時代や国を問わず、説得力を持ちつづけそうな言葉を拾ってまとめていくシリーズ
「時空をこえたメッセージ」
の11回目です。
勝者になれたのは、どうやれば負けるのかを学んだからだ
上記のフレーズは『マネーの公理』<マックス・ギュンター著 林康史訳 日経BP社 2005年>からの引用です。
マーティン・シュワルツという商品市場の優秀なトレーダーの言葉として記載されています。
まず長期的に大負けしないこと、致命傷を負わないこと
勝者になれたのは、どうやれば負けるのかを学んだからだ
この短いフレーズは、意外に奥が深い言葉と感じます。
●負けなければ、いつか勝てる可能性が上がるハズ
●負けパターンを研究し、それを意識的に避け続ければ、勝てる確率は上がるのではないか?
●では、自分の今の投資スタンス、投資環境で、自分が負けるのは、どうなったときだろう?
●どうすれば具体的に、自分の決定的な大敗を回避できるだろうか?
●負けない対策をとった上で、勝つための攻めの戦略をどうやったら描けるだろうか・・・
そんな思考の流れを生んでくれる言葉だと思います。
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野村元監督の言葉
同様の発言を耳にしたことがあります。
あるテレビ番組で野村元楽天監督が
野球は点を入れられなければ負けない・・・まずピッチャーと守備を鍛えて・・・
というような発言をされていた、と記憶しています。
当たり前といえば当たり前ですが、野球において、点を入れることばかり考えていても、
得点以上の失点をすれば負ける
のだから、
相手に得点を与えないこと
は、得点と同じくらい、価値のあることでしょう。
貯蓄とも似ています。
どれだけ稼いでも支出がそれを上回れば貯蓄はできない。
収入がそれほど多くなくても、
支出を管理できる人は、貯蓄がうまい
場合もあると思います。
作家、塩野七生の言葉
さらに同様の言葉を。
歴史長編「これで終わり」 塩野七生『ギリシア人の物語』が完結:朝日新聞デジタル
アレクサンドロスを主人公にした歴史長編を完結された塩野さんは2017.12.19の新聞記事のインタビューの中で以下のように述べておられます。
「月並みの将軍は、どうやったら敵に勝てるかを考えて戦略をたてる。
(中略)
ところがアレクサンドロスは違う。どうやったら敵が自分に勝つか。まずそれを考え、次にどうしたら敵にそうさせないかを考える。その後で初めて戦術です」
ちょっとしつこいですが、たしかチャールズ・エリスの著作にもありました。
「防御は最大の攻撃」
勝者になれたのは、どうやれば負けるのかを学んだからだ
例えば将棋でも、
相手から見た自陣の状況、自分の防御網の穴
に素早く気づける人は、おそらく強い指し手なのでしょう。
投資で自分が負けるシーンを想定するのはあまり楽しい作業ではありません。
弱気が判断力を鈍らせ、せっかくのチャンスをみすみす逃してしまう原因になるかもしれません。
しかし、投資や運用は
市場と対峙する
ことでもあると思います。
やり方によっては、一度の大失敗でゲームオーバーになることもある闘いです。
●市場が自分をどうやったら打ちのめすことができるのか?
●市場がそんな不穏なそぶりを見せてきたら自分にどんな対処ができるのか?
●ピンチをチャンスにかえる手段はないか?
このような発想で自分の資産状況をときどき確認しておくのは、
客観的に現状を見つめる手ごろな手段
として、無意味な行為ではなさそうな気がします。
無駄に終わることの方が多いですが。
※安全資産が多めで現物取引をしていれば、普通、そんなにひどい状況にはならないと思われますが
おわりに
ちなみに古典的で一般的な負けパターンの一つは
●投資がうまくいっていて過剰に強気になる
↓
●借金してポジションをふくらます、あるいは自分のリスク許容度以上にリスク資産に投資
↓
●相場の急な反転で追証、ロストカットで投げ売りを強いられる、あるいは急激な資産評価額の減少にパニックになり含み損益を確定してしまう
↓
●金銭的、精神的に大きなダメージを負って投資の世界から離れる
というパターンだと思います。
投資スタイルや投資家のタイプにもよるので一概には言えませんが、いつの時代も投資家を誘い込む、怖いパターンだと思います。
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