危機」「米国凋落」「世界株式崩壊」と騒いでいる今こそ(2008年10月現在)、株式やREIT投資の千載一遇のチャンスだという「黄金の波」を見ることができるかどうか、そう思った時に投資する余力があるかどうか、これが長期の資産形成で成功と失敗を分かつポイントになるのだ
※出所:『今こそ知りたい資産運用のセオリー』竹中正治著 光文社 2008年12月
山頂を目指すルートはおそらく一本ではありません。
また、投資家それぞれの山頂があっていいはずで、自分に合った投資スタイルでそれぞれの頂に近づければいいのでは?とわたしは考えています。
そして、このようなバーゲンハンティング的投資スタイルがベストとは思われませんが、
大勢の弱気に強気で立ち向かい、大勢の強気に弱気で立ち向かったこと
が、投資のプロ、テンプルトン卿の長期的な高パフォーマンスの秘訣の一つであったららしいこと、は気にかけておいてもいいのかもしれません。
素人のわたしとしては、ハードルを少し下げて、何とか
強気相場でむやみに高値掴みしない
弱気相場でむやみに投げ売りしない
を実現できればなあと感じます。
それだけでもずいぶん長期成績が改善しそうです。
また、一般的なインデックス投資やポートフォリオ運用において、大きな市場変動時にもリバランスをきっちり行えば、
弱気相場で投げ売りしないで買う
強気相場で高値掴みしないで売る
ことになり、自然と
大勢の弱気に強気で立ち向かい、大勢の強気に弱気で立ち向かう
ことができます。
配分を決めて、配分を守る・・・何でもないようですが、プロに大負けしない、優れた知恵だと改めて思います。
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