《【世界バフェット指標】で株式の割安割高を探る》シリーズの2回目です。
ここで、少し寄り道をして、経済規模と市場規模の話に移ります。
マニアックで退屈な話になるかもしれませんが、長期投資で欠かせない大事なポイントだと思うので、書きます。
★経済規模と市場規模の関係(GDPと時価総額の関係)
再度引用文を載せます。
バフェット指標は、投資の神様とも言われる、ウォーレン・バフェット氏が愛用しているとされる、ある国のGDPと上場株式の時価総額の総和を比べる指標をいいます。これは、ある国の株式時価総額増加率と名目GDP成長率は長期的には収斂するとの主張に基づくもので、ある国の株式相場に急落の可能性は高まっていないか、あるいは逆に売り込まれすぎていないかを見る場合に使われます。
引用元:「金融情報サイト」
この引用文にあるように、名目GDP成長率と株式時価総額増加率は長期的には正比例する傾向があります。
実際、1995年末と2015年末を比較すると、20年間で世界全体の市場規模(時価総額)は約3.9倍、経済規模(名目GDP)は約2.4倍になっています。
出所:以下サイトデータより管理者作成 ◎名目GDP→IMF ◎世界時価総額→WFE
ではなぜ、市場規模と経済規模は長期的には連動しやすいのか。
簡単に私見を述べます。
ある国の経済規模が大きくなれば、その国で生み出される利益(付加価値、儲け)も増加すると考えられます。
利益を生み出すのは主に企業なので、国全体で生じる利益が大きくなれば、その国の上場企業の利益も総じて増えると考えられます。
そして、企業の株価は企業の利益を反映するので、株価も上昇する。
したがって、経済規模が大きくなる国の株価は総じて上がりやすく、長期的には株式市場の規模も大きくなる傾向があると考えられます。(市場規模=時価総額=株価×株数。市場規模と株価は概ね連動します)
逆も同様で、経済規模が小さくなる国では、株価は下がりやすく、長期的には市場規模も小さくなる傾向があると考えられます。
●経済規模↑⇒ 企業利益↑ ⇒ 市場規模↑ ●経済規模↓⇒ 企業利益↓ ⇒ 市場規模↓
国でなく、世界全体で考えても同様に、世界の経済規模が大きくなれば、長期的には世界の株式市場規模も大きくなる、逆も然り、といえるでしょう。
●世界の経済規模⇔世界の市場規模 ●世界経済の成長⇔世界市場の拡大
★株価や市場規模の変動だけでなく、常に経済規模の動きも気にする大切さ
長期投資においては、この観点、
株価や市場規模の変動だけでなく、常に経済規模(GDP)の動きも含めて考えること
は大事だと思います。
この観点から市場を見ることができれば、
①市場規模だけが大きく膨らむ一方、経済規模があまり大きくなっていかない市場は、長期的にはその市場規模を維持できないのではないか ②市場規模が大幅に縮小する一方、経済規模はそこそこの成長を維持できている市場は、長期的には大きく反発するのではないか
という推論を立てることができます。
例えば、日本のアベノミクス相場です。
2012年末~2016年末の4年間の株式時価総額、名目GDP、日本のバフェット指標(時価総額÷名目GDP)の動きを確認してみましょう。
年 2012 2016
株式時価総額 296.4 → 560.2
名目GDP 475.3 → 505.0
<単位:兆円>
バフェット指標 0.62 → 1.11
※出所 ◎時価総額→日本取引所グループ ◎GDP→世界経済のネタ帳
4年間で、株式時価総額は約89.0%、2倍近くの上昇率です。
2012年末の株価水準が低かったこともありますが、2012年末は経済規模の6割強だった市場規模が、4年後、経済規模を10%以上、上回っています。
一方、名目GDPは4年で約6.2%の成長です。
6.2%が悪い数字とは思いませんが(日本の人口動態を考慮すると、むしろいい数字だとおもいます)、ここ4年間の市場規模の拡大ペースを今後もサポートできるほどの高成長ではないと推測されます。
このように、市場規模と経済規模、両者の変動を漠然としたイメージではなく、具体的な数字で見てみると、比較的冷静に市場と対峙できるのではないでしょうか。
そして経済規模の動きも時々確認して、経済規模に比べて
◎市場規模が小さすぎる(株式が過剰に売り込まれた)時期に株式を多く買い、 ◎市場規模が大きすぎる(過剰に買い込まれた)時期に株式を多く売る
という発想で常に市場と向き合っていると、自然に長期投資の成功率、収益率が上がるのではないかとわたしは思います。
<次回に続きます>