米国は景気後退に向かっているのか
をテーマに米国労働市場を観察。
失業率はどうか
<米国失業率:1948年~:グレーは景気後退期>
※出所:Unemployment Rate (UNRATE) | FRED | St. Louis Fedより作成
1948年以降の景気後退期には必ず失業率が急上昇しています。
経験的には
景気後退期=失業率急上昇の時期
です。
<米国失業率:ここ1年>
直近のボトムは2023年1月、4月の「3.4%」。
2023年9月は「3.8%」。
ボトムから0.4%幅で上昇しており、気がかりな状況。
あくまで経験則ですが、直近ボトムから%を外した失業率数値が13.6%以上上昇すると、景気後退となることが多く、今回のボトムは3.4%なので、経験的には「3.9~4.0%」以上が危うい水準。
結論として、失業率の観点では米国は景気後退に向かっている可能性が高いと思われます。
失業保険継続受給者はどうか
<失業保険継続受給者:1967年~:グレーは景気後退期>
※出所:Continued Claims (Insured Unemployment) (CCSA) | FRED | St. Louis Fedより作成
1967年以降の景気後退期には必ず失業保険継続受給者が急増しています。
経験的には
景気後退期=失業保険継続受給者が急増の時期
です。
直近のボトムは2022年9月の約130万人。
2023年3月には182万人まで万一気に増加。
その後減少に転じ、2023年9月は170万人。
<失業保険継続受給者:ここ1年>
今年の3月ごろまでは粛々と景気後退に向かっている感じでしたが、3月銀行破綻後のFRB支援策の効果もあってか、失業保険継続受給者数は3月をピークに8月まで減少、9月はやや増加、という状況。
ちなみに、1980年以降では失業保険継続受給者が240~290万人程度で景気後退が始まっていることが多く、今はまだこの水準を70~120万人下回る水準。
結論として、この指標では失業保険継続受給者はかなり少ない水準で増加傾向かも定かではなく、米国は景気後退に向かってなさげな感じ。
臨時ヘルプサービスはどうか
<米国:臨時ヘルプサービス:1990年~:グレーは景気後退期>
※出所:All Employees, Temporary Help Services (TEMPHELPS) | FRED | St. Louis Fedより作成
1990年以降の景気後退期には必ず臨時ヘルプサービスが急減しています。
臨時ヘルプサービスはいわゆる「人材派遣サービス」
景気がよければ人材派遣は増加、悪ければ人材派遣は減少。
「正社員雇用」より「臨時ヘルプサービス」の方がより流動性が高く、景気変動に敏感に反応すると思われ、「失業率」より米国労働市場に対する感度が高い可能性があります。
<米国:臨時ヘルプサービス:ここ5年>
臨時ヘルプサービスの直近のピークは2022年3月の約318万人。
その後減り続け2023年9月は約294万人でピークから約7.5%減少。
2001年からの景気後退ではピークから約7%
2007年からの景気後退ではピークから約4%
減少したときに景気後退が始まっており、今すでに7.5%減少しています。
よって、経験的には臨時ヘルプサービスの観点では米国は景気後退に向かっている可能性が高いと思われます。
ただ臨時ヘルプサービスの減少速度はやや緩慢ではあります。
まとめ
米国労働市場を3つの視点で確認。
米国は景気後退に向かっているのか
現時点では
☆失業率:景気後退に向かっている可能性が高い
☆失業保険継続受給者:景気後退に向かっている可能性は低い
☆臨時ヘルプサービス:景気後退に向かっている可能性が高いか
この3つの視点トータルでは
どちらかというと景気後退に向かっている可能性がやや高い
と思われます。
また2020年以降のデータしかありませんが速報性が高そうなインディード求人掲載数は2021年12月をピークにじりじりと減少傾向にあります。
<インディード求人掲載数:2020.2~>
※出所:Job Postings on Indeed in the United States (IHLIDXUS) | FRED | St. Louis Fed
ただ2023年7月以降は横ばい傾向で臨時ヘルプサービス同様、減少トレンドではあるものの、動きは緩慢。
4つの指標の中では失業率が最も悲観的。
失業保険継続受給者数が最も楽観的。
どちらかというと景気後退に向かっている可能性がやや高い
と思いますが、のらりくらりの状況が続きそうな感じもあり、もしも景気後退となるとしても、少し先なのかなあ、という印象。
個人的な勘では2024年秋以降が怖そう。
参考