米国景気の一つの指標【ISM製造業景気指数】は株式の割安・割高時期の判断に役立つか、簡単に検証してみました。
ISM製造業景気指数とは
ISM製造業景気指数とは|金融経済用語集
ISM製造業景気指数は、アメリカ合衆国の米国供給管理協会(ISM:Institute for Supply Management)が発表する、製造業の購買担当役員へのアンケート結果を元にした「企業の景況感」を示す経済指標をいいます。
※引用元:ISM製造業景気指数とは|金融経済用語集
一般的な説明は上記のようになり、簡単に付け加えると以下のようになります。
①この指数が50を上回ると景気拡大、50を下回ると景気後退を示唆するといわれています。50が節目です
②指数が大きくなると景気改善、小さくなると景気悪化を示唆します
③毎月第1営業日に前月の結果が発表され、即時性が高い米国の景況感を示唆する指標です
ISM製造業景気指数の推移
※出所:アメリカ ISM製造業購買担当者指数のデータより管理者作成
上記グラフは1995年1月~2017年5月のISM製造業景気指数の推移です。
節目の50にラインを引き、大きな景気後退期に青四角で目印をつけています。
ITバブル後(2001~2002年頃)とリーマンショック後(2008~2009年頃)に米国が不況に陥っていたことを端的に示すグラフです。
ISM製造業景気指数の利用法
わたしは基本的に「不景気な時期に株式は割安に買える可能性が高い」と考えています。
そして、この仮説が正しいなら、
ISM製造業景気指数が50より小さい時期、あるいはその前後に米国は不景気であるはずで、この時期に株式は割安になっていてもいい
ハズです。
実際はどうなのか、
近年のS&P500とISM製造業景気指数のグラフを併記して確かめてみます。
※出所:◎アメリカ ISM製造業購買担当者指数◎ヤフーファイナンスのデータより管理者作成
上記グラフは「1995.1月末=10としたS&P500」と「ISM製造業景気指数」の推移を示したグラフです。
このグラフを見る限り、明瞭な景気後退時期である①と③のうち、S&P500を割安に買えたのは③の時期です。
③の時期、ISM製造業景気指数は30台前半まで小さくなっており、この時期は誰がどう考えてもアメリカ経済が稀にみる不況であったことを伝えています。
そして、この時期が株式のバーゲンタイムであったことが分かります。
一方、①の時期はITバブル崩壊の過程ではありますが、まだ十分に株価が下がっていない時期に当たり、この時期に株式の配分比率を大きく増やしたりすると、かなり長い期間、含み損を抱え続けたことになります。
そして、単なる結果論ですが、ITバブル後、ISM製造業景気指数が示唆していた割安時期は①ではなく、①に比べれば軽微なくぼみにみえる②の時期でした。
こうしてみると、「ISM製造業景気指数が40近くまで大きく下落していた2001年頃に株式はまだ割安でなかった」ことが分かり、必ずしもこの指標の大きな下落が株式の割安時期をダイレクトに示唆するわけではないことが確認できます。
ただ、ITバブル後の割安時期である②の時期に、ISM製造業景気指数は確かに50を下回っており、リーマンショック後の割安時期も的確にとらえていることも勘案すると、この指標は割安時期を判断する目安にはなるのではないかと、わたしは考えています。
つまり、
株式が割安な時期にISM製造業景気指数が50を下回っている可能性は高い
のではないかと考えられます。
おわりに
①「不景気な時期に株式は割安に買える可能性が高い」という仮説を前提に、メジャーな指標、ISM製造業景気指数だけで株式の割安割高時期を無理やり探ってみました。
結果はまずまずだと思います。
他の指標も含めて総合的に考えることで、株式の割安な時期を判断する精度は向上すると思われます。
「割安な時期」を判断するのが得意と思われる以下の指標も参照ください。
★恐怖指数
②また、 「ISM製造業景気指数とは|金融経済用語集」によれば、FRB(米連邦準備理事会)は、本指数が50を下回っている場合に利上げをしたことがないらしく、FRBの利上げスタンスを見極める意味でも注目される指標のようです。
さらに、毎月初めに前月のデータが発表されます。アメリカの景気動向を素早く知る上で便利な指標です。興味のある方は下記サイトへどうぞ。