先週の米国市場を株式の割安割高を判断する目安になると思われる指標などで概観してみます。
簡単な米国市場の概観
<S&P500>
※出所:米S&P 500インデックス(SPX - Investing.com
直近値は「5344」で前週比「-0.1%」。
8月月間では今は「-3.2%」。
2022年1月の最高値「4818」より約「+11」%水準。
<米国10年国債利回り>
直近値は「3.94%」(前週は「3.79%)で大きく戻す。
先週は
★株価⇒横這い
★債券利回り⇒大幅に上昇
★ドル指数⇒横這い
という動きでした。
定点観測
以下の4つで定点観測してみます。
★恐怖指数<米国市場。S&P500の変動性>
★ジャンク債スプレッド<米国市場。クレジットスプレッドの一つ>
★S&P500のPBR<米国の代表的な株価指数のPBR>
★シラーPER
恐怖指数
<ここ5年>
直近値は「20.37」(前週は「23.39」)。
1990年以降の長期中央値は「18.0」(月末値データ)。
米国の市場心理は
ふつう~やや不安?
と推測。
8.5にSP500は一日で3%下落し、VIXも「65.73」まで急上昇するもその後落ち着き週間では前週より低下。
※参考:2018年以降の高い値(場中含む。概算値)
・2018.2月:「50」
・2018.12月:「36」
・2020.3月:「85」
・2020.10月:「41」
・2022.1月:「39」
・2024.8月:「66」
<恐怖指数について詳しくはコチラ↓>
www.yukimatu-value.com
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米債券スプレッド
本記事の米債券スプレッドとは
①米債券スプレッド
=米国の社債(格付け:Baa)の利回り-米国債(10年物)の利回り
②米債券スプレッドが大きい⇒株式は割安傾向
③米債券スプレッドが小さい⇒株式は割高傾向
④3.0%以上のスプレッドの時期に株価は概ね割安か?
推移グラフと現在の状況判断
8.8の米債券スプレッド(%。格付けBaa)は「1.78」(前週は「1.71」)。
明確にスプレッド拡大中。
スプレッドの長期中央値は「2.18」で今は中央値より約-18%水準。
投資家心理は
やや楽観
か。
<米債券スプレッドについて詳しくはコチラ↓>
www.yukimatu-value.com
S&P500のPBR
※出所:S&P 500 Price to Book Valueより作成
1999年末~直近のS&P500のPBR推移。
直近の推計値は「4.83」倍(前週は「4.83」倍)。
長期の中央値「2.83」を71%ほど上回っており、株価水準は
割高
か。
※最近のS&P500の高PBR
①2018年1月:3.60倍(直近で世界景気がよかった時期)
②2018年9月:3.51倍(直近で米国の経済成長率が最も高かった時期)
③2020年1月:3.76倍(コロナ前、2019年9月以降の世界景気拡大期のピーク)
④2021年12月:4.73倍(コロナ後)
⑤2024年7月:5.08倍(コロナ後2回目)
※出所:S&P 500 Price to Book Value
<S&P500のPBRについて詳しくはコチラ↓>
シラーPER
※出所:Shiller PE Ratioより作成 ※期間:1995.1~2024.6
1995年以降のシラーPERの推移。
1995年以降の中央値は「26.8」倍。
2024年6月までの5年中央値は「30.9」倍。
直近値は約「34.5」倍(前週は「34.5」倍)。
長期の中央値より約29%高く、5年中央値より約12%高い水準。
株価水準は
やや割高?
と推測。
※出所:Shiller PE Ratio
※参考:シラーPER(CAPEレシオ)とは|金融経済用語集 - iFinance
現時点での米国市場の割高割安、4つの指標からの推測、まとめ
あくまで経験的な判断ですが、現時点で各指標が示唆する株式の割安、割高の判断をまとめます。
★恐怖指数⇒割安ではない?
★米債券スプレッド⇒やや割高?
★S&P500のPBR⇒割高?
☆シラーPER⇒やや割高?
長期的には米国株の水準は
やや割高~割高?
と推測。
※個人の直感、感想です。先のことは不明。投資は自己判断、自己責任で
近年のバブル期と「現在」のデータ比較
※表のデータ出所 ・OECD景気先行指数:OECD Data ・米国失業率:US Unemployment Rate ・実質経済成長率:BEA National Economic Accounts ・マージンデット:Margin Statistics | FINRA.org ・長短金利差:米国債・金利 - Bloomberg
・ジャンク債スプレッド、シラーPER:やや割高か
・S&P500のPBR:割高か
・米国実質経済成長率(速報値):2024.2Qは「+3.1%」(1Qは+2.9%)
金融ストレス指数(ここ1年)
※出所:St. Louis Fed Financial Stress Index (STLFSI4) | FRED | St. Louis Fed
直近値は「-0.28」(前週は「-0.60」)。
ストレス上昇するもまだプラス圏にはいかず。
1994年以降の長期中央値は「-0.21」であり、まだ少しストレスが低い状態。
※金融ストレス指数について
⇒金融ストレス指数とは|インデックス(指数)用語集|iFinance
おわりに
<S&P500:ここ1年>
※出所:マーケット|SBI証券
緑ラインは200日移動平均線。
直近値は200日線から「+6.2%」水準(前週は+6.8%)。
TOPIXは200日線を下回りましたがSP500はまだ少し余裕あり。
<米国 実質GDP成長率:前年同期比:1948年~>
※出所:Real Gross Domestic Product (A191RO1Q156NBEA) | FRED | St. Louis Fed
7月末に2024年第2四半期の米国実質GDP成長率が発表されました(速報値)。
前年同期比でみると結果は+3.1%。
1Qの+2.9%よりも加速。
長期のグラフをみると明らかに「景気後退前~景気後退期」に大きく下がっています。
そして1948年以降12回の景気後退のうち
①11回は前年比でマイナスになっている<2001年の景気後退は「+0.2%」がボトム>
②11回は景気後退突入時期あるいはその次の四半期までに「+1.4%以下」に成長率が低下していた<1960年の景気後退はこのタイミングでは「+2.1%」までしか下がらず>
ということが確認できます。
要は「+2.9%」が「+3.1%」に上昇している時点では景気後退は考えにくいということ。
今、米国失業率のみに着目すると景気後退の雰囲気は強いですが、前年同月比でみた米国実質GDP成長率の視点では、そんな雰囲気はなし。
逆に言えば今後この指標が
「+1.4%以下」に急低下する場面
では要警戒?という感じ。
とりあえず2024.2Qの速報値には安心感あり。
ちなみにこの指標、2022.4Qは「+0.7%」まで急低下しており、この観点からも
2023年は景気後退?
思われましたが、結局景気後退は来ませんでした。
どんな指標にも「だまし」はありうると思われ、何事も100%決め打ちは危険かも。
※同様の「だまし」は2022年以外に1956年、2011年にも発生