先週の米国市場を
「米国株式の割安割高を判断する目安」
になると思われる指標などで概観してみます。
ごく簡単な米国市場の概観
<先週のS&P500>
※出所:米S&P 500インデックス(SPX - Investing.com
8.28は「3508」。前週比「+3.3%」。
8月月間では「+5.3%」。
最高値更新中。
<先週の米国10年国債利回り>
8.28は「0.73%」。前週の「0.64%」より大きめに上昇。
定点観測
以下の4つで定点観測してみます。
★恐怖指数<米国市場。S&P500の変動性>
★ジャンク債スプレッド<米国市場。クレジットスプレッドの一つ>
★S&P500のPBR<米国の代表的な株価指数のPBR>
★米国バフェット指標 <米国の時価総額÷米国の名目GDP>
恐怖指数
<1990年~>
<先週>
8.28は「22.96」。前週の「22.54」よりやや上昇。
株高の中、あまり下がらず。
水準としては長期平均(「19.3」)よりやや高く、米国の市場心理は
ふつう~やや不安?
と推測。
今は割安時期の目安の「30」以下。
※参考:2018年以降の高い値(場中含む。概算値)
・2018.2月:「50」
・2018.12月:「36」
・2020.3月:「85」
<恐怖指数について詳しくはコチラ↓>
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ジャンク債スプレッド
ジャンク債スプレッドとは
①ジャンク債スプレッド
=米国のハイ・イールド債(格付け:BB)の利回り-米国債(10年物)の利回り
※本記事ではオプション調整後
②ジャンク債スプレッドが大きい⇒株式は割安傾向
③ジャンク債スプレッドが小さい⇒株式は割高傾向
④★平均値(幾何平均):3.4
★中央値:3.2
<期間:1997.1月~2020.6月の月末>
⑤5%以上のスプレッドの時期に株価は概ね割安か?
推移グラフと現在の状況判断
<1997年以降>
※出所:ICE BofAML US High Yield BB Option-Adjusted Spread (BAMLH0A1HYBB) | FRED | St. Louis Fedより作成 ※期間:1997.1月末~2020.8.27
2020.8.27時点のジャンク債スプレッド(%。格付けBB、オプション調整後)は「3.45」で、前週の「3.72」より低下。
8/7以降2週連続で上昇していましたが、大きめに低下し楽観に振れた感じ。
スプレッドの長期中央値は「3.2」で今は平均以上、投資家心理はやや不安?か。
<ここ1年>
※出所:ICE BofAML US High Yield BB Option-Adjusted Spread (BAMLH0A1HYBB) | FRED | St. Louis Fedより作成
●FRB、無制限の量的緩和(2020.3.23頃)
●FRB、ジャンク債(BB格まで)を購入(2020.4.9頃)
というアナウンスを契機に今のところBB格のスプレッド拡大は押さえ込めている印象。
<ジャンク債スプレッドについて詳しくはコチラ↓>
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S&P500のPBR
※出所:S&P 500 Price to Book Valueより作成
1999年末~直近のS&P500のPBRの推移です。
8.28時点の推計値は「3.96」(前週は「3.84」)倍で大幅に上昇。
引き続きITバブル以降で最も高い水準。
節目の「4.0倍以上」に急接近。
今は長期の中央値「2.77」を43.0%ほど上回っており、現在株価は
割高
か。
※最近のS&P500の高PBR
①2018.1.26:3.60倍(直近で世界景気が最もよかった時期)
②2018.9.21:3.51倍(直近で米国の経済成長率が最も高かった時期)
③2020.1.17:3.76倍(コロナ前、2019年9月以降の世界景気拡大期のピーク)
④2020.8.28:3.96倍(コロナ後のリバウンド)
※出所:S&P 500 Price to Book Value
<S&P500のPBRについて詳しくはコチラ↓>
米国バフェット指標
米国バフェット指標とは
①米国バフェット指標=米国の時価総額÷米国の名目GDP
②米国株式の割安割高を判断する目安
③米国の時価総額=NYSE+Nasdaqで計算
推移グラフと現在の状況判断
米国の時価総額は2020年7月末で約「36.4兆ドル」。
2020年7月末の米国バフェット指標は「1.88」(1Qに比べ、2020年2Q米国名目GDP推計値が小さくなったため、バフェット指標は大幅上昇)。
今のS&P500は7月末(3100)より7%ほど高い水準。
長期の米国バフェット指標の中央値「1.33」より大幅に高い可能性が高く、株価水準は
割高?
か。
※2020年2~3月のWFEの米国時価総額データは誤りである可能性が高く、今は使用せず。2020年7月データからの適当な推測です。ご参考までに
※データ出所:https://www.world-exchanges.org/、世界経済のネタ帳、Gross Domestic Product (GDP) | FRED | St. Louis Fedのデータより作成
※2020年2Q米国名目GDP推計値:19.41兆ドル
米国バフェット指標について詳しくはコチラ↓
現時点での米国市場の割高割安、4つの指標からの推測、まとめ
あくまで経験的な判断ですが、現時点で各指標が示唆する株式の割安、割高の判断をまとめます。
★恐怖指数⇒割安ではない?
★ジャンク債スプレッド⇒割安ではない?
★S&P500のPBR⇒割高?
★米国バフェット指標 ⇒割高?
以上から米国株の水準は
割高?(投資タイミングとしてネガティブ要因?)
と推測。
また
★米国の金融政策:緩和的(ポジティブ要因)
★米国の景気 :不況?(ネガティブ要因?)
と推測。
株価水準、金融政策、景気動向から考え、現時点で米国株の投資タイミングに関して、ややネガティブ~ネガティブ?な印象。
※個人の感想です。未来は誰にも予知できません。投資は自己判断、自己責任で
最近のバブル崩壊後の株価低迷期と現在のデータ比較
※表のデータ出所 ・世界のバフェット指標:GLOBAL NOTE、https://www.world-exchanges.org/ ・OECD景気先行指数:OECD Data ・シラーPER:Shiller PE Ratio ・失業率:US Unemployment Rate ・実質経済成長率:BEA National Economic Accounts ・長短金利差:米国債・金利 - Bloomberg ・かい離率:米S&P 500インデックス(SPX - Investing.com
とても割高っぽい状況。
・恐怖指数:あまり下がらず
・ジャンク債スプレッド:先週は縮小
・S&P500のPBR、シラーPER:高水準
・長短金利差:前週の「0.49%」から「0.61%」に拡大
おわりに
どうせなら記念に「4.0倍以上」の世界をみてみたい気もしますが、まだ行けるかどうか。
8.17の上記記事で書いていましたがたった2週間でS&P500のPBR(3.96倍)は節目の「4.0」倍に急接近。
ITバブルの頃のピーク(5.06倍)にあと28%ほどで届く水準。
シラーPER(32.28倍)はITバブルの頃のピーク(44.19倍)にあと37%ほどで届く水準。
当時との金融政策や財政政策の違い、金利水準の違い(2000年は長期金利が5~6%ほど)等もあり、一概に約20年前と比較するのも無理があると思われますが、投資家のリスク許容度は高そうな雰囲気の米国株、どうなりますか。