先週の米国市場を株式の割安割高を判断する目安になると思われる指標などで概観してみます。
簡単な米国市場の概観
<S&P500>
※出所:米S&P 500インデックス(SPX - Investing.com
10.7は「3640」で前週比「+1.5%」。
10月月間では今のところ「+1.5%」。
2022年1月の最高値「4819」より「-24.5」%水準。
<米国10年国債利回り>
10.7は「3.89%」。前週は「3.83%」で先週も上昇。
先週は
★株価⇒上昇
★債券利回り⇒上昇
★ドル指数⇒上昇
という動きでした。
定点観測
以下の4つで定点観測してみます。
★恐怖指数<米国市場。S&P500の変動性>
★ジャンク債スプレッド<米国市場。クレジットスプレッドの一つ>
★S&P500のPBR<米国の代表的な株価指数のPBR>
★米国バフェット指標 <米国の時価総額÷米国の名目GDP>
恐怖指数
<ここ5年>
10.7は「31.36」。前週の「31.62」よりやや低下。
水準としては長期平均(「19.3」)より高く、30以上であり米国の市場心理は
不安?
と推測。
短期的な割安時期である可能性。
※参考:2018年以降の高い値(場中含む。概算値)
・2018.2月:「50」
・2018.12月:「36」
・2020.3月:「85」
・2020.10月:「41」
・2022.1月:「39」
<恐怖指数について詳しくはコチラ↓>
www.yukimatu-value.com
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ジャンク債スプレッド
本記事のジャンク債スプレッドとは
①ジャンク債スプレッド
=米国のハイ・イールド債(格付け:BB)の利回り-米国債(10年物)の利回り
※本記事ではオプション調整後
②ジャンク債スプレッドが大きい⇒株式は割安傾向
③ジャンク債スプレッドが小さい⇒株式は割高傾向
④★平均値(幾何平均):3.30
★中央値:3.18
<期間:1997年1月~2022年9月の月末>
⑤5%以上のスプレッドの時期に株価は概ね割安か?
推移グラフと現在の状況判断
※出所:ICE BofAML US High Yield BB Option-Adjusted Spread (BAMLH0A1HYBB) | FRED | St. Louis Fed
※期間:1997.1月末~2022.10.6
10.6時点のジャンク債スプレッド(%。格付けBB、オプション調整後)は「3.21」で、前週の「3.76」より大きく縮小。
スプレッドの長期中央値は「3.18」で今は中央値より約1%高い水準。
投資家心理は
ふつう~やや不安
か。
<ジャンク債スプレッドについて詳しくはコチラ↓>
www.yukimatu-value.com
S&P500のPBR
※出所:S&P 500 Price to Book Value
1999年末~直近のS&P500のPBR推移。
10.7時点の推計値は「3.62」(前週は「3.57」)倍で前週より上昇。
長期の中央値「2.80」を29%ほど上回っており、株価水準は
やや割高
か。
※最近のS&P500の高PBR
①2018年1月:3.60倍(直近で世界景気がよかった時期)
②2018年9月:3.51倍(直近で米国の経済成長率が最も高かった時期)
③2020年1月:3.76倍(コロナ前、2019年9月以降の世界景気拡大期のピーク)
④2021年12月:4.73倍(コロナ後)
※出所:S&P 500 Price to Book Value
<S&P500のPBRについて詳しくはコチラ↓>
シラーPER
※出所:Shiller PE Ratioより作成 ※期間:1995.1~2022.9
1995年以降のシラーPERの推移。
1995年以降の中央値は「26.5」倍。
2022年9月までの5年移動平均は「31.9」倍。
10.7は約「27.2」倍で前週(26.8)より上昇。
長期の中央値より約3%高く、5年移動平均より約15%低い水準。
株価水準は
ふつう~やや割高?
と推測。
※出所:Shiller PE Ratio
※参考:シラーPER(CAPEレシオ)とは|金融経済用語集 - iFinance
現時点での米国市場の割高割安、4つの指標からの推測、まとめ
あくまで経験的な判断ですが、現時点で各指標が示唆する株式の割安、割高の判断をまとめます。
★恐怖指数⇒(短期的に)割安?
★ジャンク債スプレッド⇒ふつう~やや割安?
★S&P500のPBR⇒やや割高?
☆シラーPER⇒ふつう~やや割高?
