ユキマツの「長期投資のタイミング」

「景気(企業利益動向)」「中銀の金融政策(金利動向)」「投資家のリスク許容度」などから長期投資のタイミングを探る投資ブログ

「長期投資に適しそうな国の選定作業」⑧ ~ドイツ・経済成長編~

長期投資に適する国は事前に分かるものなのか?

そんなことは考えない方が身のためか?

「長期投資に適しそうな国の選定作業」シリーズの8回目はヨーロッパの経済・技術大国ドイツです。

ドイツのメモ

全世界の株式を対象とした株価指数「MSCI ACWI」(浮動株調整後)では、ドイツは約3.2%程度の配分になるようです。

この指数の国別シェアでは第7位にランクインしています。

※データ出所:iシェアーズ MSCI ACWI ETF 2017.8.21時点

また、ドル建ての名目GDPランキング(2016年。IMFデータ)では、米国、中国、日本に次いで世界第4位の経済大国です。

中国のメモ

全世界の株式を対象とした株価指数「MSCI ACWI」(浮動株調整後)では、中国は約3.7%程度の配分になるようです。

この指数の国別シェアでは米国、日本、イギリスに続いて第4位にランクインしています。

※データ出所:iシェアーズ MSCI ACWI ETF 2017.7.21時点

長期投資に適するのは、長期的な経済成長率が高い国ではないか?

一般にある国の「名目経済成長率」とその国の「時価総額(市場規模)の増加率」には長期的には正の相関があるとされます。

そして、「時価総額の増加率」と「株式インデックスの上昇率」にも正の相関があります。 

したがって、

長期的に経済成長する国の株式インデックスは長期的に上昇しやすい

つまり、

長期投資に適するのは、長期的な経済成長率が高い国ではないか?

という仮説が成り立ちます。


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長期的な経済成長が期待できる国を予測することは可能なのか?

上記の仮説が正しくて、投資する前に長期的な経済成長を成し遂げる国を予測することができれば、その国の株式インデックスを長期保有することで、長期投資の収益率を大きくできそうな気がします。

 

では、長期的な経済成長が期待できる国を予測することは可能なのか?

 

おそらく確実に予測することは不可能だと思われます。

今、高い成長率を維持していても、今後何らかの理由でガクッと落ちるかもしれない、その後も長期的に低迷するかもしれない、逆に今、成長率が低くても、何らかの理由で成長率が上昇しないとはいえません。

 

内戦や政治の混乱、大地震、自然災害、感染症の大流行など、全く予期せぬアクシデントが起きれば、経済成長どころの話ではなくなります。

株価予測と同様、未来のことは断言できないと思われます。

ただ、以下のような手順を踏むことによって予測の精度を少し向上させることができる、かもしれません。

※あくまで「予測が当たる確率が上がるかもしれない」程度の話です

 

f:id:yukimatu-tousi:20170822232016j:plain

①できれば人口が増える国や地域の株式インデックスを選択する

実質経済成長率に関しては、

実質経済成長率

=人口増加率+一人当たり経済成長率

という式が成り立ち、二つの要素に分けて考えることができるようです。

つまり、一年間で人口が1%増えれば、一人当たり経済成長率が0%でも、実質経済成長率は1%になります。

逆に、人口が1%減れば、一人当たり経済成長率が1%でも、実質0成長になってしまいます。

この式を見れば、長期的な人口の増減が一国の経済規模に大きな影響を与えることは明白です。

 

そして、「人口予測」は数ある経済指標の中で、比較的、的中率が高い指標とされます。

※「予測」という言葉を使っていい経済予測は、人口くらいだ(他の指標はなかなか予測が難しい)と主張する人もいます

「現在の人口、将来の出生率、将来の生存率、将来の国際人口移動率」などのデータがあれば、ある程度精度の高い予測ができるようです。

したがって、比較的予測が当たりやすい人口増加率を頼りに「長期的な経済成長が期待できる国を予測する」こと、つまり

できれば人口が増える国や地域の株式インデックスを選択する

 のは理屈では正しいことになります。

※単に人口増加率が高ければいいわけでもなく、一人当たり経済成長率とのバランスが大切だと思われます

②一人当たり経済成長率は、近年の長期データを用いて推測するのもアリか?

次に、一人当たり経済成長率について考えてみます。

こちらは、人口増加率より予測が難しく振れ幅も大きな要素です。

何か手はあるのか?

