長期投資に適する国は事前に分かるものなのか?
そんなことは考えない方が身のためか?
「長期投資に適しそうな国の選定作業」シリーズの4回目は米国の前の覇権国、イギリスです。
イギリスのメモ
全世界の株式を対象とした株価指数「MSCI ACWI」(浮動株調整後)では、イギリスは約5%程度の配分になるようです。
米国が約52%、日本が約8%、この指数の国別シェアでは第3位にランクインしています。
※データ出所:iシェアーズ MSCI ACWI ETF 2017.6.22時点
長期投資に適するのは、長期的な経済成長率が高い国ではないか?
一般にある国の「名目経済成長率」とその国の「時価総額(市場規模)の増加率」には長期的には正の相関があるとされます。
そして、時価総額の増加率と株式インデックスの上昇率にも正の相関があります。
したがって、
長期的に経済成長する国の株式インデックスは長期的に上昇しやすい
つまり、
長期投資に適するのは、長期的な経済成長率が高い国ではないか?
という仮説が成り立ちます。
長期的な経済成長が期待できる国を予測することは可能なのか?
上記の仮説が正しくて、投資する前に長期的な経済成長を成し遂げる国を予測することができれば、その国の株式インデックスを長期保有することで、長期投資の収益率を大きくできそうな気がします。
では、長期的な経済成長が期待できる国を予測することは可能なのか?
おそらく確実に予測することは不可能だと思われます。
今、高い成長率を維持していても、今後何らかの理由でガクッと落ちるかもしれない、その後も長期的に低迷するかもしれない、逆に今、成長率が低くても、何らかの理由で成長率が上昇しないとはいえません。
内戦や政治の混乱、大地震、自然災害、感染症の大流行など、全く予期せぬアクシデントが起きれば、経済成長どころの話ではなくなります。
株価予測と同様、未来のことは断言できないと思われます。
ただ、以下のような手順を踏むことによって予測の精度を少し向上させることができる、かもしれません。
※あくまで「予測が当たる確率が上がるかもしれない」程度の話です
①できれば人口が増える国や地域の株式インデックスを選択する
実質経済成長率に関しては、
実質経済成長率
=人口増加率+一人当たり経済成長率
という式が成り立ち、二つの要素に分けて考えることができるようです。
つまり、一年間で人口が1%増えれば、一人当たり経済成長率が0%でも、実質経済成長率は1%になります。
逆に、人口が1%減れば、一人当たり経済成長率が1%でも、実質0成長になってしまいます。
この式を見れば、長期的な人口の増減が一国の経済規模に大きな影響を与えることは明白です。
そして、「人口予測」は数ある経済指標の中で、比較的、的中率が高い指標とされます。
※「予測」という言葉を使っていい経済予測は、人口くらいだ(他の指標はなかなか予測が難しい)と主張する人もいます
「現在の人口、将来の出生率、将来の生存率、将来の国際人口移動率」などのデータがあれば、ある程度精度の高い予測ができるようです。
したがって、比較的予測が当たりやすい人口増加率を頼りに「長期的な経済成長が期待できる国を予測する」こと、つまり
できれば人口が増える国や地域の株式インデックスを選択する
のは理屈では正しいことになります。
※単に人口増加率が高ければいいわけでもなく、一人当たり経済成長率とのバランスが大切だと思われます
②一人当たり経済成長率は、近年の長期データを用いて推測するのもアリか?
次に、一人当たり経済成長率について考えてみます。
こちらは、人口増加率より予測が難しく振れ幅も大きな要素です。
何か手はあるのか?
経験的な私見に過ぎませんが、
実質経済成長率
=人口増加率+一人当たり経済成長率
なので、
一人当たり経済成長率
=実質経済成長率ー人口増加率
になります。
したがって、例えば、
過去10年の一人当たり経済成長率の平均
=「過去10年の実質経済成長率の平均」ー「過去10年の人口増加率の平均」
になります。
10年を20年にしても同様です。
このように、単年度ではなく、一人当たり経済成長率の「長期平均」を参考にすることで、ある程度将来予測はできるかもしれません。
仮に、2005~2015年の一人当たり経済成長率の平均=1.0%であれば、2015~2025年の平均値も「1.0%」から極端に大きくぶれないのではないか、という推測です。
一年ごとの変動は大きいですが、長期でならすと意外とぶれは小さいようなのです。
イギリスの実質経済成長率、人口増加率、一人当たり経済成長率
ここからイギリスの実質経済成長率、人口増加率、一人当たり経済成長率について紹介します。
長期的な俯瞰
まず長めの期間で俯瞰してみます。
※出所:世界経済のネタ帳のデータより管理者作成
上記の表は、日本の実質経済成長率、人口増加率、一人当たり経済成長率を
「1980~2015年」の35年間
「1990~2015年」の25年間
の年率平均で示したものです。
この期間に関しては、人口増加率は微増、一人当たり経済成長率は低下傾向にあると考えられます。
世界、米国、日本、いずれも人口増加率が減少傾向だったので、イギリスの興味深い特徴です。
年代ごとの年率平均と所感
次に、35年間を10、10、10、5年間で区切って年率平均を算出し、さらに「長期投資」を想定し、2015~2035年の人口増加率の推計を加えると、下記表になります。
※出所:世界経済のネタ帳、国連人口推計2015年版(中位推計)のデータより管理者作成
人口増加率は増えはしないものの、2015-2035年に関してイギリスは「0.5%」と予測されており、米国の「0.6%」並みに先進国では高い数字です。
※「米国は先進国で唯一長期的な人口増加が見込まれ・・・」というフレーズを見ることがありますが、おそらく正しくない表現です。
したがって、1990-2015年の一人当たり経済成長率「1.5%」程度を維持できれば、「2.0%」程度の経済成長は現実的な数字であり、
イギリスは長期投資に適しそうな国
であると思われます。
※わたしの推測が当たる保証はありません。投資は自己判断、自己責任でお願い致します
あとがき
こうやって一国ずつ調べていると、英語圏先進国の優位性を感じざるを得ません。
2014年の英国のイギリスの合計特殊出生率は「1.83」と「2.07」(長期的に人口を維持できる出生率は2.07~2.10程度とされるようです)を下回っているのですが、それでも人口が長期的に増加していくのは、「移民の流入を期待できる英語圏先進国の強み」といえるのではないかと思われます。
この傾向は米国、英国、カナダ、豪州、ニュージーランドすべてに共通しています。
カナダは出生率が「1.61」程度(2014年)ですが、人口は長期的に増えるようです。
日本人からすると
なんだかずるいなあ
とひがんでしまいますが、どうしようもありません。
今は「新興国と先進国」という区分が目立ちますが、そのうち先進国内で、
「英語圏先進国株式インデックスとその他の先進国株式インデックス」
という区分けができてしまうかもしれません。
理屈で考えると英語圏先進国が長期的には総じて優位にあるように現時点では感じられます。
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