長期的には米国株の水準は
ふつう~やや割高?
と推測。
現時点での米国株の投資タイミングに関しては
ふつう~ややネガティブ?
な印象。
※個人の直感、感想です。先のことは不明。投資は自己判断、自己責任で
最近のバブル崩壊後の株価低迷期と現在のデータ比較
※表のデータ出所 ・OECD景気先行指数:OECD Data ・米国失業率:US Unemployment Rate ・実質経済成長率:BEA National Economic Accounts ・マージンデット:Margin Statistics | FINRA.org ・長短金利差:米国債・金利 - Bloomberg
・恐怖指数:短期的な割安水準の可能性を示唆
・S&P500のPBR:やや割高か
・米国失業率:9月は前月3.7%⇒3.5%に改善
2018年との金利、株価比較
前回FRBの「量的引き締め+利上げ」がセットで実施され、株式市場が大きく崩れ出したのが2018年10月頃。
当時と今の比較。()内は前週値。概算値。
利上げは5回、量的引き締めは2022年6月に開始。
②は先週上昇、2018年より「0.8%」高い水準。
③は先週変わらず、2018年より「1.8%」高い状態。
④は現状「-25%」水準。
※データ出所
●アメリカ 10年 債券利回り - Investing.com
●30-Year Fixed Rate Mortgage Average in the United States (MORTGAGE30US) | FRED | St. Louis Fed
●S&P500 インデックス(SPX) - Investing.com
金融ストレス指数(ここ1年)
※出所:St. Louis Fed Financial Stress Index (STLFSI3) | FRED | St. Louis Fed
2022.9.30は「-1.24」(前週は-1.61)で前週より金融ストレスが増加。
直近ボトムは2022.8.12。
水準としては1994年以降で最もストレスフリー。
※金融ストレス指数について
⇒金融ストレス指数とは|インデックス(指数)用語集|iFinance
おわりに
先週
米10年国債利回りが上昇傾向、あるいは不安定だと相場が落ち着く感じはせず。
と書いていましたが、今週はまさにそんな感じ。
週の前半は米10年国債利回り急低下、株価急上昇、週後半は利回りが上がり続け、週末に株価急落。
週間では株価上昇していますが不安定。
※出所:St. Louis Fed Financial Stress Index (STLFSI3) | FRED | St. Louis Fedより作成
上記は1994年以降の金融ストレス指数。
後々何か名前が付けられるイベントではこの指数は大きくなり、少なくとも「1」を超えています。
一般に金融ストレス指数が上昇すれば、金融の安定度が低下し、金融市場にストレスが蓄積されていることを示唆し、逆に本指数が低下すれば、金融市場における安定度が増したことを示唆します
※金融ストレス指数とは|インデックス(指数)用語集|iFinanceより引用
この説明を鵜呑みにすると、今は信用不安や金融危機とは程遠い、金融市場が安定しまくっている状態といえます。
2022.9.30は「-1.24」でマイナス圏、しかもとても低い水準にいます。
2005~2007年頃の米国住宅バブルの頃や、2017~2018年の世界的に景気がよかった頃よりも、さらに低い水準です。
この指標からは
長期金利が跳ね上がり、株価が2割下げても盤石の欧米金融市場
といえそうです。
この事実をどうとらえるか。
ポジティブにとらえるなら、
☆今の金融市場はどうやら頑強であり、今後さらに株価が下げることがあっても一時的で大きな金融危機やパニック相場には陥らず、あと半年一年しないうちに値を戻してくる
ネガティブにとらえるなら、
☆まだ何も金融市場にひびが入っていない状況ですでに株価はそこそこ下げており、今後何らかのネガティブ案件の発生で本格的にひびが入れば株価の下落率は少なくとも4割を超えて、10年に一度レベルのそれなりのパニック相場が訪れる
先のことは不明で、どういうスタンスをとるかは投資家の自由。
個人的にはネガティブシナリオが到来してもゲームオーバーにならないポジションを基本とし、仮にパニック相場限定のバーゲンセール価格が示現した場合、いくらかリスク資産を手にできれば、というスタンス。
恐怖指数は一応30を超えており、クレディ・スイスがらみのニュースがあったり、「今は大変なリスクオフ相場で今が買い時!」的な情報も散見しますが、大局的長期的にはまだ何もパニックは起きておらず、株価水準も安くないと思われ、食指は動かない状況。