 

経験的な私見に過ぎませんが、

実質経済成長率

=人口増加率+一人当たり経済成長率

なので、

一人当たり経済成長率

=実質経済成長率ー人口増加率

になります。

したがって、例えば、

過去10年の一人当たり経済成長率の平均

=「過去10年の実質経済成長率の平均」ー「過去10年の人口増加率の平均」

になります。

10年を20年にしても同様です。

このように、単年度ではなく、一人当たり経済成長率の「長期平均」を参考にすることで、ある程度将来予測はできるかもしれません。

仮に、2005~2015年の一人当たり経済成長率の平均=1.0%であれば、2015~2025年の平均値も「1.0%」から極端に大きくぶれないのではないか、という推測です。

一年ごとの変動は大きいですが、長期でならすと意外とぶれは小さいようなのです。

ドイツの実質経済成長率、人口増加率、一人当たり経済成長率

ここからドイツの実質経済成長率、人口増加率、一人当たり経済成長率について紹介します。

長期的な俯瞰

まず長めの期間で俯瞰してみます。

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※出所:世界経済のネタ帳のデータより管理者作成

上記の表は、ドイツの実質経済成長率、人口増加率、一人当たり経済成長率を

「1980~2015年」の35年間

「1990~2015年」の25年間

の年率平均で示したものです。

人口は微増、「一人当たり経済成長率」は「1%台の前半~中盤」が長期平均。

この数値だけみると、高い成長率はあまり期待できなさそうです。

 

年代ごとの年率平均と所感

次に、1980~2015年の35年間を10、10、10、5年間で区切って年率平均を算出し、さらに「長期投資」を想定し、2015~2035年の人口増加率の推計を加えると、下記表になります。

f:id:yukimatu-tousi:20170823133047p:plain

※出所:世界経済のネタ帳国連人口推計2015年版(中位推計)のデータより管理者作成

人口増加率は微増~微減、一人当たり経済成長率は2000年以降は1%台の前半というところ。

未来のことはわかりませんが、これまでの長期平均を重視すると、2015-2035年の実質経済成長率も年率平均で「1%~1%台前半」にとどまるかもしれません。

先進国で比較すると、「1%台後半以上」の成長率が期待できそうなアメリカ、オーストラリア、などの方が魅力的です。

あまりドイツに長期投資しようというファイティングスピリットは湧いてきません。

 

したがって、個人的な好みですが、

ドイツは長期投資にあまり適さない国かもしれない

と推測します。

※わたしの推測が当たる保証もありません。数字を眺めて行った一つの判断に過ぎません。投資は自己判断、自己責任でお願い致します

参考データ

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※出所: GLOBAL NOTE、WFEのデータより管理者作成

これまで記事にした全世界と国のドル建て「名目GDP」と「時価総額」の変動を、データがそろいやすい2003~2016年の期間でまとめた表です。

先進国で比較すると、やはり米国は、無難というか、魅力的。

オーストラリアは出来過ぎか、今後もこのペースで進むのか、気になるところです。

ドイツは、数字自体あまりさえませんし、今後の人口減予測を考えると微妙です。

あとがき

ドイツの2014年の合計特殊出生率は「1.39」です。

日本と同様、人口維持に必要な「2.07」には遠く届きません。

2000年代にすでに人口減を経験しているドイツは強力に移民政策を進めたようなのですが、イスラム系テロや軋轢が発生し、どうもこの政策の雲行きが怪しい。

日本と同様、人口減少国になる可能性が高いようです。

(国連推計では現在の8000万人強から2050年には7500万人程度に減少?)

 

また、欧州統合通貨ユーロは

・インフレ率が低めのドイツに有利で、相対的にインフレ率が高めのイタリアやスペインなどに不利な通貨となっている

・ドイツはユーロという構造的な通貨安を武器に輸出で稼ぎ過ぎ?

との意見もあるようで、もし、この通貨安メリットが何らかの原因で失われると、輸出が伸びず、ドイツの経済成長の減速要因となる可能性もあるようです。

 

なんだかドイツのネガティブ案件ばかり書いていますが、別にドイツが嫌いなわけではありません。

純粋にドイツへの長期投資のことを考えると、わたしはあまり気が進まない、だけです。

今後どうなるかはわかりません。ご参考程度に。

関連記事です。日本やアメリカと比較するのも面白いかもしれません

www.yukimatu-value.com

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