マイナーな指数ですが、米国には市場参加者の【楽観】度合いの目安となる指標があります。
ウェルズ・ファーゴ/ギャラップ投資家・退職者楽観指数
(Wells Fargo/Gallup Investor and Retirement Optimism Index)
です。
その簡単な紹介記事です。
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ウェルズ・ファーゴ/ギャラップ投資家・退職者楽観指数とは
①米国で1万ドル以上の投資資金を有する「投資家」と「退職者」を対象にした調査をもとに作成されている
②1996年以降の長期データ
③数値が大きくなる⇒楽観傾向
④数値が小さくなる⇒悲観傾向
⑤最大値は「178」(ITバブルの頃)
⑥最小値は「-64」(リーマンショック後)
実際にみてみましょう。
※出所:U.S. Investor Optimism Rises Again, Hits 17-Year High
「138」が2017年の第3四半期のデータです。
2016年の始めは「40」だったのが、2年も経たないうちに急速に「ITバブル期並みの楽観傾向」に傾斜していることがうかがえます。
2008年以降のグラフの動きからは、
リーマンショック後、2016年頃まで、ずっと悲観傾向に傾いていた投資家心理が、2016年以降、一気に楽観に引きずられている
という分析も可能かもしれません。
さまざまな指標があるので、あくまでこの指標のグラフだけをみての推測ですが。
なぜここまで楽観的になれたのか
なぜ米国投資家は今、非常に楽観的になっているのか。
わたしなりの仮説ですが、その原因は主に2点あるのではないかと。
①実体経済の回復
※出所:Leading indicators - Composite leading indicator (CLI) - OECD Data
上記グラフはOECD加盟国全体の景気動向を示す「OECD景気先行指数」(Composite leading indicator)です。
2016年の春から夏に底打ちして回復トレンドにあります。
※出所:BEA National Economic Accountsのデータより管理者作成
上記グラフは米国の実質経済成長率を4半期ごとに追ったものです。
やはり2016年第2四半期をボトムに成長率は高まってきています。
米国投資家の楽観はこれらの実体経済の底打ちが要因かもしれません。
②株価の上昇
※出所:^GSPC Interactive Stock Chart | S&P 500 Stock - Yahoo Finance
上記グラフはここ2年のS&P500の推移です。
2016年初めの底値から30%以上上昇しています。
一般的に投資家は株価が上がれば安心、楽観してしまう傾向から逃れることはできません。
株価が上がったことが米国投資家の楽観を生んだ、のかもしれません。
以上、2点、「景気回復+株価上昇」が米国投資家の楽観をもたらしている主因と思われます。
他にも
・FRBの利上げペースが非常に穏やかである
・何か起きてもFRBが量的緩和で何とかしてくれるのでは?という安心感がある
・リーマンショック(2008年)の心理的呪縛を時間が解放した
なども「米国投資家が楽観にぶれまくっている要因」かもしれません。
この指標のわたしなりの使い方
<S&P500>
※出所:^GSPC Interactive Stock Chart | S&P 500 Stock - Yahoo Finance
※出所:U.S. Investor Optimism Rises Again, Hits 17-Year Highのグラフから管理者作成
ざっくりと
①100を超えたら過剰な楽観により株価が割高になっている可能性があり、「現金比率を上げる」「リスク資産の比率を下げる」ことを検討する
②20を下回ったら過剰な悲観により株価が割安になっている可能性があり、「現金比率を下げる」「リスク資産の比率を上げる」ことを検討する
という判断の目安としてみる、です。
根拠は
①に対しては、ITバブル(2000年頃)、サブプライムバブル(2007年頃)の頃、100を超えていた
②に対しては、それぞれのバブル崩壊後、株式のバーゲンセール時期に20を下回っていた
ただの経験則です。
この指標の難点
ただ、この指標では高値の判断、バブルの判断はとても難しいと思います。
楽観時期は比較的長期間続く傾向があるためです。
<S&P500>
※出所:^GSPC Interactive Stock Chart | S&P 500 Stock - Yahoo Finance
※出所:U.S. Investor Optimism Rises Again, Hits 17-Year Highのグラフから管理者作成
③④のような悲観の時期は比較的わかりやすく感じますが、①や②の長期的な楽観時期の判断は難しそうです。
楽観時期の初期に、さっさとリスク資産の比率を減らすと、あまりにも早すぎる退場になりやすそう。
どちらかというと悲観時期、株式の割安時期を探るのに有力な、一つの目安として参考にしてもよさそうです。
この傾向はPBR、信用評価損益率、恐怖指数、クレジットスプレッドなどと似ているように思います。
今「138」と高いですが、この水準が長く続くのかもしれません。
おわりに
またそのフレーズですか?と思われそうですが、「楽観」「悲観」といえば次の2つのフレーズ。
強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観とともに成熟し、陶酔のなかで消えてゆく。悲観の極みは最高の買い時であり、楽観の極みは最高の売り時である。
※引用元:『テンプルトン卿の流儀』ローレン・C・テンプルトン、スコット・フィリップス<著> 鈴木敏昭<訳> パンローリング株式会社 2010
「好景気、楽観時代は思い切った勤倹貯蓄」(すなわち金を重しとする)、
「不景気、悲観時代には思い切った投資」(すなわち物を重しとする)
(中略)
要するに利殖の根本をなすものは、「物と金」の適時交替の繰り返し
※出所:『私の財産告白』本多清六著 2005 実業之日本社
※「金を重しとする」の「金」はゴールドの金ではなく、お金、現金のこと。
※「物を重しとする」の「物」は株式や土地などの実物資産のこと
ここ20数年の株式市場においても、上記のフレーズはそれなりの説得力を持っているようにわたしには思えます。
特に本多清六の「不景気、悲観時代にこそ思い切って投資したら?」というアドバイス、おそらくあまり一般受けしないと思われますが、今後も役に立つアドバイスではないかと個人的には思います。
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